猫耳幼女古代魔術師セリーヌ!
旅を初めてから5日程経った。あれからというものアイヴィは俺にすっごく優しい。付き合う前みたいな感じだ。お互い少し遠慮しながらお互いの距離を詰めていく感じ。これはたまらん。付き合う前が一番楽しいと聞いた事があるがまさしくそれだろう。
アイヴィは俺をからかっていてポグの肉と言ったのは鹿の肉だったらしい。到着も30日と言ったのも実は今日にも着くそうだという。
俺はアイヴィにばかり手綱を握らせるのも悪いと思い俺も手綱を握ってみる事にした。まだまだぎこちないのだがアイヴィの手が俺の手を包んで導いてくれる。
この時間がずっと続けばいいのに。等と考えていると急に森が開けて小さな湖とそのそばにポツンと立つ3階立ての家を見つけた。ポツンと言っても着いてみると結構な豪邸だ。ここがアイヴィの師匠セリーヌの家だそうだ。もう少し手綱もといアイヴィの手と触れていたかったのだが、しょうがなくアイヴィに手綱を渡し降りる準備をする。
「洋平、セリーヌ様は強いので。あまり粗相をしないように気を付けてくださいね。」
「わかりました。」
アイヴィがまた不気味な笑みを浮かべる。またこいつは何か考えているなと思いつつ、シルバーのロープを外す。
馬車が止まり二人で揃って玄関の前に立つ。アイヴィがドアをノックする
「セリーヌ様。アイヴィです。只今戻りました。」
「にゃーい」
中から元気な子供の声がするアイヴィの他にも弟子はいるだろうしな。この家を一人じゃ管理も大変だろうからお手伝いさんか何かだろう。
「アイヴィ!!」
そう言って扉から出てきたのは150センチ位の小さい女の子供だ。猫耳があり尻尾をフリフリしている。扉から出るなり、アイヴィに抱き付き胸に顔を埋めている
アイヴィが嫌そうな目で俺を見つめていたのでその子供の首根っこを摑まえて引きはがす。
「お前は誰なのにゃ?」
首根っこを捕まれてブランブランしながら聞いてくる。
「お、お前が誰だよ」
彼氏です。と言いたい気持ちをぐっと堪えた。
「僕の事を知らないのにゃ?僕はセリーヌ。古代魔術師なのにゃ!」
血の気が引いた。思わず手を放してしまい。セリーヌが玄関の床に転がる。
「にゃ~。アイヴィ。こいつは誰なのにゃ?」
「この方は洋平殿と言って、ユノ王の紹介でここに来ました。詳しい事はここに書いてあります。」
そう言ってアイヴィが紙をセリーヌに渡す。ぶつぶつ言いながらセリーヌは家の中に入って行った。
「私達も行きましょう。」
「勝手に上がってもいいんですか?」
「ここは私の家みたいなものです。子供が家に入るのに許可はいりませんよ。その・・・私の友人である洋平も構いません・・・」
顔を赤らめて俯きながら言う。いちいち可愛い仕草をしやがって。
中に入るとそこは結構な広さのある部屋だ。しかし汚い。物が乱雑に積まれてあって今にも崩れそうだ。しかし本やら見慣れぬ物体まで絶妙なバランスで積まれている。少し触れば家ごと崩壊しそうなので触らないでおこう。
アイヴィに勧められセリーヌが座っているテーブルの反対側の椅子の腰かける。
アイヴィは家の中を掃除し始めていた。見事な手際だ。いい嫁になれるぜ。
セリーヌが手紙を読み終え、目を閉じ上を向いて椅子を傾かせ絶妙なバランスを維持する。
しばらくしてアイヴィが飲み物を持って来て俺の隣に腰掛ける。
耳を澄ませるとなにやらスピースピーを言う音が聞こえてくる。俺とアイヴィは顔を見合わせアイヴィが声をかけようと口を開こうとしたのを俺は手を出して制止させる。
この絶妙なバランス。ここから想像出来る一番面白い展開が頭に浮かんでいた。俺は迷わなかった。テーブルに置いてある小石をつまみセリーヌの後ろに積まれている本の山に投げつける。すると案の定・・・
本の山から頭だけ出してセリーヌが聞いてくる。
「お前はこの世界の住人では無いのだにゃ?」
「はい」
「お前は元の世界に戻りたいとにゃ?」
「はい」
「その為の方法を僕に聞きに来たと言う事かにゃ?」
「はい」
「ん~にゃ~・・・」
またの沈黙
「お前は魔術が使えるのかにゃ?」
「いいえ、使ったことがありません」
「アイヴィ、こいつの資質を見てきたかにゃ?」
「いいえ、急な事だったのでつい忘れていました。」
「ではアイヴィ。ウィンストハイム城下町に行ってこいつの資質を見てくるのにゃ。ついでに冒険者登録もするのにゃ。全ての話はそれからだにゃ~」
そういってアイヴィにさっき投げた小石を二つ渡してくる
「わかりました。行きましょう洋平殿」
「え?あ?ちょ・・・」
アイヴィに手を引かれて家を出る。
「どうゆう事なんすか?」
「私のミスです。すいません。洋平と一緒に居れると思って浮かれていました。」
「また戻るんですか?」
「そうですね。また馬車で5日。トンボ返りで10日というところでしょう。」
「うへぇ~~、せっかく野宿から解放されると思ったのに~」
野宿も悪いモノでは無いなぜならアイヴィと一緒なのだから。手綱を理由に手を繋げるしむしろ今の状況が続くのはいい事だ。というかさっき手を繋いだな。
「ですが。さっき洋平が投げた石。これですね。これはポータルストーンと言って使うと一瞬で移動できる魔道具です。これを使うので一瞬で行って戻ってこれますよ。」
「じゃあここに来るのにもそれを使えばよかったんじゃ?」
「ポータルストーンは使うと使用者が認識した人を望んだ場所に移動させることが出来ますが、認識した人全員が一度訪れた場所でないと使う事が出来ないのです。使い捨てで高価なものなのであまり多用は出来ないのです。それに洋平と居る時間も減りますしね!」
照れるなら言わなきゃいいのに。
「じゃあ馬車で10日かけましょう」
「いいえセリーヌ様の申しつけなのですぐに行って戻ってこなくてはなりません」
「まぁしょうがないか」
「はい・・・」
アイヴィが手を差し伸べてきた。俺は恥ずかしながらも手を握る。アイヴィが石を確認して一つをしまい。一つを握り念じる。
「ポータルストーン、オン!」
そういって俺は不思議な感触に包まれて地面に着地した。
頭がグワングワン回って気持ち悪い。
「大丈夫ですか?」
「だいじょばない」
アイヴィは優しく手を握って来た。頭の中はエロイのに世界が回ってる。アイヴィに手を引かれながら俺は歩き出した。