最強の援軍
タイトルネタバレ乙
空気を流れる魔力を感じる。大地を流れる魔力を感じる。自然と一体になるとはこの事を言うのか。足元からザザビルの切っ先が伸びて来る。それを普通に歩いている感じで避ける。轟轟とうねる火球が飛んでくる。それに手のひらを当て瞬時に同じ威力の魔力をぶつけ跡形も無く相殺させる。
「どうなってやがる!!さっきとはまるで別人だ!」
「攻撃が当たらねぇ・・・」
精神力を大量に消費した事により、俺の魔力操作はキレを増した。相手の動きが止まって見える程に。
「こっちからも行くぜ!」
足に力を入れ、軽く地面と平行にジャンプし、カイネバルの目の前に着く
「なに!?」
「うらぁ!」
カイネバルの顔面を殴り、吹き飛ばす。すぐにロダントに向き直る。
「くそっ!」
ロダントが空へ飛び上がりつつ詠唱を始めている。俺はすぐにその場から移動する。
「何!消えた!」
俺はロダントの足元へ移動し飛び上がる。ロダントの真上で目標を無くした魔術がうねっている。
「後ろだ。」
ロダントが振り向く間もなく蹴り落とす。激しい音と共に砂埃が舞い上がる。俺はそのまま自然に落下し着地する。砂埃を見ていると足元からザザビルが伸びてくるがそれを躱し、カイネバルを探す。すぐ後ろにザザビルを持ったカイネバルが居た。
「そこか。」
俺がカイネバルに向かって歩いていこうとすると
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
突然の悲鳴に思わず振り向く。その隙を見てカイネバルが懐から短剣を出し斬りつけて来る。
「くっ!」
俺はギリギリで攻撃を躱し、そのままカイネバルを蹴り飛ばした。
「ちっ。かすったか・・・」
攻撃を躱したと思ったのだが、脇腹を少し切られていたようだ。改めて悲鳴の方を見ると、壊れた武器から出ていた黒い煙が地上でロダントとカイネバルの手下達を飲み込んでいく。
「なんだあれは・・・」
近づいて行こうとするが急に足取りがおぼつかなくなり倒れてしまう。
「くそっ!毒か!」
俺は傷口に手をやり解毒を試みる。慣れている事では無いので時間がかかるが、毒を処理しなければ俺は動けない。
「なんだありゃ。」
「わからん。やったのか?」
「あぁ。こっちも大分痛手を負ったがまぁかすってしまえば問題無い。」
「解毒してるな。今のうちにとどめを刺すか。」
「あぁ。あいつは俺らより強いのは間違い無い。最初からこれ程の動きが出来ていれば俺らは負けていただろうな。」
「まぁルドルフとクリストが居れば問題は無いだろ。」
「ちっ!あいつらが居ねぇ!」
「やはり解毒していたか。抜け目ねぇな。」
「盗賊より盗賊らしいじゃねぇか。」
カイネバルの元にロダントが行き二人で話し合う。黒い煙に時折目をやりながらも俺から注意を逸らさない。俺はまだ解毒中で動けない。二人が俺の元まで来る。
「また抵抗されても困るしな。こいつを殺して引き上げるか。」
「そうだな。もうだいぶ時間が経った。ルドルフとクリストが援軍連れてこないとも限らんしな。こいつの事だ。クリストに何か吹き込んだに違いねぇ。」
カイネバルが禍々しい短剣を振り上げ、俺へと突き刺そうとする。
「ふっ・・・」
「何がおかしい。お前は今から死ぬんだぞ。」
「いや。俺の悪運もまだまだ尽きちゃいねぇってな。」
「うるせぇ!死ね!!」
カイネバルの短剣が振り下ろされる。だがその短剣は俺には届かない。何故なら・・・
「よっへ!だいじょぶ?」
「ナイスタイミングだリンセ。」
「ん!」
俺は後ろから物凄いスピードで近づいてくる魔力を感じていた。人によって魔力の性質は変わる。ルドルフが臭いでわかると言っていたのが今わかった。近づいてきたのはリンセだった。リンセは俺の前に降り立ち、短剣の攻撃を受け止め。そのままロダントとカイネバルの二人を一蹴で吹き飛ばした。二人を吹き飛ばしたリンセはしゃがみ込み。倒れている俺の顔を覗き込む。俺は頭を撫でてやった。満面の笑みを浮かべて小さい体ながらも肩を貸してくれ俺を立ち上がらせてくれた。
「二人は?」
「ん!」
リンセが黒い煙を指差す。よく見ると黒い煙の中から二人が立ち上がって来た
「くそっ!リンセが来やがった!」
「逃げるぞ!!」
判断の速さは素晴らしいと敵ながらに関心する。俺もリンセを二人に戦わせていいものか悩んでいる。
「なんだこれは!」
「うわっ!とれねぇ!放せ!!」
黒い煙が二人の四肢や体に纏わりつき二人を黒く染め上げる。その光景は煙が意思を持っている動きだと言うのがはっきりとわかった。腕。足。体。顔。さらに口の中にまで黒い煙は入って行き。二人を完全に煙の中へと飲み込んだ。
黒い煙の正体とはいかに!?バレバレな王道な展開を楽しんでください。




