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ペアウルフ


俺と商人3人を乗せた馬車は盗賊のアジトを出発して三日程経った。ミューズの町に行くのだが、アジトの場所を知ってるはずも無く、現在地がわからないのにどうやって行くのかと思ったらコンパスのような物を取り出し、その針を目印に行くようだ。そのコンパスは対で組になっており、お互いのコンパスを指し示す事が出来る魔道具だった。三人の商人は冒険者向けの魔道具を扱っており、様々な事を教わった。盗賊のアジトから頂いたお宝の中から色々な物を取り出し説明してくれた。その中でも特に興味を惹かれる物があった。


「これは火成岩の腕飾りってやつだ。ランクは低いが日常生活に便利だ。まぁ俺らガフ族はだいたい火魔術が使えるから使うやつはほとんど居ないが持ってると便利な物だ。」

「どうゆう効果があるんですか?」

「まぁつけてみたらわかるさ。」


火成岩の腕飾りを渡される。非常に装飾が凝っており2頭の龍が∞の形のように綺麗に装飾されている。それを腕にはめてみる。やばいかっこいい。


「つけた腕の手のひらを上にして念じてみるんだ。」


左腕につけたので左手の手のひらを上にして念じてみる。すると手のひらの上に火が現れた。


「おぉ・・・」

「まぁそれだけだ。火成岩の腕飾りは作るのは簡単だ。だがその装飾にみんなこだわりを持つのさ。職人の技術を競うには火成岩の腕飾りって事だ。値段は安いが名のある職人が作ったものなら値段は跳ね上がる。その装飾は見たことが無いが美しいな。きっとドワーフ辺りが作ったものじゃないか。」

「欲しい・・・」

「ん?なんだ。そんなん売ってもいくらの価値がつくかわからんから分け前無しに貰っとけ。」

「いいんですか?」

「あぁ。兄ちゃんが居なければ道中も危険だったしな。」

「ありがとうございます。」


火成岩の腕飾り。手のひらから火を出すことが出来る。料理や冒険などで火を使う時に重宝する。ファイアペンダントと同じ仕組みだが、見た目が違う。俺は両手を出し、左で火を作り、右で水を作る。


「ククク・・・」


完璧だ。赤と青。二種類の魔術を同時に使ってる感じ。たまんねぇ。


「見えてきたぞ。あれがミューズの町だ。」


峡谷を抜け岩石地帯を抜け草原地帯を抜けた先に見えてきたのは大きな町だ。遠目からでもベイルの町程に大きい町なのがわかる。石造りの家がほとんどであるがその作りはウィンストハイムとは比べものにならないくらい一軒一軒が大きい。最低でも二階建てバルコニー付きだ。門などは無くどこからでも入れるようになっている。しかしミューズの町に長居をするつもりはない。俺には目的があるのだ。


「よし。無事に到着だ。ありがとうな。色々助かったよ。」

「こちらこそ送っていただいてありがとうございます。」

「んじゃあ分け前の相談なんだが、一番の功労者は兄ちゃんだ。兄ちゃんが決めてくれ。」

「えっと・・・。この腕輪だけで十分です。」

「さすがにそれじゃ少なすぎだろう。兄ちゃんが納得しても俺達が納得しない。」

「そうですか。でも他にめぼしい物が無くて・・・」

「まぁ確かになぁ。売ればいくらか金にはなるがそれを分けるって事でいいか?」

「いえ。先を急ぎますので。」

「そうか。じゃあ今度この町に来た時は御馳走するからよ。それでいいか。」

「はい。色々とありがとうございました。」


俺は深くお辞儀をし、町から離れていく。向かうは遠くに見えるミカトレア大火山だ。俺はゆっくりと歩き出した。歩きながら両手に赤と青を灯らせる。


「ククク・・・これだよこれ。火の試練をクリアしたら腕輪無しにこれが出来るのか。ワクワクが止まらないぜ。しかし風の試練みたいに難しいのかもしれないから気を引き締めて行こう。」


遠くに見えるミカトレア大火山を目指して進んでいると黒い犬が走り去って行った。それはダイヤウルフでは無く。ペアウルフと呼ばれる魔物だ。白の雌と黒の雄二匹合わせてペアウルフと呼ぶ。しかしこのペアウルフは二匹一緒に行動している訳では無い。白が攻撃を受けると黒を呼ぶ。逆に黒が攻撃を受けると白を呼ぶのである。そして呼ばれる方は近くにいるペアを全部呼ぶ。一撃で倒さなければ、あっという間に囲まれるのである。つまり黒い雄のペアウルフが走って行ったと言う事は白の雌のペアウルフが攻撃を受けて生き残った証拠なのである。俺はすぐにペアウルフの後を追い走り出した。


「これはちょっとまずいな・・・」


ペアウルフを追い抜き丘を駆け上がり見てみると、目の前には白と黒の絨毯が広がっていた。その中心にはぽっかり穴が開いており一人のガフ族の男が戦っているのが見える。ペアウルフの数はざっと100は下らない数だろう。このままではあのガフ族の男は魔物にやられてしまうだろう。だが俺が加勢すれば勝機は少なからず上がるはずだ。このまま見殺しになんて出来る訳が無い。


「おーい!大丈夫かー?今助けにいく・・・っとあぶねぇ!」


前方に気を取られていて後ろの注意がおろそかになっていた。丘を駆け下り助けに向かおうとしたのだが先程追い抜いたと思われる黒のペアウルフがジャンプして俺に影を落とした。俺は思わず剣を抜いて攻撃を促すかのように捌いてしまった。


「あ・・・いや、違うんだ・・・」


ペアウルフと目が合う。数秒ののち・・・


「ワオォーン!」

「やっぱりかー!」


俺は丘を急いで駆け下り大きく飛び上がり絨毯の中心に着地する。遠目からではわからなかったがガフ族の男は所々から血を流していた。だが目には炎が宿ったような強い意思が感じられる。筋骨隆々で身長は180センチはあるだろうか。攻撃を受けたのか服はボロボロで上半身は裸に近い。下半身は獣の皮で作ったような腰布が巻かれている。そして注目すべきなのは左腕に装備している物だ。鋼鉄製のような物で肘から指先までを全て金属で覆っている。かなり中二心を誘われる物だ。


「助けに来たぞ!」

「援軍か!すまない!助かった!」

「一撃で倒せば仲間は呼べないはずだ。手数よりも多少の傷は覚悟で一撃で一匹づつ仕留めて行こう。」

「わかった!おぉさらに援軍が!」


俺が来た丘の上を見ると何やら蠢く影が見えた。だがその正体を俺は知っている。白いペアウルフ達だ。


「あれは俺達の援軍では無い。魔物側の援軍だ。」

「なに?一体どこから。ここ一帯はもう呼びつくした感じがしたが・・・」

「あー悪い。それ連れてきたの俺だわ。」

「どっちの援軍なんだよ!」

「お前の援軍に決まってんだろ!!見てろ!すぐに終わらせてやる!アブソリュートゼロ!!」


周囲の空気が凍り始め、ペアウルフを次々と凍らせていく。凍ってしまえば声も出せないと思ったのだが、後ろに控えているペアウルフが凍った仲間を体当たりで救い出していく。救われた仲間はまた仲間を呼ぶ。俺が連れてきた。丘の上のペアウルフ達が次々と加わってきて絨毯がさらに広がりを見せる。


「ちっ!広範囲で威力のある魔術じゃないとダメか。」


範囲で使えるのはダイダルウェイブ。メイルシュトローム。フロストノヴァ。アブソリュートゼロ。だがどれも威力に今一つ難がある。威力で言えばカッターが一番強いだろうがカッターやバレットだとかすって生き残りが出てきそうだ。どうすればいい。


「おい。ガフ族のあんちゃん。なんか魔術使えないのか?」

「いや・・・使えない事も無いが・・・」

「なんだよそれは!迷ってる時間は無いんだぞ!俺がこいつらを一か所に集めるからそれを一気に倒せるような魔術は使えないか?エクスプロージョンとかさ!」

「うぐぐ・・・」

「どっちなんだよ!出来るのか出来ないのかはっきりしろ!それでも金玉ついてんのか!」

「あーもう!わかったよ!出来るよ出来る!死ぬよりはマシだもんな!それよりもお前、この数を集められんのか?」

「集めるだけなら問題ないさ!それよりもお前の火力が心配だがな!ちゃんと一発で仕留めれるんだろうな!」

「俺が魔術を使えばこんなやつら楽勝だっつーの!!」

「じゃあ最初から使えよ!」

「それは・・・」

「あーもういいから行くぞ!!威力は要らない。範囲を広げて。呑み込め!メイルシュトローム!」


俺とガフ族の男を中心に水の渦が出現する。渦は次々と絨毯を浸食していきペアウルフ達を巻き上げていく。ペアウルフ達を全て呑み込み巻き上げた渦は俺とガフ族の男の頭上にペアウルフ達を次々と落としてくる。ガフ族の男は左腕に着けていた鋼鉄の小手を取り外し、拳を突き上げる。拳からは炎が燃え盛っている。


「食らいやがれ!うぉぉぉぉぉぉ!!!」


突き出した拳から業火が伸びていき、ペアウルフを次々と消し炭にしていく。俺の作ったメイルシュトロームまで蒸発させてしまう。


「どうだ!見たか!これが俺の実力だ!!」


ドヤァ。凄まじい威力だった。この威力をしかも詠唱無しで出来るとは、こいつもしかして凄いやつなんじゃないか。


「つーかそんだけ火力出せるなら最初からやれよ!!」

「うむむ・・・」

「あーもうわかったよ。とりあえず熱いからその火を消せよ。」


ガフ族の男の手からは未だに業火が伸びている。ペアウルフは倒したと言うのに、男は魔術をやめようとはしない。


「あーまたやっちまった・・・」

「どうしたんだよ。早く消せよ。」

「自分では止められん!!」

「えーーーーーー!!」



リアルが忙しいので次回更新は6月になります。ごめんなのにゃ!

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