ルドルフVSカイネバル
お待たせしました。
カイネバルとルドルフの戦いはまさに一進一退の攻防を繰り広げていた。カイネバルの伸縮自在の短剣ザザビル。使用者の意思に応じて伸縮し、伸縮する速度及び範囲は使用者の魔力に応じて変わる。ルドルフはタナスから聞いた情報をクリストに伝え特徴を教えてもらい、戦うイメージをしてきた。ルドルフはザザビルの特性を理解し、最初は攻撃出来る範囲と速度を見極める事に専念した。ザザビルは伸びてからまた伸ばすまでに一度元の大きさに戻さなければならない。その隙を逃さず間合いを詰める。しかし、カイネバルも後ろへ飛び中々間合いを詰めさせてはもらえない。しかしルドルフは徐々に間合いを詰めている。まさに一進一退。ルドルフの体力が尽きるのが先か、間合いを詰められるのが先か。カイネバルもザザビルの攻撃以外にも水魔術を使いルドルフを攻撃している。だが戦闘に関してはルドルフの方が一枚上手である。水魔術をものともしない強靭な肉体に素早い動き、常人では扱えないような大きな剣を片手で軽々振り回しカイネバルに向けて振り下ろす。カイネバルは寸での所で後方へ飛び回避するが、今まで居た所の地面が大きくえぐられている。
「くそっ、まだか。もっと早く。もっと鋭く。ザザビルの攻撃は見切った。水魔術も痛くない。このまま押し切る!」
ルドルフは一歩間違えば命が危ない橋を走って進んでいる。洋平の力になりたい思いがルドルフの極限なまでの集中力を生み出していた。ザザビルの攻撃を読み切り思いっきり踏み込む。ザザビルが元の大きさに戻るよりも早くルドルフはカイネバルの元へたどり着き、カイネバルがザザビルをちょうど元の大きさに戻した時に短剣を蹴り上げて、ザザビルをカイネバルから離す。
「終わりだ。カイネバル!」
ルドルフが剣を中段から振り抜く。剣が完全にカイネバルの首を捉え振り抜こうとしたとき、カイネバルの不敵な笑みを浮かべた。次の瞬間、首を捉えていた剣が中程で真っ二つに折れる。
「なにっ!」
「残念だったな。」
次の瞬間、カイネバルが懐から短剣を取り出しルドルフを斬りつける。ルドルフはすぐに後ろに飛び距離を取る。しかし少しかすってしまった。服が破れ左の脇腹から少し血が出ている。
「ちっ!だがこれしきの傷!」
カイネバルはゆっくりと起き上がり、服についた埃を払っている。
「残念だったな。ルドルフ。俺もこの身代わりのロザリオが無ければ、負けていたのはこっちだっただろう。」
「まだ終わってない!剣は折れたが、お前はもうザザビルを持ってない!」
「いや、もう終わりだ。こいつを見ろ。この短剣はザザビルとは比べものにならないぞ。毒王グリモアが使っていた短剣だ。まぁ辞典にも載ってない代物だからな。調べるのに苦労したぜ。」
「つまらん御託は聞かん!こっちから行くぞ!」
ルドルフが走り出そうとするがうまく走れず転んでしまう。
「Sランクの魔物ですら一瞬で動けなくなるんだがな。そこまで動けたら褒めていいぜ。」
「くそっ・・・こんな所で、まだ俺はなにも・・・」
「まぁ切り札は最後まで取っておく物だろ。普通に戦えばお前の方が強いだろうけどな。こいつのおかげだな。」
カイネバルはグリモアの短剣を懐にしまい。落ちていたザザビルを拾って辺りを見回している。
「まて・・・。いかせるか・・・。」
「まぁそこで戦いが終わるのを見てろよ。仮にも王子なんだから使い道はあるだろ。さ~てどこにいくか。」
カイネバルはそう言い残し、ザザビルを振り回し走って行った。ルドルフの雄叫びが辺りに響き渡った。
同じ時をしてクリストもロダントとカイネバルの手下と戦いを繰り広げていた。
「どうりでおかしいと思ったら、あいつら持ってる武器はドレイン系か。それもかなりランクが高そうだな。ドレイン系で同系列で高ランクか・・・。アルキュリオスシリーズだとさすがに相手が悪い。」
クリストは高度な魔術を展開しながら戦い相手の分析をしていた。悪い事にクリストの予感は当たってしまっている。アルキュリオスシリーズ。吸血王アルキュリオスの手下が使っていた武器である。武器の形はそれぞれで剣や槍、槌や斧、大鎌、杖等様々である。この武器の特性はドレイン。対象の精神力を吸収して蓄える事が出来る。対峙しているだけでも対象者の精神力を吸収し、攻撃を当てると吸収率が多くなる。使用者が攻撃を受けるとその分吸収した精神力が消費され攻撃の威力が無効化される。持久戦になればさらにその真価を発揮するシリーズである。
「このままだとこちらが不利だな。一気に勝負を仕掛けるしか無いか・・・」
クリストは精神力が実の所低い。それでも他から見れば十分な精神力を持っているが、クリストの精神力は約60000。これでも他の古代魔術師に比べれば圧倒的に低い値である。この低さをカバーする為にクリストは繊細な魔術操作を覚え、一つの魔術に対する精度を上げロスを少なくする鍛錬をしてきた。魔術の精度で言えばクリストの右に出る者はそうそういないだろう。
「火の精霊よ!敵を打ち砕き!灰塵とせよ!我に力を!エーギル・バーン・インパクト!」
クリストの放った魔術は巨大な火の玉を敵に向かって打ち出す術である。轟轟と唸りを上げ敵に向かって行く。この魔術はクリストが長年研究し、昔の文献を元に再現した古代魔術である。しかし、その威力の大きさからクリストの精神力では一度打てばほぼ自身の精神力が空になり、肉体にも大きなダメージを与えてしまう。魔導鎧を装着しても魔術の反動で魔導鎧は壊れてしまう。
「これなら・・・いけるだろ・・・」
クリストの放った魔術を見た手下達は一か所に集まり盾を持った人を先頭にし、それぞれの武器から盾に魔力を送っている。盾と巨大な火の玉が衝突した瞬間、巨大な火の玉は跡形も無く消えてしまった。
「はぁはぁ・・・うそだろ・・・」
「お前達よくやった。後は任せろ。ロダントの所へ急げ。」
魔導鎧が壊れ、膝をつきなんとか意識を保っている所へカイネバルが来た。手には禍々しい短剣を持っている。
「まさかルドルフが・・・」
「まぁいい線はいってたがな詰めが甘い。お前も動けそうに無いが念の為、斬っておく。」
カイネバルが短剣で抵抗も出来ないクリストの肩を斬りつけた。
「くぅっ!」
「これですぐに動けなくなるだろう。全く使い道のあるやつを殺せないなんて不便だな。まぁ盗賊だから仕方ないな。」
徐々にクリストの体が倒れ、地面に横たわる。視線の先にはルドルフも同じ状況になっているのが見える。カイネバルはクリストが倒れたのを確認するとすぐに踵を返し、ロダントの所へ走って行った。
またコツコツ書き始めますので、よろしくお願いします。




