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男の友情と猫の友情

「洋平!」


ルドルフとクリストが走って来る。


「大丈夫か!無事だったか!怪我は無いか!無茶しやがって!」

「一気に喋るな馬鹿・・・でもなんでセリーヌがここに?」

「町に戻ったらお前を探してるセリーヌ様が居たんだ。状況を話したらすっとんで行ったよ。それより精神力を使いすぎたようだな。これを飲め少しは楽になるはずだ。」


ルドルフが怒涛の勢いで迫って来るのを軽くあしらい。クリストから小瓶を貰う綺麗な緑色の液体だ。それを一気に飲み干す。するとすぐに頭の痛みが引け、体の自由も効く様になってくる。セリーヌとファングが居ればもしかして・・・


「それは僅かながら精神力を回復させる薬だ。微量ではあるが高価な物だぞ。ありがたく思え。」

「助かったよ。クリスト。これでまた戦える。」

「いや、戦うのは無理だ。言ったろ。僅かにしか回復しないって。お前の魔術なら2発も打てばまたさっきの状態に逆戻りだ。」

「わかった。みんな聞いてくれ!俺は戦えない!弾避けにすらならない!だがこの戦況は俺が一番みんなを把握してる!俺が指示を出す!みんな頼んだぞ!」

「洋平は頭のキレるやつだからな。安心しろ。お前に飛んでくる弾は全部俺が受け止めてやる!」


意気込むルドルフ。


「マスターヲマモルノハワタシノヤクメデス」


ファングも俺の盾になる気満々だ。


「にしても見るからに厄介な相手なのにゃ・・・」


セリーヌはアルキュリオスから目を離さずに注意深く観察している。


「まったくお前は無茶をするな。だがお前じゃなければこの状況にはならなかっただろう。最強の助っ人だ。」


クリストはセリーヌを見て少し安心したようだ。


「敵は吸血王アルキュリオス!ランクなぞ知らん!奴の影に触れるな!吸収されるぞ!」

「アルキュリオス・・・」


クリストとセリーヌが考え込む。自らの知識を探っているのだろう。何か糸口があればよいが。


「ファングは皆を守るように動け!ルドルフは全力で相手を殴れ!防御など気にするな!セリーヌは自由だ!俺はセリーヌの全てを知らん!クリストはあそこで倒れているリンセを回復させろ!両肩を剣で貫かれた!リンセが前線に復活してから本番だ。今は耐え。敵を観察しつつ攻撃だ!」


全員の様々な気合の声が駆け巡る。その間、アルキュリオスは黙っている。


「美しくないな・・・群れで戦いを挑むなど。雑魚がいくら集まっても雑魚に変わらりは無い!」


アルキュリオスが突っ込んでくる。ルドルフに向かって攻撃をしようとするがそれを素早い動きを見せたファングが受け止める。


「何!?ゴーレムの分際でヒューマンの言う事を聞くのか!」

「マスターノゴメイレイナラバ」

「ナイスだ!ファング!」


ルドルフがその隙を付いてアルキュリオスに全力で殴る。アルキュリオスはガードをして少し後ろに下がった。


「俺はルドルフだ。よろしくなファング!」

「ヨロシクオネガイシマス」


がっちりと二人で握手を交わす。


「そのまま俺をぶん投げろ!」

「リョウカイ」


ファングが遠心力を使いルドルフにスピードを与える。その勢いのまま蹴りをアルキュリオスに向かってするが完全に防がれてしまう。


「こっちがお留守だにゃ」


そこへセリーヌが待ってましたと言わんばかりの腹部への蹴り。


「ぐふっ・・・」


まともに受けたアルキュリオスは後方へ吹き飛ぶ。


「よーへーを傷つけた罪は重いのにゃ!」


セリーヌはまだまだ全力では無いようだが闘志に溢れている。


「よっへ・・・」

「大丈夫かリンセ!すまない俺の為に・・・」

「ん・・・」

「今この場では完全に治すには時間がかかりそうだ。普通に動かす位なら問題は無いが腕での攻撃は止めた方がいい。」

「大丈夫か?」

「たたかう!」

「よし!攻撃は蹴りのみだ。空を飛び相手の死角から奇襲を仕掛けろ!」

「ん!」


リンセはすぐに飛び立ち前線に参加する。体がまた青白く光り始めた。


「まさか。彼女は加護者か?」

「その加護者ってのがわからんのだが」

「加護者って言うのはお前のような精霊の使いみたいなもので、特別な力を授かった人の事を言うのさ。ルドルフも加護者だぞ。まだ覚醒はしてないがな。」


俺も言い方を変えれば加護者のようだ。水霊術は普通の人には使えない。水の精霊の加護を受け、鍛錬を積んだ先にあるのが水霊術。まぁ俺は最初から水霊術だったんだがな。


「リンセは復活した!一気に畳みかけるぞ!」

「俺はどうすればいい?」


クリストが手持無沙汰のようで俺に聞いてくる。


「あの中に入れるか?」

「鎧があればギリギリだが。無理だな。」

「だろ。じゃあ俺と一緒にここに居ろ。その間なんでもいいから知恵をくれ。」

「わかった。」


流石に古代魔術師のクリストでもあの激しい戦いの中に入るのは無理なようだ。古代兵器からの遠距離攻撃でもあれば話は別だろうが、ファングは図体に似合わず素早い動きで急所となる攻撃を全部防いでいるし。ルドルフは直線的な攻撃だが素早く重い一撃を常に狙っていく。セリーヌはルドルフの攻撃の隙間を縫うように見事な打撃と魔術による多彩な技を繰り出し、的を絞らせていない。そしてリンセの死角からの一撃。当たればひとたまりの無い一撃にアルキュリオスの顔が徐々に歪んでいく。


「加護者が二人も居るのにゃ。それにリンセとかいうやつは凄い装備をしてるのにゃ。」

「ん!」

「にゃ?」

「にゃ!」

「にゃに!」

「ん!」


セリーヌの元にリンセが行き何かを話している。二人の間で会話が成立しているが、俺には何かわからない。リンセが手のアンダの激爪を外しセリーヌに渡した。どうやら自分は使えないからセリーヌに使ってほしいとの事だろう。セリーヌはアンダの激爪を装着し笑みがこぼれる。


「アンダの激爪・・・。僕にぴったりなのにゃ!」

「ん!」

「一気に決めるのにゃ!」


セリーヌの体が輝き始める。カルとの戦いで見た光だ。もうすでにセリーヌの動きを目で追う事は出来ない。点の動きをし始めた。そこで攻撃をしたと思ったら次にはまた違う場所から攻撃をしている。ルドルフもリンセもその動きに合わせて攻撃をしている。あの二人には見えているのか。ファングはと言うと。空中戦をしている4人を見上げ、寂しそうな顔でこちらに帰ってきた。


「ファングお疲れ。」

「モウワタシノデバンハナイヨウデス」

「俺達にたまに飛び火が来たら防いでくれよ。」

「リョウカイシマシタ」


セリーヌがアンダの激爪の力を完全に自分の物にし徐々にアルキュリオスの体に傷を付けていく。ルドルフは空を飛べないのだが、なぜか空で方向転換をして飛びつつけている。リンセが掴み放り投げたり、セリーヌに蹴飛ばされたり。猫に犬が翻弄されている。上から下から右から左から前から後ろから繰り出される怒涛の攻撃にアルキュリオスも徐々に攻撃の手が少なくなってきている。ルドルフが正面から飛び出し全力の一撃をガードさせる。その瞬間、上と下からセリーヌとリンセの暴龍の爪による一撃でアルキュリオスの腹部を十字に切り裂き、黒い鮮血をまき散らせながらアルキュリオスは地面に落ちていき、激しい音を立て衝突した。


「やったのか・・・」

「もう魔力はうっすらとしか感じないにゃ。」

「徐々に弱まっているのを感じるな。」

「ん!」


瓦礫の山からよろよろとアルキュリオスが出て来る。もう虫の息のようだ。


「我の美しい血が・・・。このような虫けら如きに流されるとは・・・。許さん・・・許さんぞ!」


一瞬でアルキュリオスの体から大量の黒い影が伸びて来る。


「まずい!逃げろ!」

「任せるのにゃ。光の精霊よ。邪悪な敵を退けたまえ。我に力をにゃ!シャインスコール!だにゃ!」


空から無数の光の矢が辺り一面に降り注ぐ。伸びてきた影も消滅し、アルキュリオスにも襲い掛かる。


「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・」


光の矢を受けて悲鳴をあげるが、倒れる事はせず、なんとか持ちこたえている。


「美しくない・・・美しくない・・・美しくなーーーーい!!!!」


アルキュリオスの体が闇に包まれる。全員息を飲むが真っ先に古代魔術師のセリーヌとクリストが動いた。


「シャインアローだにゃ!」

「アイスランス!」


二人の魔術がアルキュリオスに向かって行くが当たったとたんに消滅する。


「まずい!ファングみんなを守れ!!」


次の瞬間アルキュリオスを覆っていた闇が解き放たれ衝撃波がこちらを襲う。ファングはなんとか全員の前に出てそれを受け止めるが吹き飛ばされてしまう。


「もう終わりだ・・・この姿になってしまったからには・・・貴様ら骨すら残らんと思え!」


アルキュリオスの姿は以前とは比べものにならない位変貌してしまった。服は破れ。剥き出しとなる筋骨隆々の四肢。漆黒の翼はもう無く。顔は整っているのには変わりはないが目の光が色を失っている。暴力の化身。アルキュリオスが軽く右手を横に振るだけでこちらに物凄い衝撃波が襲って来る。


「ったく!二回変身とかラスボスかよ!!」


吸血王アルキュリオス。本気の戦いが今始まる。



ラスボスではありません。

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