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大損害


次の日、俺とルドルフとクリストの三人で宿から馬車を借り露店を開く場所まで来る。三人の間に会話は少ない。昨日の夜は三人で暴れてルドルフをぼこぼこにして疲れて寝てしまった。ガチャガチャは約500個は出来ていた。途中から慣れてきたのかクリストのペースが上がっていたようだ。


「これ全部銅貨一枚かよ。当たり多すぎだろ・・・」

「まぁ、これも世界を救う犠牲だと思って・・・」

「つーかその中身出したのほとんど俺じゃねーかよ!!」

「まぁ一番の当たりはエマちゃ・・・」


二人でルドルフの頭を引っ叩く。


「ルドルフ!帰ったら覚えとけよ!」


やっと露店を開く場所に着いた。露店を開くにも許可が必要だったが、それはさすがのルドルフ。顔パスで何も問題は無かった。


「さぁさぁ。寄ってらっしゃい。見てらっしゃい。ミカトレア王子ルドルフと古代魔術師クリストと精霊の使い洋平のコレボレーション!今日一日限りの限定販売だよ!売り切れる前に買った方がいいよ~。一つ銅貨一枚!騙されたと思って買ってみるもよし!子供へのプレゼントにも最適!何が出るかはお楽しみ!現品限りですよ~!」


俺が恥を忍んで大声を上げる。するとじわじわと人の波が様子を伺うように集まって来た。ルドルフとクリストの名前は強いらしい。


「どうだ。そこの坊や?一個買ってみないか?銅貨一枚だよ。」


母親と手を繋いでいる。男の子に声を掛けて見た。男の子は興味深々で母親の手を引っ張って店の前まで来た。


「坊や。名前はなんて言うんだ?」

「ユース・・・」

「ユース君か。いい名前だね。」


俺は並べられたガチャガチャの一つを手に取り、ユースと名前を掘った。そしてそのガチャガチャを子供に手渡す。


「ほら君の名前だよ。坊やは可愛いからお兄さんからのプレゼントだ。」

「ありがとう!!」

「ほら。開けてごらん。回して開けるんだよ。」


子供が力を込めてカプセルを回す。周りのギャラリーも近くまで集まって来た。まぁ500個もあるんだ。もう稼ぐ事は目的に出来ないし、もともとそんなつもりも無かった。最初の一個位タダであげたって問題は無い。ただその中身次第で今後の展開は変わるのだが。俺達三人も子供の手の中のガチャガチャに注目する。そしてガチャガチャが開いた。


「わぁぁ!綺麗な石だー!お兄ちゃんありがとう!!」

「よかったね。大事にするんだよ。」

「エマちゃんじゃなくてよかった・・・」

「・・・」


あの綺麗な石は紫がかっていて俺が入れた物だ。子供っぽいのでちょうどいいので俺はほっと一息ついた。ルドルフは違う意味で一息ついている。クリストは固まってしまっている。


「おい。クリスト大丈夫か?」

「お前それ魔石じゃねーか!!誰だ入れた馬鹿!!」

「あ、すまん。それ入れたのたぶん俺だわ。もしかしてやばいのか?」

「やばいも何もあるか!!あれはエルダートレントの魔石だぞ!!!」

「あーSSランクか・・・。おいくらまんえん?」

「滅多に市場に出る物じゃねぇが、少なく見積もっても金貨500はするだろう・・・」

「「「・・・」」」


俺達三人は固まってしまった。周りの人だかりも固まってしまった。子供と母親はするするを後ろへ下がって行く。俺達が正気を取り戻す前に人の波が押し寄せてきた。


「おい!一個くれ!」

「俺もだ!」

「俺は3つだ!」

「じゃあ俺は10個だ!」

「おい!それは俺のだぞ!!」


一瞬にして人が押し寄せて来て銅貨が舞い散る。俺達三人は一歩も動く事が出来なかった。


「おい!これは新品のポータルだぞ!」

「これは!輝竜石か!!」

「なんだこの変な物体は?」

「これも魔石じゃないのか!!」

「うわー変な物体だよ。外れかー!」

「なんだこの白い毛?」


それはユニコーンのたてがみです。


「なんだこの黒い毛?」


それはきっとエマちゃんです。


「とりあえず全部鑑定だ!ギルドに行くぞ!!!」

「「「「「「おーーーーー!!!!!!」」」」」」


一瞬にして人だかりが消えてしまった。残った俺達の前には銅貨が散らばっている。


「よっし!完売だな!今日はこの売上でパーっと行こう!」

「いや、洋平。完売しても銀貨5枚程度だろ。そこまで騒げないぞ?」

「それもそうだな。でもそこそこいいのは食べれるだろ。」

「そうだな。」


ルドルフと二人で地面に散らばった銅貨を集めて回る。


「筋力上昇10・・・30・・・70・・・100・・・」


クリストが何やら呟いている。


「お前ら覚悟は出来てるだろうな?」

「待てクリスト。話せばわかる。」

「そうだ。エマちゃんの入れたのは悪かったがあれは俺の物だから許してくれ。」

「おい!ルドルフ!抜け駆けは卑怯だぞ!」

「五月蠅い黙れ!うぉぉぉー」


クリストが力を込めて拳を握り俺達へ振りかぶって来た。ルドルフは逃げようとしたが俺が腕を掴んで俺の前に立たせる。


「おい!逃げるな!」

「だからって盾にするなよ!!」


クリストの拳が迫って来る。


「やめて~~~」


クリストと俺達の前に誰かが立ち塞がる。最初にガチャガチャをもらった子供だ。


「お兄ちゃん達喧嘩しないで!これ返すから喧嘩しないで!!」


子供の手には紫色に光るエルダートレントの魔石が握られている。子供は今にも泣きそうな顔をしている。


「クリスト。お前の気持ちはわかる。俺達を殴って気が済むなら殴ればいい。だが無関係な子供を泣かせてもいいのだろうか。未来ある子供を!俺達の作った道を子供達が歩いていくんだぞ!」

「ごめんな坊や。お兄ちゃん達は仲良しだから喧嘩はしないよ。ありがとな。それをお母さんに持って行きな。そして好きな物を買ってもらいなさい。」


子供は笑顔になって走って行った。俺達は三人で仲良く肩を組み子供と母親を見送る。


「うんうん。子供は未来の宝だねぇ。」

「俺達は仲間だもんな。」


子供と母親が見えなくなった途端クリストが俺達を殴る。


「いてぇ・・・」

「お前はなんかかっこいい事言ってるように見せて全然意味わかんねーよ!誤魔化すな!」

「「どうもすいませんでした!!」」


俺とルドルフは土下座をして謝る。


「まぁいいさ。俺も大人だ。だがお前達に大きな貸しだからな!」

「「ははー」」


クリストにひれ伏しているとギャラリーが増えてきた。その中で見覚えのある顔を見つけた。一緒に捕まった時の商人の一人だ。


「そもそもお前らは・・・」

「悪い、クリスト。目標発見だ。ルドルフ後は任せた。」


叱られ役をルドルフに任せ、俺は商人の元へと行く。


「お久しぶりです。」

「おーあのときのあんちゃんじゃないか。なんか騒ぎがしてたから様子を見に来たんだが、お前さん達だったのか。それにあそこでひれ伏してるのはルドルフ様じゃないか?」

「ちょっとお願いがあって探していた所なんですよ。」

「お?俺をか?あぁ御馳走するって約束はしてたな。」

「それもそうなんですけど、前盗賊達に捕まえられた場所に行きたいんですよ。」

「あぁそれなら三日程前に討伐隊が出発した所だな。」

「何!?くそっ作戦が・・・。その場所へは何日かかりますか?」

「そうだな。まぁ討伐隊の足なら明日には着くんじゃないか。」

「こうしちゃおれん!!すいません。ありがとうございました!食事はまた今度で!」

「お、おう。なんかわからねぇが頑張れよ。」


俺はすぐにルドルフとクリストを捕まえて事情を説明する。


「と言う訳で討伐隊より先に着かないとダメだ。明日には着くみたいだから時間が無い!」

「そうだな。こんな事してる時間は無いな。」

「こんな事ってなんだ。まぁいいさ。ところで目的地はどこなんだ?」


目的地を聞いて無かった。急いで商人の所へ戻り、討伐隊は霞の谷と言う、ここから西に行った所にある場所に行ったらしい。谷底から通れる道は一本しか無いのでそこを通って行けば見覚えのある場所に着くはずだ。クリストとルドルフは霞の谷の場所を知っているので二人に着いていくことにする。俺達は早速宿に戻り準備をし出発する。馬車は置いていく。なぜなら走った方が早いからだ。


「よし。二人とも準備はいいな。てかクリストはそんな重装備で走れるのか?」

「問題無い。この鎧は動力甲冑の一つで鎧を魔力で操作して動く。魔力操作で鎧が動くから体に負担は無い。ただ魔力操作が苦手な人が着けると四肢がもげるな。」

「なるほど。クリスト専用か。」

「まぁ洋平なら出来るだろうけどな。まぁ慣れるまでに腕の一本位覚悟しといた方がいいな。」

「やめとくよ。じゃあ行くか!!全力で走るぞ!」


ルドルフを先頭にクリスト、俺と続く。ルドルフはまだまだ全力で走って居ない。討伐隊の臭いを嗅ぎつつ周囲の警戒も怠ってはいない。実に優秀だ。その反面クリストは後ろ向きに走っている。俺と目が合うのだが走りにくくてしょうがない。クリストに言わせれば後方警戒だと言うが、俺達三人のスピードに付いてこれるやつなどそうは居ないだろう。俺もまだ全力で走ってはいない。7割程度だろう。


「討伐隊を発見した。この調子だと今日は野営するだろう。だが谷底への道を行くと討伐隊と鉢合わせるな。」

「でかしたワンコ!」

「誰が犬だ!んでどうする?討伐隊には追いついたぞ。霞の谷は目の前だ。」


ミューズの町を出たのが昼前だったので、夕暮れ時にやっと討伐隊に追いついた。討伐隊は牢屋のついた馬車を5台引っ張っているので、そこまでスピードは速くなかったようだ。今日は谷の前で野営をするだろう。


「仕方がない。他の道から谷に降りるぞ。討伐隊に見つからない様にな。」

「わかった。こっちが風下だから大丈夫だろう。」


ルドルフは森を掻き分け中を進んで行くと、大地の裂け目が現れた。霞がかっていて谷底が見えない。これが霞の谷と呼ばれる由縁である。


「絶景と言われれば絶景だな。」

「確かにな。ここは周囲の魔物の強さも高いから滅多に人が来る事は無い。」

「風魔術で霞でも晴らせれば谷底でも見えるんだろうが、俺達三人は使えないしな。」


三人で目配せをする。お前が行けよと言う牽制だ。


「よし、ここは公平にじゃんけんだな!」

「「なんだそれは?」」

「くそ、ここまで文明が劣っているのか・・・」


俺は二人にじゃんけんを教える。

「なるほど。グーは拳でチョキが鋏でパーが紙か。面白そうだ。」

「よっしゃ行くぜ!」

「「「じゃ~んけ~んぽん!!」」」


ルドルフはグー。クリストはパー。俺は昔のチョキ。


「なんだそれは!?」

「これぞ必殺技!グーチョキパー三つの特性を兼ね備えた最強技!これは全部に勝つ!!」

「「卑怯だぞ!!」」

「なんとでも言いたまえ!だが俺は勝った!この事実に間違いはない!となるとルドルフの負けか。」

「待て待て!俺の拳は鉄をも砕く!紙なんぞに負けるか!」

「おい!じゃあ俺の紙は鋼鉄製だ!バイオレット鉱石で作った紙だからなSランクだぞ!」

「しょうがない。もう一度か。」

「いや二度目はねーよ!ずるをしたんだ!洋平が行って来い!」


ルドルフが俺の腕を掴み谷へと放り投げようとする。だがしかし俺はルドルフの腕を離さなかった。ルドルフと一緒に谷底に落ちようとするが。ルドルフも咄嗟にクリストの腕を掴み三人で落ちていく。


「「「結局こうなるのかよ!」」」



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