新たなる旅立ち
お待たせしました。
カルとの戦いから数日後の夜。俺とセリーヌ、セクターは三人でテーブルを囲んでいた。ファングは台所で片づけをしている。小さい体ながら力がある。
「もうだいぶ片付いたな。じゃあそろそろ俺は日常生活に戻らせてもらうとするか。」
セクターはあの戦いから毎日ウィンストハイムのギルドとセリーヌの家を行き来していた。片づけを手伝ってくれたり、まずい飯を作ってくれたりしてくれた。
「親父。助かったよ。ありがとう。」
「なに。気にすることじゃねぇ。まぁ旅に出る前にギルドによって挨拶でもしていってくれよ。洋平も知らない人ばかりじゃないだろ。」
そう言い残してセクターは家を出て行った。残ったのは俺とセリーヌの二人。セリーヌは毎日、湖の小島に行き妖精達と話し合っているらしい。水の恵みを大地に与える仕事なのだから重大な仕事だ。俺は家の中を整理したり食事を作ったり、色々と忙しかった。セクターが来た時は魔術の扱い方も勉強した。カルを連れ去ったイオナの話もした。レイブンハートと言う名前にちょっと眉をしかめたが、調べておくと言っていたので後は古代魔術師様に任せる。そしてセリーヌに言われてアイヴィの墓標も作った。もちろんこれに俺は反対したのだが、アイヴィが居ないのは事実だ。受け入れなければならない。そして家の姿形は変わったとしても、ここは俺とアイヴィとセリーヌの家に間違いはない。アイヴィの部屋もちゃんとある。空からでも見えるように俺の中での意味合いは目印だ。またここに帰って来れるように。だから墓標には大きな目印として壊れたファングの破片を繋ぎ合わせ元通りの大きさにし、その墓標を守るように置いた。
「明日にでも四大巡業を再開しに行きたいと思います・・・」
「そうなのか・・・にゃ・・・」
重い空気が二人とファングを包み込む。
「よーへー・・・」
「はい。」
「僕と一つだけ約束してほしいのにゃ。」
「なんでしょう?」
「無事に帰って来るのにゃ・・・もう誰も失いたくないにゃ・・・」
「わかりました。約束します。では俺からも一つお願いごとがあるのですがいいですか?」
「なんなのにゃ?」
「シルバーをよろしくお願いします。」
「いいのかにゃ?」
「はい。戦いの被害で色々壊れてしまったので、出来れば動くように直してもらいたいのですが、師匠には色々とやる事が多そうなので。また帰って来た時に姿を見れるようにお願いします。」
「僕が直していいのかにゃ?」
「まぁ時間が空いた時にでもやってくれるとありがたいです。」
「・・・にゃ・・・」
「はい?」
「任せるのにゃ!シルバーは僕が完璧に直してみせるのにゃ!よーへーのおかげで構造は理解したのにゃ!壊れた部分は魔道具を組み込めばいいのにゃ!ずっと前から直したかったのにゃ!!」
「ウンディーネの事はいいのですか?」
「心配しなくてもいいのにゃ!もう9割は決まったような物なのにゃ!それよりもシルバーを直す事をやりたいのにゃ!よーへーが行ったらさっさと次の水の精霊を決めてさっそく取り掛かるのにゃ!」
セリーヌはいつもこうだ。自分のやりたいことをやる。素晴らしい生き方だと思う。その為にやらなければいけない事はさっさと終わらせる。自分の気持ちは絶対に曲がらない。この気持ちは大事だと思う。俺も目的を成す為に頑張らなければ。
「じゃあ、行って来るからな。俺達の約束は絶対に守る。だから、そこから見守っていてくれ。」
次の日、俺は旅支度を整え、アイヴィの墓標の前で手を合わせていた。
「そういや、アイス食べたかったって言ってたよな。俺も魔術の練習をしてなんとか形を作り出せたんだ。」
墓標の前で俺は一本の木の棒を取り出し、それに魔術を使う。その木の棒は俺と一緒にこの世界に来た物の一つだ。これは今までお守り代わりのように持ってきたが、もう必要ない。アイスを作る魔術の練習は沢山した。そしていつもより丁寧にずっと溶けない様に大量の魔力を込めてアイスを作り出した。それを墓標に供える。
「うっし!じゃあそろそろ行くか!ファング!」
俺の呼びかけに答えるようにファングが地面からジャンプし俺の肩に乗っかって来る。
「じゃあセリーヌとアイヴィとシルバーをちゃんと守ってくれよ。俺が作った岩はこの大きなファングと同じだからどうしても食べたくなったら食べてもいいが計画的にな。」
「アリガトウゴザイマス。マスターもキヲツケテ」
家に向かってファングと歩き出すとセリーヌが玄関で待っていてた。
「行くのかにゃ?」
「はい。」
「では餞別にこれをあげるのにゃ。」
「これは?」
セリーヌは巾着を放り投げてよこした。なんの変哲もないただの巾着のようだが。
「中を覗いてみるのにゃ。」
「これは!」
「それはマジックバッグと呼ばれる古代兵器の一つなのにゃ。マジックバッグにも種類はあるのにゃが、それは普通のマジックバッグなのにゃ。マジックバッグは見た目以上に物を入れる事が出来る大変素晴らしい物なのにゃ!」
中を覗くと2メートル四方の空間があった試しに背負っていたリュックを入れようとすると巾着の口が自然に広がりリュックを呑み込んだ。これだけ大きければなんでも入りそうだ。
「ありがとうございます。大事に使わせていただきます。」
「まぁポケットドラゴンと交換と言う事にしておくのにゃ。」
「ちゃんと返して下さいよ?」
「研究が終わったら返すのにゃ。終わる訳は無いのは内緒にゃ。まぁポケットドラゴンよりは価値が高い物なのにゃ。白銀貨二枚で買えるかどうかって代物なのにゃ。」
「まぁそれならいいか・・・」
「・・・ちゃんと無事で帰って来るのにゃ・・・」
「わかりました。では行ってきます。」
「いってらっしゃいなのにゃ。」
セリーヌは俺の姿が見えなくなるまで玄関で手を振っていた。
こうして俺の旅は始まった。マジックバックのお蔭で随分と身軽になれた。まず向かうはウィンストハイム。みんなに挨拶していかないとな。ついでに親父から餞別を貰おう。
PCの調子が悪いのかバグなのかわかりませんが、なろうページでのみPCで日本語入力が出来なくてスマホから投稿しましたが、この環境が直るまでもうしばらくお待ちください。環境が直ったらすぐに投稿再開しますが、直らなければまた来週末に頑張ってスマホから投稿します。




