進め僕らのカッター
食虫植物を倒しようやく一息を着く。
「ちょっと危なかったよなー。もっと精進せねば。今は接近戦より魔術による攻撃の方が幅も広いし攻撃力もあるな」
色々な反省をしていると急に地面が揺れ始めた。
「なんだ。地震か!?」
よく見ると食虫植物の蔓が生えていた地面が大きく盛り上がってくる。
「まだ終わってなかったのか・・・」
地面から大きな球根が姿を現す。球根からは複数の蔓が生えておりそれぞれが先程倒した口を有している。その数は5。球根の下に生えている根のような髭のようなものをうじゃうじゃと動かし移動している。
「キモイし、強よそうだし、めんどくさそう・・・」
地面から出てきた球根を見つめて脳を回転させる。セリーヌから借りた図鑑で見たことがある。球根型の魔物。フルシュフシュ。森の奥深くに生息し、非常に凶暴。生き物であれば人間でも魔物でも無差別に食す。討伐難易度はA。口には毒を含んだ牙があり噛んだ獲物を麻痺させ口の中でゆっくりと消化するなんともえげつない魔物だ。
「まぁこんなに本体がむき出しなら狙いはたやすいよな。悪いがAランク如きで躓いてる訳にはいかないんだよ。一気に決めるぞ!ウォーターフォール!」
フルシュフシュの頭上から滝のような水が落ちていき、フルシュフシュの動きを止める。
「フロストノヴァ!!」
滝が一瞬にして凍りフルシュフシュを凍らせる。しかしすぐにヒビが入り割れて活動を再開する。
「アイスランスの応用!アイスプリズン!!」
複数の氷の槍が球根の周りで檻を形成する。周りにも無差別に突き出し口の動きも制限する。
「行くぞ~。ウォーターカッター!!」
先程は両手で作り出したが今回は片手で巨大な水の円盤を作り出す。
「檻ごと切ってしまえ!!」
巨大なカッターが地面と平行に飛んでいき、途中に突き出したアイスランスも斬りながら檻へ向かって行き球根を真っ二つにする。
「おら~!今日二回目のどんなもんじゃい!!」
またしてもガッツポーズを決め球根を見る。球根は見事に二つに割れそれから伸びる口も力なく倒れていく。しかしカッターはその勢いを留める事を知らず後ろの木々をも切り裂いて進んで行く。
「うぉっ!まじかよ!!やっべっ!!!」
球根には見向きもせずにカッターを追いかける。カッターのスピードはそこまで早い訳では無いのだが、木々を薙ぎ倒しながらドンドン進んで行く。俺は倒れて来る木々を避けながら進まないといけないので追いつく事が出来ない。
「おい!やばいって!止まれー!アイスウォール!」
氷の壁をカッターの先に作り出して見るものの、カッターはそれをたやすく切り裂いて進んで行く。フルシュフシュを倒すために結構な力を注いだので急造の氷の壁ではフルシュフシュの攻撃は止めれても力を注いだウォーターカッターを止める事は出来ない。それでもいつかは止まってくれることを願い氷の壁を作り続ける。
「やべー、とまんねー。誰かー助けてくれー」
走り続けていると急に開けた場所に出た。その場所には沢山の建物と沢山の人が居た。人は整った顔のやつしか居ない。ここがエルフの里か。木造の建物しか無く。畑等も沢山ある。田舎の風景に似ているが色々違う。木の上に家があったり、奥には大きな平屋の屋敷がある。この里では一番大きい建物に見える。このままカッターが進むとちょうどその家を貫いてしまう。
「やばい!!みんな避けろ~~~~!!」
大きな声を出し他の人に避難を呼びかける。突然現れた水の円盤に戸惑い驚いているがなんとか避けてくれているようだ。大きな屋敷の途中にある家も真っ二つにしながら円盤は進む。人的被害は無さそうで安心するが、このままではまずい。木が無くなったのでスピードを上げカッターを追い抜き屋敷の入口の門の所に着地する。門の所には一人の門番と思われる人が居た。
「お前はセリーヌ様の所に居た洋平じゃないか!こんな所で一体どうしたんだ!それにあれはなんだ!お前の仕業か!返答次第では」
「いいから黙ってあれを止めるのを手伝ってくれ!!!来るぞ!!」
門の所に居たのはリソワの取り巻きの一人のランスと言うエルフだ。二人で向かって来る俺が放ったウォーターカッターを見つめ魔力を集中させる。
「一点集中!!」
「アイスウォール!」「ウィンドウォール!」
氷の壁と風の壁が現れカッターを食い止める。しかしカッターは二つの壁をドンドン削り押してくる。俺は魔力をさらに込め壁の強度を高める。しかし触れてみるとわかるがカッターの威力は衰える事が無い。
「くっそ!このままじゃ・・・ランスさん!だっけか!何か手は無いか!!」
「くぅ・・・確かにこのままじゃ。だがなんとしてでもこれを止めなければ!!気合だ!!」
根性論かよ。だがこのままでは二人共、真っ二つになってしまう。無関係なランスを巻き込むわけにはいかない。
「もういい!ここは俺が食い止めるからランスさんは逃げて!!」
「それはならん!!俺はこの屋敷に訪れる脅威を取り除かなければならん!」
「だけどこのままでは死ぬぞ!!」
「それも致し方あるまい!ここで門の守りを投げだして逃げても後であの人に殺される・・・」
「あの人って・・・まさか」
「リソワ様だ・・・」
「ランスさんも大変ですね・・・」
「いいから!集中しろ!このままでは魔力が持たん!!」
俺は魔力の全てを壁に注ぎ込む勢いで壁を維持する。徐々に弱まってきている気がするが、このままでは俺の魔力も持ちそうにないかもしれない。
「「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」」
二人でありったけの魔力を注ぎ込む。これで止める事が出来なければ二人仲良くお陀仏だ。
「なんだ。騒々しい。お前は洋平じゃないか!何しに来た。それは一体何をしている?」
屋敷からリソワが現れた。呑気なものだ。こちとら必死だと言うのに。と言うか着ている服の生地が薄すぎて目のやり場に困る。
「リソワ様!ご助力を願います!」
ランスが懇願する。俺もランスももう魔力が尽きそうだ。
「ふむ。」
リソワが飛び上がりどこから取り出したかわからない剣を引き抜く。そして円盤の中心に向かって剣を突き入れる。すると強大な暴風が吹き荒れ俺とランスは吹き飛ばされる。ウォーターカッターは無事に消えたようだ。もう魔力がからっからだ。しっかりしないと意識が保てない。
「ランスよ。このひどい有様はなんだ。誰の仕業だ。」
リソワがランスを見下し問いかける。ランスは魔力が尽きたのか倒れたまま俺を指差し意識を失う。
「お前か。」
リソワに見下される。この角度はやばい変な性癖に目覚めそうだ。
「やはり一度死ぬか。」
「すみませんでし・・・」
俺は意識を手放した。それは魔力を使いすぎたのか。興奮しすぎたのか。物理でなのかはわからないまま。
もうPCからの投稿をあきらめました。ストックがある分は週一での投稿に切り替えます。ごめんなのにゃ!




