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暴龍リンセ


タナス達を縄で緩く縛りミカトレア城下町のギルドへと向かう。縄で縛るのは俺達三人じゃ大変だったのでお互いに縛らせた。女子供は腕を結ぶ程度にしておいた。


「じゃあこれからギルドへと向かうが町の中で変な目で見られると思うが誰も声を出すんじゃないぞ。」

「わかった。」


城下町へ入り。ルドルフを先頭にギルドへと向かう。ルドルフは道を開けてもらいながら進んで行く。なにせ60人近い人数である。町の人もこそこそと話し合っている。一見するとルドルフの手柄で盗賊を捕まえたように見えるだろう。それでいいんだ。そこに俺とクリストが関わっていると言う事実が民衆に広まればいい。ギルドに着くと俺とクリストは外でタナス達を見守り、ルドルフが中へ入って行き、ギルドマスターのウッドを連れてきた。


「これは洋平様。ご苦労様で御座いました。」

「盗賊達を受け入れる準備は出来ているか?」

「それはもう出来ております。」

「では盗賊達を頼む。くれぐれも丁重に扱ってくれ。身重な体もいるんだ。」

「かしこまりました。」

「洋平。俺もタナス達に着いていく。もう少し話がしたい。」

「わかった。じゃあこっちの話が終わったら迎えに行くよ。」


ギルドの職員とルドルフがタナス達を連れて行く。60人も入れる牢屋は確保出来なかったようなので、空き家を利用するようだ。見張りをつけ、手錠をすれば逃げられることも無いと言うギルドの認識だ。俺はウッドとクリストとギルドマスターの部屋に行きこれまでの経緯とこれからの作戦を美化して伝える。


「なるほど。ではこれからタナスを囮に使い旅の風の団の壊滅を図ると言う事ですね。」

「そうゆうことだ。」

「でも何故闘技場におびき寄せる必要があるんですか?」

「闘技場の中は結界で魔術が使えないだろ。普通に戦っても相手は強い。こちらも同じ条件でも準備出来るのとそうでないのとでは戦い方が違って来るからな。それにおびき寄せる口実にもしやすいからな。」


適当な事を言ってウッドを言い含める。俺が闘技場で戦いたい理由は色々あるが戦いの中で闘技場を破壊するのが目的だ。ウッドにタナスを連れて行く事を許可してもらい。タナスとルドルフの所へ向かう。クリストは一度帰るそうだ。これからの戦闘について今から準備をしたいとの事だ。殊勝な心がけである。タナス達が居る空き家にやって来た。ウッドからタナスを連れて行く書状を見せ見張りの許可を取り中に入る。中に入ると見張りも居るのだが、ルドルフが座り込みみんなと話をしている。


「ルドルフ。話は終わったか?」

「洋平か。あぁ。タナスとは話終わったところだ。まだ全員と話していないが、こいつらは悪い奴らじゃない。悪い事をしていたのは事実だが・・・」

「ルドルフの言いたい事はわかる。これからどうなるにせよこいつらの事を考えるのなら旅の風の団の壊滅が優先だろう。」

「そうだな。んじゃこれからの作戦を聞こうか?」

「作戦も何もないんだが、リンセ、ロダント、カイネバルの三名を同時に闘技場に集めなければならない。その為に旅の風の団のアジトに行こうと思う。そこで三人が揃ったら闘技場へ向かわせるように仕向ける。って感じだな。」

「それはわかるがどうやって?」

「それはまぁなるようにしかならんさ。ルドルフ。俺を信じてくれ。」

「最初から信じてるよ。じゃあ俺は何をすればいい?」

「ルドルフはここにいる全員と話し終ってから、戦闘の準備だ。闘技場の人払いを頼みたい。」

「洋平一人でいいのか?」

「アジトに行くにはルドルフじゃ顔が広すぎる。俺が行くのがベストだろう。ルドルフはルドルフにしか出来ない事をやってくれ。」

「わかった。・・・ありがとう。」

「ルドルフが納得するまで話し合え。これから先、危険な戦いがあるんだ。俺はリンセと。クリストはロダントか。となるとルドルフはカイネバルだろう。準備は怠るなよ。」

「あぁわかってる。」

「言わなくてもわかってると思うが内密にな。」

「そうだったな。」


二人で笑い合い。タナスと他三人を連れてその場を後にする。タナス一人でもよかったのだが、タナスがこいつらは信頼出来るから連れて行った方が何かと便利だ。と言うので連れて行くことにした。タナスがアジトに入る時も全員では無くこの三人を連れて行っているのだそうだ。タナス達と城下町出る前にクリストの所に寄って事情を説明する。クリストは戦闘の為に古代兵器の調整を急ピッチでしているところだそうだ。闘技場に連れて来るのがいつになるかわからないが、到着の三時間前にコンパスで教えると言う作戦にした。ついでにリンセが好みそうな宝石もいくつか貰った。あとは綺麗な魔石。ライカンシャドウと言う魔物の魔石だ。一応SSSランクの魔石である。これにはさすがのクリストも渋ったが、リンセを倒せばこれ以上の物が手に入ると言いくるめて拝借してきた。これだけあればなんとかリンセは誘い込めそうだ。城下町を出て西の森へと向かう。闘技場は町の横に作られている。歩いて30分程だ。ここにどうにかして三人を連れてこないといけない。ロダントとカイネバルも手下が居るだろうし、そいつらもまとめて連れてくる必要がある。タナスに聞いたところ、ロダントは4人、カイネバルは7人の手下がいるそうだ。森を抜けて海岸に出る。タナス達は徒歩での移動は中々他の人に比べると早いだろうがそのペースに合わせて走ってきても5時間はかかってしまった。もう既に辺りは暗くなって来ていたので急いでアジトに向かう事にする。向かう途中でタナス達を作戦を考えてはみたものの、余りいい案は思いつかず、とりあえず俺の話に合わせると言う形になった。俺は新しくタナスの下に着いた下っ端という形にする方向だ。アジトに入る為には一度海を潜らないと行けないらしい海岸沿いを進み岸壁のある場所に出る。その岸壁の下にアジトへ続く道があるのだそうだ。全員で海に飛び込みタナスの後を追う。タナスは光る魔道具を使い自分の場所を明るく照らしているのでわかりやすい。俺は水魔術で水流を操作しタナスの手下を連れて一緒にタナスの後を追う。途中で息が苦しくなっても顔の周りの水だけどかす事によって呼吸も出来た。岸壁の下5メートル程進み。アーチのようになってる岩を潜り上昇すると洞窟に出た。洞窟の中はぼんやりと明るい。タナスの説明によると光ゴケと言う植物で自ら発光する苔だそうだ。ちなみに結構貴重な物である。


「周りに生体反応は無い。リンセ団長はまだ帰っていないようだ。」

「そうか。まぁすぐに会えるとは思っていなかったからな。気長に待とう。」

「じゃあそれまでアジト宝物庫でも見ますかい?」

「それは興味があるな。」


タナスに案内され、洞窟内を歩き一つの部屋に案内された。


「こりゃぁ、働く気も失せるわな。」


目の前には山高く積まれた宝石の数々。金貨の山、乱雑に散らばった武器や防具の数々。これを見たらクリストやセリーヌは喜ぶだろうな。


「宝石類は触らない方がいい。団長の機嫌が悪くなる。一応俺達の決まりでは宝石をこの山に積む事によって他の物を持って行っていいって事になってるが、まぁこんだけありゃ勝手に取ってもわかんねぇだろう。」

「それもそうだな。」


俺はマジックバッグからクリストから頂いた宝石を一つ山に放り投げ魔道具が散らばってる所に目をやる。よくわからない物ばかりだが、古代兵器辞典で見たことがある物を発見した。マーブリルライトという物で簡単に言えば懐中電灯だ。使い方も同じ、スイッチを入れると一定量の光を放つ。その大きさを変えたりすることは出来ない。そして電池の代わりに自身の魔力をちょこっと使う。


「これもらってもいいかな?」

「いいんじゃないですかい?宝石も入れましたし、特に問題は無いと思います。」


洞窟の中には一応それぞれの部屋がある。俺はタナスの部屋に行き、洞窟の中とは思えないようなベットで一晩を明かすことになった。だが洞窟内は日の光が入らないので昼夜の感覚が無い。寝ている時にタナスに声を掛けられる。


「どうやら団長が帰って来たようです。お迎えに行きましょう。」


目を擦りながらも起き上がりタナスに着いていく。洞窟の海に繋がる場所に5人で一列に並びリンセの帰りを待つ。すると海面が揺らぎ一人の可愛らしいガフ族の女性が現れた。身長は160センチも無いような小柄な女性。淡い緑色の髪をしている。それに似合う暴龍装備。腕と足には美しい爪、きっと戦闘になれば本来の凶暴な爪を表すのだろう。そして小さく折りたたまれた翼。これも暴龍シリーズの一つだ。綺麗な人魚を模したネックレスになんの模様かわからないが美しい装飾の髪飾り。そして一番目を引いたのが今回の獲物であろう。大きな赤い剣。それをずるずると床を引きずりながら俺達の前にやってくる。


「団長お疲れ様です!!」


タナスが声をあげ頭を下げる。他の手下も頭を下げたので俺も習って頭を下げる。


「にゃ~・・・」


お前も語尾にゃーかよ!俺の目の前でリンセが立ち止まる。恐る恐る顔を上げると目の前に可愛らしい顔があり直視することが出来ずに引きずっている剣に目を落とす。


「新しく俺の下に着いた洋平です。洋平。団長に挨拶を。」

「はっ!初めましてリンセ団長!この度タナス殿の下に着くことになりました。洋平です!以後よろしくお願いします!」

「にゃ~・・・」


リンセが手を伸ばして来た。俺は握手かと思い手を握ろうとしたら、いきなり殴られた。


「いってぇ・・・」

「たぶんあれはなんか寄越せって事だ。宝石の一つでもやればこの場は済むだろう。」


タナスが俺を支えながら小声で教えてくれる。リンセは依然として手を伸べている。俺はマジックバッグからそこそこ大きな宝石を取り出しリンセの手に乗せる。


「にゃ」


リンセは手に取った宝石を見て、満足気な表情を浮かべる。俺はホッと胸を撫で下ろしたが、すぐにまた手を伸べてきた。


「洋平が持ってる宝石を感じ取ったんだろう。全部出さないと殺されるぞ。」


またタナスが小声で教えてきた。俺は仕方なくマジックバッグの宝石を全てリンセに渡す。これで終わりかと思いきや、またも手を伸べてきた。あと持ってるとすれば魔石だけなんだが、魔石の魔力を感じ取ったと言う事なのか。だがこの魔石は交渉材料だから簡単に手放す訳にはいかない。何かいい手段を考えろ。


俺は右手を出し、その上で魔力を創造する。イメージはダイヤモンド。まず透明度の高い氷の玉を作り出しそれをカットしていく。ダイヤモンドカットはよくわからないが適当にそれらしくカットしていく。ダイヤモンドカットの種類は沢山あるから適当にカットしても光の屈折でなんとか綺麗になるんじゃないかという安易な考えだ。俺はなんとか形を削り終わり、それを眺める。リンセの顔も近づいてきたがまだなんとも言えない表情だ。俺は先程頂いた懐中電灯を取り出し光を当ててみる。すると、一点に当てた光が中で乱反射し、様々な方向へ光を放った。


「おぉ。すっげぇ」

「にゃっ!」


俺が懐中電灯で光と当てて感動してるとリンセが俺の作った氷と懐中電灯と奪った。リンセはそのまま、氷と懐中電灯をもって自分の部屋に歩いて行った。懐中電灯を光らせながらご機嫌である。足元には大きな赤い剣が落ちていた。


「団長!この剣は?」

「にゃっ!」


リンセが俺を指差し歩いて去って行った。


「どうやらこの剣は洋平が好きにしていいらしいな。」

「マジかよ・・・この剣ってなんか凄そうじゃね?」

「詳しくはわからんが、どう見てもランクSは超えそうな感じはするな。」


俺は剣を持ち上げマジックバッグに入れ、タナスの部屋に戻る。ここまではまずまず順調だ。さてこれからの事を考えるとするか。リンセはどうやら手に入れた物は一通り愛でた後ひと眠りしまた海に潜って行くのだと言う。潜っている期間はまちまちで10日も帰って来ない事もあるそうだ。そうなるとロダントとカイネバルがたまたまここに立ち寄ったとしても三人が同時にここに集まるチャンスはあまり無さそうだ。なんとかしてロダントとカイネバルをここに連れてきたいところだが、どうするか。


「なぁ、ロダントとカイネバルの居場所ってわからないよな。」

「そうだなぁ。俺達はお互いに団長の甘い汁をすする仲間ではあるがお互いに干渉することはないから、居場所まではわからないな。団長なら臭いでもなんでも使ってやりそうなんだが。」


ここはリンセに頼むしかないのか。しかし言葉が通じる相手かどうか。にゃ!しか聞いてない気がする。きっと空気が読めるから言葉は必要ないんだろうな。等と考えていると急にタナスの部屋の扉が蹴破られリンセが入って来た。


「にゃ~~~~!!!」

「うあっ!ちょっと待て!助けろタナス!」


リンセは俺の腕を掴み俺を引っ張りだした。俺は抵抗しようとしたが可愛い子に手荒な真似は出来ないと心のどこかでブレーキをかけてしまった。そのまま引きずられリンセの部屋に連れてこられた。リンセの部屋には宝石があちこちに散りばめられており異様な雰囲気を出している。


「ん!」


リンセが氷の塊を俺に出してきた。俺が先程作った氷だがもう溶けてきてしまっている。リンセが懐中電灯で光を当てているが光はもう乱反射せず光るだけになっていた。リンセは悲しい顔をしてしまっている。目がウルウルして尋常じゃない程可愛い。


「あー氷ですからね。すぐに溶けてしまいますよ。光も熱を持ってますからそれを当て続けたらすぐにこうなりますよ。」

「・・・にゃぁ・・・」

「あーもうそんな目で俺を見るな!可愛いなこんちくしょう!わかったわかった。新しいの作るからちょっと待ってろ!待て!お座り!」


リンセの顔が近いから集中出来ない。俺がお座りというとホントにお座りをした。尻尾をフリフリさせて可愛い。じりじりをこちらに歩み寄って来るのもまた可愛い。これは可愛さの暴力だ。俺はなんとか魔力を強めに込めて氷の塊を作り出した。すると作り出した直後にリンセがその場から俺の氷に懐中電灯を当てて光具合を確かめている。反射具合に満足したのかリンセは素早く俺の手から氷を奪い取りベットの上に飛び跳ねて光を当てて楽しんでいる。まるで新しいおもちゃを買ってもらった小学生の様に。その姿もまた無邪気に笑う笑顔も可愛い。まるで盗賊じゃないみたいだ。


「待てよ・・・。リンセ自体は何も悪い事してないんじゃないか。タナス、ロダント、カイネバルがリンセの元からお宝を貰う為にやったとしても、リンセ自体は・・・。でもタナスもリンセの被害に合ってるからそれだけには留まらない可能性もあるが、人的被害は無いようだし、何よりこんな可愛い子が悪い事をする訳が無い。悪い事を悪い事だと言う認識が無いだけだ。人から物を奪わないのであれば別にリンセは無害だな。むしろうまく使えば・・・」


また色々と考えているとリンセがまた目をウルウルさせて俺に氷を出してきた。また溶かしたのか。可愛いなこんちくしょう。俺はまた氷を作りリンセに渡す。その出来た時の嬉しい表情がたまらない。


「あーえーっとリンセ団長?」

「ん?」


リンセはベットに寝ころび遊びながらも返事をしてくれる。可愛いなこんちくしょう。


「ロダントとカイネバルと話がしたいんですけど、どこにいるかわかりますか?」

「んー・・・んっ!んっ!」


リンセは少し考え二つの方向を指差した。


「その二人を連れて来てくれないですかね?」

「にゃぁ~」


なんとも気怠そうな返事だ。俺的解釈をするとめんどくさいから嫌だって感じだな。あぁこの感じはファングに近いな。


「じゃあもっと綺麗なの作ったら連れて来てくれますか?」

「にゃっ!?」


もうひと押しか


「自分で照らさなくても部屋がキラキラするの作れそうなんですけど、どうします?」

「にゃにゃ!にゃー!」

「交渉成立だな。」

「にゃー!」



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