火をつけてみよう!
馬車は進むよどこまでも
「この馬遅くないですか?」
「最上級ですよ?」
「歩いた方が早いキガス・・・」
「じゃあ洋平がシルバーを担いでいけばいいじゃないですか?」
「ごめんなさい。」
数時間後。それでも馬車は遅みを止めない
「俺の知ってる馬車はこんなものじゃない!もっと早いはずだ!」
「えぇ。その通りです。」
「え?でも最上級なんじゃ?」
「冗談ですよ。」
「じゃあもっとスピードをあげればいいのではないですか?」
「では洋平が手綱を握ってください。私は後ろで寝ます。」
「ごめんなさい。」
さらに数時間後。ついに馬車は遅みもやめてしまった!
「今日はここまでで夕食にしましょう。」
「え?いやでも、まだ日がこんなに・・・いえなんでも無いです・・・」
「ではポグを狩ってきますので火を起こしてて下さいね。」
「え?あ、はい・・・」
そう言い残してアイヴィは森へと入って行った。火なんて起こした事無い。小学校の時にキャンプでやった事はあるが、それは火を起こす道具を用意してもらっていたからだ。木の棒を剣で先を削り丸くする。それを受ける木の板を用意して、擦る。擦る。擦る。
「疲れた。無理だな。」
早々に諦める。なんか紐でもあれば板の真ん中に棒を刺して、両サイドに紐をつけて棒の上部につけれれば完成である。板を回転させ紐を棒に巻き付ける。そして板の両サイドを持ち上下に運動させる事によって、回転が速くて疲れないので火を起こせる可能性もあるのだが。
「紐が無いなら作ればいいじゃないか。俺天才。」
服の一部を破り紐に見立てる。それで道具を作ってみてやってみるがすぐに切れてしまう。今着ている服はウィンストハイムで買った安物だ。まぁ買ってくれたのはアイヴィなのだが。俺がこの世界に着てきた服は馬車に置いてある。
「閃いた!俺天才!」
さらば俺のジーパン。裾を少し切るだけだから・・・。ジーパンの犠牲の元に火起こしする道具が完成した。穴を空けるのがいちいち剣なので大変だった。板を上下させていると少しづつ煙が出てきた。もう少しだ。棒を受けている板の所に枯葉を置いて、このままやれば火がつくはずだ。
「切れた・・・」
俺のジーパン。またジーパンを切るがまたも切れてしまう。俺は諦め天を仰ぐ。
「洋平何をしているんですか?」
アイヴィがやって来た。手には肉を持っている。
「いや火を起こそうとして頑張ったんですけどちょっと疲れちゃって・・・」
「ファイアーボール」
アイヴィの手から火の玉が出現し、火をつけるように置いてあった薪へと投げられる。瞬く間に薪はパチパチと音を立てて燃え上り、たき火が完成した。
「最初からそれやってくださいよ・・・」
「てへっ☆」
てへじゃねーよ!俺はたき火を見てうなだれる。するとたき火から黒い煙が現れる。
「俺のジーパン!!」
たき火から飛び火して近くに置いてあった俺の服を燃やしている。見つけた時にはもう手遅れな状態だ。俺はたき火の前で燃えていくジーパンを目の前に泣き崩れる。
「ごめんなさい・・・洋平・・・」
「うぅ・・・」
「ちょっとからかいすぎてしまいました。申し訳ありません。」
「・・・」
「あの・・・お詫びに何か私に出来る事がありましたら言ってください。なんでもしますから」
「・・・なんでも?」
「はい。」
俺は立ち上がり、考えを巡らせる。
「じゃあ・・・」
「なんでしょう?」
「今は思いつかない!決まったら教える!」
目の前にいる美人が俺の為になんでもすると言ったんだ。これを即答しては勿体ない。エロゲー脳をフル活用させなければ!一度で世界を手に入れられるような事を!邪な気持ちが俺の思考を圧倒する。別にジーパンなんて必要ないしな。確かに慣れている服というのは大事な物ではあるが、そんなものアイヴィに一回おねだり券に比べれば、天と地程の、いや、天空と深海程の差があると言うものだ。俺はその夜、邪な思考に支配され睡魔に打ち勝つのであった。