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王子覚醒


「洋平の為ならばこの身果てるまで、戦い続ける!」


ルドルフの全力の一撃が見事に顔面を捉えるがアルキュリオスは表情一つ変えずルドルフを蹴飛ばす。


「よっへ!まもる!」


リンセの真後ろからの攻撃も後ろを見る事もせず避け、通り過ぎる時に蹴飛ばす。


「よーへーは僕の弟子なのにゃ!弟子を守るのは師匠の役目なのにゃ!」


セリーヌがアンダの激爪で攻撃するが、それを手刀で防ぐ。そのまま手刀を振り抜きリンセも弾き飛ばされる。


「さっきまでとは段違いだ・・・」

「にゃぁ・・・」

「よーへーどうするのにゃ?」


古代魔術師に聞かれても返答に困る。


「にんにくや十字架なら効くかもしれん。クリスト持ってるか?」

「十字架はわかるがにんにくってなんだ?」

「臭い球根みたいな物だ。料理に使う。」

「コンカロ草の根みたいな物か。十字架もどちらも持っては無いな。」

「となると・・・」


必死に頭を回転させる。ドラキュラの弱点。吸血鬼の弱点。むかしやったゲームの知識でもなんでもいい。俺に降りてこい。


「銀の剣か。あとは・・・日の光・・・日光か!セリーヌ!太陽を出せ!光が弱点だ!それ以外考えられん!」

「にゃ!太陽を出すのはできにゃいが光なら出せるにゃ!にゃがあれを倒すとなると少し時間がかかるのにゃ。」

「わかった!全員でセリーヌの魔術までの時間を稼ぐぞ!」

「俺も行くぜ!」


クリストも参加し、俺、ルドルフ、クリスト、リンセ、ファングの5人でアルキュリオスに立ち向かう。セリーヌは詠唱を始めている。


「雑魚が群れを成すのはなんとも美しく無いものだな。」


クリストの火魔術が先制を取り、アルキュリオスの体を燃やす。だが軽く振り払われた。そこへリンセとルドルフの前後からの攻撃。それを受け止め衝撃波を放ち二人を吹き飛ばす。俺はファングに守られ、その衝撃波を耐え、すかさず胡椒爆弾を投げ込む。どうせ俺は倒せない。ただ今は時間を稼げればいい。胡椒に一瞬顔を歪めるがすぐに風を起こし吹き飛ばす。俺は手持ちの攻撃用にガチャガチャを投げまくる。胡椒にまきびし、ガマの油が入ったものや、よくわからない物が入ったものまで。そこにクリストの火魔術が加わり油に引火しアルキュリオスの顔がさらに苛立つ。まさに火に油を注いでいる。ルドルフもリンセも絶えず攻撃をしかけているが、リンセは腕が使えず本来の動きが出来ていないようだ。連戦に次ぐ連戦。徐々にリンセの動きが鈍くなってきている。もうすでに体の光は今にも消えそうな位弱まっている。逆にルドルフの動きは徐々によくなってきている。リンセの動きをカバーするかのように常にアルキュリオスの近くで素早く動き攻撃をし、ヘイトを稼いでいる。ルドルフの体が赤く光っている様に見えるのは気のせいだろうか。ファングは前線に行ったり俺とクリストを守りに来たり柔軟に動いている。石なのに。


「どれもが美しくない。お主の攻撃も既に美しさの欠片も無い。」

「美しく戦えれば勝てるならとっくに勝ってるよ!」

「もうよい。終わりだ。ダークインフェルノ。」


アルキュリオスの手から黒い炎が飛び出て来る。それを受けリンセとルドルフは吹き飛び、俺とクリストを守ってるファングに襲い掛かる。ファングは身を挺して俺を守ろうとするが魔術を逸らすだけで精一杯だったようでクリストと一緒に吹き飛んだ。


「みんなっ!くそ!こうなりゃ仕方ない!全力アイスランスドリル!!」


巨大な氷の槍が回転してアルキュリオスに向かって行く。


「それこそ美しい魔術!威力も申し分無い美しさだ!ダークネビュラ!」


アルキュリオスの出した黒い球体に槍がぶつかり消滅してしまう。


「くっ・・・」


再び頭痛が俺を襲い。膝を付く。


「やはりお主はもう限界か。」

「まだだ・・・まだ負けちゃいねぇ・・・」

「死に際はせめても美しく飾ってやろう。」

「セリーヌ!」

「待たせたのにゃ!光の精霊よ。古の勇者が一人、セリーヌ・アルベルト・D・ガガが命じる。我らの道を閉ざす。邪悪な敵を封じ込めたまえ!ホーリーロック!」


アルキュリオスにスポットライトが当たるように空から光が降り注ぐ。


「ぐぁぁぁぁぁ!!!」


アルキュリオスの悲鳴が轟く。足元から徐々に光に浸食されていく。


「美しい光だが。美しさはでは我に勝てる者は無い!」


光を浴びながらも徐々に徐々に歩を進める。


「にゃ!まだ封じれないのかにゃ!力が強すぎるにゃ!」


アルキュリオスが一歩歩を進める度にセリーヌの顔が歪む。膝まで浸食していた光が徐々に無くなっていく。


「もう・・・限界にゃ・・・」


ついにアルキュリオスに当たっていた光が無くなる。と同時にアルキュリオスも膝を付く。


「はぁはぁはぁ・・・。小癪な。我が二度も膝を付くなどあってはならぬ。全力でお主達を葬ってやろう!ダークフレアエクストリーム!」


俺に向かって巨大な黒い炎が渦を巻いて迫って来る。リンセ、クリスト、ファングはなんとか起き上がろうと頑張っている。セリーヌも膝を付き苦しそうだ。俺に炎の渦が向かって来ている時、近くでカランという音がした。


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

「ルドルフ!!!」


俺の目の前にルドルフが立ち塞がり、左手の封印を解き放ち、黒い炎と自らの炎をぶつけ合い、受け止める。


「なんつー力だ!くそぉぉ!負けるかぁぁ!!俺は洋平を守ると誓ったんだぁぁぁぁ!!!」

「また加護者か。だがまだ完全には覚醒していないようだな。そのまま消え去るがよい。」


ルドルフの体が赤く光り始める。だがそれはリンセの光よりも弱く。やつの言った通りまだ完全には覚醒していないからなのか。


「ルドルフ!お前・・・」

「洋平!早く何か考えろ!俺も長くは持たんぞ!!


ルドルフの想いに体が熱くなるのを感じる。何か考えなければ。リンセ、クリスト、ファング、セリーヌは動けない。ルドルフが間を持ってくれるのに間に合わないだろう。となると動けるのは俺しか・・・。魔術を打てても一発。それも全力では打てない。それで決定打になるとは考えられない。いくらやつが弱っているからと言って、俺の一撃だけでは・・・。考えを巡らせているとドンドン体が熱くなってきた。


「熱い・・・。なんだこれは・・・」


熱さの原因を調べたらマジックバックが異様な熱を持っていた。その中を覗くと、以前初めてリンセと会った時に貰った赤く大きな剣が赤く光り輝き震えていた。俺はその剣を取り出す。


「これはもしかして・・・ルドルフと共鳴しているのか。」


外に出した剣はルドルフに向かって震えているような感じがした。


「ルドルフ!!これを使え!!!」


俺はルドルフに向かってその剣を投げる。と言うより剣が自然とルドルフに向かって飛んで行った。ルドルフはこちらを向かずに魔術を一度切り離し剣を左手で受け止め。受け取ったそのままの勢いで剣を振り上げた。


「馬鹿な!!ぐぁぁぁ!!」


振り上げた剣がアルキュリオスの魔術を切り裂きそのままアルキュリオスの右腕を斬り飛ばした。


「ルドルフ。やっちまえ・・・」

「おう!ゆっくり寝てろ!うっしゃぁぁぁぁぁ!!!」


ルドルフが走り出す。その後ろ姿は誰が見ても真っ赤な光を完全に纏っていた。左手からはもう溢れ出るような炎は出ていない。


「まさか!この短時間で完全に覚醒したと言うのか!!」

「何をごちゃごちゃ言ってんだ!お前は俺が倒す!洋平の為に俺は戦う!」


ルドルフの攻撃を後ろに飛びギリギリで躱す。


「我は負けん!ダークノヴァフレア!」

「効くか!そんなもん!」

「馬鹿な!」


アルキュリオスの出した沢山の黒い炎の球体を次々と切り裂いてアルキュリオスに肉薄する。


「終わりだ!アルキュリオス!」


ルドルフが左肩から袈裟に斬り下ろす。そのままの勢いで地面へと叩き付ける。


「ぐはっ・・・」


地面に叩き付けたアルキュリオスの側にルドルフが降り立つ。


「見事だ・・・我の負けだ・・・」

「とどめだ。何かいい残す事は?」

「とどめなどいらぬ。我の肉体はもう朽ちてきておる。」


アルキュリオスの体が徐々に塵と化してきている。


「一つだけ教えてくれ・・・なぜそこまで他人の為に戦える?」

「それは俺が洋平を、みんなを好きだから。愛しているから。」

「愛か・・・。我にはわからぬな。」

「そうだろうな。美しい、美しくないで物事を決めるやつにはわからんだろうさ。」

「愛とは美しいものなのか?」

「あぁこの世の中で一番綺麗で美しい。何よりも強いものだ。」

「そう・・・か・・・それは・・・一度目にしたか・・った・・・」


アルキュリオスの体が完全に塵と化す。


「愛ってのは目に見えるもんじゃねぇよ。でも・・・お前も俺達の愛を見たはずだ。」



愛って素晴らしい!

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