ガチャガチャ~伝説よ再び~
馬車の中でクリストと話をする。ルドルフは手綱を握っているので蚊帳の外だ。
「なるほど。たしかにいい作戦だな。だが・・・」
「だがなんだ?」
「お前ホントに精霊の使いか?よくそんな悪知恵が働くな。」
「まぁ生き抜くための術ってやつだろう。」
「おーいミューズの町が見えたぞー」
クリストと話しているとルドルフが声をかけてきた。どうやらミューズの町についたようだ。距離はそこまでなかったのだが一晩野営をしたおかげで時間を食ってしまった。そして着いた時間ももう夕方に差し掛かっていた。
「結構遠かったな。俺達二人なら走った方が早いがクリストの荷物が多すぎだ。洋平の作戦を聞いて一度戻るなんてまったく。」
「戦闘があるかもしれないだろ。俺は魔道具に頼り切った戦いだから何もないとお前らに負ける自信があるぞ。」
「古代魔術師の台詞とは思えないな。」
クリストは俺の作戦を聞いて一度家に戻った。そして重戦士のような恰好をして戻って来た。鎧に装飾などは無く普通の鋼の厚手の鎧だ。背中にはとても振り回せそうにない巨大な剣を背負っている。マジックバックも俺の容量の三倍はあるものを5つも持ってきた。
「じゃあ二人は宿を取ってきてくれ。俺はちょっと知り合いを探してくる。宿が取れたら探しに来てくれ。ルドルフなら臭いでわかるんだろ?」
「あぁ。大丈夫だ。」
「そんな原始的なやり方よりこれを持って行け。」
クリストはマジックバッグから赤と青と黄色のコンパスを取り出した。
「ルドルフは炎だから赤で、洋平は水だから青で、俺は黄色だな。このコンパスには自分の色とは違う針が二つついてるだろ?それがお互いのコンパスの場所を教えてくれる。」
「おぉ!これは凄いな。対になってるのは見たことがあるが、3対になっているとは。」
「ちなみにこれは俺特性の魔道具だ。大事に使ってくれ。あと魔力を込めると震えるから危険があったら知らせる事も出来る。」
俺はコンパスを貰い二人と別れる。俺が探している人は前に一緒に捕まった事がある人だ。名前も聞いていなかった。また今度会った時には飯を奢ってくれる約束をしただけだ。商人でがっちりとした体格でヒゲが生えてる位しか思い出すことが出来ない。まぁ商人と言う情報だけあればなんとか見つける事が出来るかもしれない。俺はまず露店を見て回った。だが時刻は夕方。もうすでに店仕舞いをしている人が多い。その中で人を見つけるのは困難を極めた。
「おーい洋平。知り合いとは会えたのか?」
露店をうろうろしているとルドルフとクリストが歩いて来た。
「いや、ダメだ。名前も知らないし。商人って事位しか手がかりが無い。」
「そうか。王族の権限を使ってお触れを出すって言うのもあるけどな。」
「さすがにそれは拙いな。」
「まぁ手続きもあるからめんどくさいしな。」
さてどうするか。知り合いの商人は三人いる。待てよ。商人か。商売魂を掻き立てればもしかすると・・・。
「よし!今日は帰るぞ!クリスト。ストーンペンダントはあるか?」
「あぁ。3つ位なら持って来てるのはある。」
「3つじゃ足りないな。」
「何するんだ?」
「まぁ石を使った創造だな。」
「ほう。それは俺が作った石ではダメなのか?」
「クリストは土魔術が使えるのか?」
「あぁもちろんだ。俺は風魔術以外なら使えるぜ。」
「じゃあ問題は無いな。早速帰るぞ!」
俺達三人は早速宿に戻った。そして三人で伝説のガチャガチャ作りに入る。
「これが試作品ではあるがこれと同じ物を量産しようと思う。」
俺はマジックバッグからガチャガチャを取り出し二人に見せる。中を開け、中のフィギュアも見せた。
「おぉ。これは凄いな。洋平が作ったのか?」
「そうだ。これを使って明日露店を開こうと思う。ガチャガチャと言うんだが、中を開けるまでは何が入ってるかわからない仕組みだ。値段は一個銅貨一枚の安価な物と銀貨一枚の高価な物に分ける。俺はこのガチャガチャを作るから、クリストは丸い石を沢山出して、後は中に入れる物を考えてくれ。」
「わかった。少し見てもいいか?」
「あぁ好きに触ってくれ。」
「うーん。なるほど。見事だな。これなら俺の魔術で作り出せるかもしれないな。」
「本当か?」
「まぁやってみないとわからないが、よし行くぜ。」
クリストの手から丸い石が作り出される。
「ダメだ。開かない。もっと隙間を開けるのか、この溝がこうなって、こうすれば。」
またクリストが石を作り出す。今度は完璧だ。流石は古代魔術師クリスト。魔術が精密だ。
「完璧だな。流石はクリスト。」
「だが結構な魔力を使うぞ。少しも手を抜けない。」
「じゃあカプセル作りはクリストに任せるから、俺とルドルフでドンドン中に入れて行こう。」
こうしてガチャガチャ作りは幕を開けた。クリストがカプセルをドンドン作る。毎分2個というペースではあるが俺が作るのより精密で美しい。クリストが持ってきたマジックバッグを二人で漁り中に入れる物を考える。俺もルドルフも目利きはそれほどよくないのでクリストに相談しながらだが、ある程度の目利きは出来る。ルドルフは銅貨一枚を担当。俺は銀貨一枚を担当。俺が作ったフィギュアもたまに入れておく。
「この作業って地味だな。」
「まぁ文句言うなよ。これも全て世界を救う一歩だと思えばいいさ。」
「洋平がやる事に文句はねーよ。だがこれは結構ぼったくりだよな。」
「まぁ商売だからな。ってお前今何入れた!!」
「くそっ!ばれたか!!」
「おい!教えろよ!」
「これだけはなんとしてでも死守せねばならん!!」
「なんでそんなもの入れた!」
「遊び心は必要だろ!」
「いいからそれを寄越せ!」
俺とルドルフが取り合いをしていると二人の手からガチャガチャが放り出された
「「しまった!!」」
二人で飛びつきガチャガチャを取ろうとするがその先に黙々と作業をしているクリストが居た。二人でクリストを押し潰してしまう。
「お前ら!!一体何をしてるんだ!!!」
「「違う!!こいつが!!」」
「あーもうどれがどれかわからねーじゃねぇか!」
足元を見ると俺とルドルフが分けていたガチャガチャが入り乱れてしまっていた。三人を沈黙が襲う。その沈黙を破ったのはルドルフだ。
「よし全部銅貨一枚で売ろう!」
「おい!正気か!新品のポータル入れたぞ!あとユニコーンのたてがみとか!」
「ユニコーンはダメだろ!!SSランクだぞそれ!」
「エマちゃんの髪の毛一本銀貨一枚で売れねーだろ!」
「「・・・」」
「ななななんだよ?エマちゃんもユニコーンも同じ毛だろう?」
「「馬鹿野郎!!!!」」




