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戦いの果てに

1章ラストです!説明回・・・


いつの間にか俺は意識を手放していたようだ。気が付くと、そこには澄み渡るような青い空が広がっていた。辺りを見渡すと、今までの現状を物語るような悲惨な光景が広がっていた。自然と涙が頬を伝う。俺は軋む体を無理矢理動かし立ち上がる。セリーヌは魔力が幾分か回復したらしく、セクターと共に瓦礫の後片付けをしている。セリーヌがセクターを回復したのだろう。俺は二人の元へは行かず、その逆へと歩き始める。カルと戦っていた場所だ。ファングが死んだ場所だ。俺はファングの四散した体を一つ一つ丁寧にポケットドラゴンに仕舞う。後で絶対に直してやる。そう強く思いながら体を集める。何かに没頭しないとまた悲しみが押し寄せて来る。頬を伝う涙が冷たい風を受けて身震いをさせる。ファングの体を一通り集めた所で森の中から強大な気配を感じる。それは物凄いスピードでこちらに向かって来る。敵意が丸出しだ。今だに頭を切り替える事が出来ていない。伝う涙は際限をしらない。森から飛び出してきた何かに俺は吹き飛ばされてしまう。


「ってぇ・・・」


俺の悲しみの心に突き刺さるような痛さを感じる。吹き飛ばされ、何かに受け止められてその方を見る。


「親父・・・」

「大丈夫か。」

「あんま大丈夫じゃ・・・ないな。」


セクターに優しい言葉を掛けられるとまた涙が溢れて来る。


「セクター!!そいつを離せ!!そいつは私が殺す!!」

「おいおい。一国の女王である人がそんな汚い言葉を使っちゃいけねぇと思うけどな」

「黙れ!!ここは我が国の領土では無い!!そんなこと関係あるか!!いいからそいつを離せ!!」

「いいや。離さないね。洋平はうちのギルドの者だ。ウィンストハイムのギルドマスターとして、ただ殺されるのを見る訳にはいかないな。洋平を殺すなら俺を殺してからにしろ。」


森から飛び出して俺を殴ったやつは。リソワだ。なぜこんな所にリソワが・・・。リソワの後ろからは続々とエルフの男達が出て来る。


「いいから二人とも止めるのにゃ。洋平とセクターを殺すのなら僕を殺してからにするのにゃ。」

「馬鹿猫め。貴様なら喜んで殺してやろう。」

「じょじょじょ冗談なのにゃ・・・。ホントにやりそうだから怖いのにゃ。いいから矛を収めるのにゃ。」

「どうゆう状況か説明してもらおうか?」

「わかったにゃ。こっちに来るのにゃ。セクター。洋平を頼むのにゃ。あと後ろの馬鹿共はそこの瓦礫を片づけておくのにゃ。」

「勝手に指示をするな!お前ら手伝ってやれ。っとその前に・・・」


俺の目の前を風が通り抜けて行った。その瞬間、俺はまたもリソワに殴り飛ばされる。


「いつまでそんな顔をしている。いい加減目を覚ませ。現実を受け入れるのは後だ。今は頭より体を動かせ。自分を・・・見失うな・・・」


そう言い残し、リソワはセリーヌと共に去っていく。リソワの目から涙が零れ落ちた気がした。


「大丈夫か。洋平」

「あぁ少し・・・スッキリした。とりあえず言われた通りにするよ。」


気が付くと涙は止まっていた。頭の中にあったモヤモヤが綺麗に吹き飛ばされたようだ。俺は何も考えずに瓦礫の後片付けをする。何も考えずに作業に没頭する。自分の部屋とアイヴィの部屋の物を片付ける時にまた何かが込み上げてきそうだったが無理矢理押し殺した。エルフの男達も手伝ってくれてあらかた瓦礫の撤去は完了した。使える物と使えない物に分けたり。おれとアイヴィとセリーヌの物と分けたりした。エルフの男達はまだ使えそうな物を直したり、本を魔術で乾かしていたりする。ようやく一息つける所まで来てセクターが口を開く。


「家が無くなっちまったな。また洋平が建てるか?」

「実はファングが死んでしまって・・・」

「そうなのか・・・。姿が見えないから不思議だったんだが。すまん、配慮が足りなかった。」

「いや親父は悪くねーよ。悪いのは全部・・・」


俺はその言葉を口にすることが出来なかった。アイヴィと約束したから。すると森の奥で作業をしていた人が大急ぎでこちらに走って来る。

「おーい。なんか変な物あったけど、これは一体なんだ。」


その物を受け取り、俺はまた涙を流す。


「ファング・・・」


受け取ったそれは顔の大きさ程のある石だ。その石がにひびが入り割れる。中から現れたのは、高さ10センチ程の石の人形だ。以前のファングとは姿が違うが、これはファングだ。俺のポケットドラゴンがそう感じている。


「スイマセン。マスター。ユダンシマシタ。」

「いや。無事で何よりだ・・・」


よかった。本当によかった。どうしてこんな姿になってしまったのかわからないがこれはファングで間違いは無い。


「おい!ファングって喋れんのかよ!!」

「え?あぁ本当だ。喋れるな。」

「洋平も知らないのかよ!!」

「ファングいつの間にしゃべれるようになったんだ?」

「タタカイのサナカデス。マスターのオモイにコタエヨウトシタラ、ハナセルヨウニナリマシタ。」


ファングが無事で本当によかった。話せているのに気付かなかったのは、いつもポケットドラゴンで意思の疎通が出来ていたからだ。石だけに・・・。ファングとの再会を喜んでいると、セリーヌとリソワが戻って来た。


「これからの事について話合わないといけにゃいのにゃが、このままじゃゆっくり話も出来ないにゃ。」

「ふむ。仕方あるまい。皆の者。手を繋ぎ輪を作れ。」


リソワの号令の元に皆が集まり手を繋ぎ輪を作る。俺はセクターとリソワに挟まれて手を繋ぐ。


「一体何をするのですか?」

「簡単に言うと家を作る。しっかり集中しろよ。気を抜くと意識を持っていかれるぞ。では行くぞ!男共!気合入れろ!!」


リソワの喝が入り、エルフの男達は目を閉じ何やら唱え始める。俺も目を閉じて集中する。すると全員と意識が共有されるような感じに襲われる。目的は家を作る事。エルフの男達はツリーハウスを考える。俺とセリーヌとセクターは以前の家を考える。リソワは早く終われと考える。下から徐々に組み上げられる。基礎はツリーハウスだ。中は今までと同じような作りにする。二階三階と組み上げる。リソワを除く全員が丁寧に作ろうとゆっくり進めようとするがリソワがそれを許さない。リソワに釣られるように一気に建物のイメージが膨らみ。そして終わる。リソワの声が響き渡る


「プラント・ラチカル」


その声と共に体中から一気に魔力が持っていかれる。それは時間にしては一瞬だが、とても長く感じた。目を開けるとそこには今しがた想像していたツリーハウスが出来上がっていた。魔術にはこんな使い方もあるのか。みんなの意識を共有させ行使する魔術か。セリーヌから借りた本では見たことがあるが、それのいずれも伝説級の魔術を行使するものばかりであった。


「ふぅ。やはり洋平一人の魔力でなんとかなったな。」

「え?どうゆう事ですか?」

「まぁ知らなくていい事だ。では洋平よ。私から最後の言葉だ。彼女の事は残念だった。私もエルフの民を纏める者として心が痛む。だが彼女の言葉とウンディーネの言葉を忘れるでない。己の目的を忘れるな。過去を振り返るのは悪い事では無い。辛くなったら過去を振り返れ。元気になったら前へ進め。決して生き急ぐな。時には立ち止まり、周りを見る事も大事だ。」

「はい。」

「よし!・・・帰る!!じゃあな!!!」


あれ?めっちゃいい事言ってるのに、帰るのか。一緒に居たエルフの男達も不意を突かれたのかコケている。リソワは一目散に男達を置いて森の中へと消えて行った。男達も後を追いかけて消えていく。残ったのは俺とセリーヌとセクターとファングの4人だ。


「相変わらず嵐のような人だな。まぁとりあえず荷物を運んでまおう。」

「セクターもリソワ様を知ってるのか?」

「まぁちょっとな。昔の話だよ・・・」


過去に何があったかは知らないし、知ろうともあまり思わなかった。聞いてはいけないような、遠くを見ていた。4人で使える荷物を中に運んでいく。セリーヌは自分の物だけさっさと運んでいく。セクターはみんなで使う共同家具を運ぶ。俺は自分の物とアイヴィの物を運ぶ。もう気持ちはスッキリと落ち着いていた。ファングも小さい体ながら一生懸命に俺達を手伝う。


「やっと一息つけるな・・・」

「にゃ~・・・」

「お茶でもいれるよ。」

「テツダイマス。マスター。」


荷物をほとんど運び終え、気が付くと空が白みを帯びてきたころ。ようやくみんなでテーブルを囲み一息つく。そして静寂が包み込む。カップのカチャカチャとした音だけが響く。


「これからの先の事なのにゃが・・・。ウンディーネ様に言われ、リソワと話し合った結果、僕はこれからウンディーネ様の代わりを探すのと同時に、それまでの間、周囲の水の妖精達と協力して水の加護をガルガンティアに与えなければならないのにゃ。ここからほとんど動けなくなるのにゃ。ウンディーネ様はこの大地に恵みをもたらしていたのにゃ。水が無ければ作物は育たないし、雨も降らないのにゃ。新たな水の精霊が生まれるまで、僕はここを、この大地を守らなければならないのにゃ。それがウンディーネ様との契約なのにゃ。」

「契約とは・・・?」

「契約の事を話すにはこの世界の真実を話さなければならないのにゃ。この真実を知る者は、この大陸に4人しか居ないのにゃ。僕とセクターとリソワは昔の大戦を経験しているから知っているにゃ。」


150年程前に起きた大戦。以前魔族が全大陸を支配しようと企み。それに怒った神が全種族の代表に呪いを与えた。それにより世界は平和を取り戻した。だがしかし。これは表向きの真実。神を崇める者達の反乱を防ぐため。本当の真実は、神が魔族をそそのかし、種族同士で争わせた。理由は不明。それに立ち上がった人間。ガフ。ドワーフ。エルフ。光と闇の種族。6種族は魔族と戦うのだが、これにはもう一つ巨大な勢力があった。それは精霊。精霊は神の行いに反発し、神に背いた。精霊とは神が作りし存在。本来ならば神の手駒としてあるべき存在。だが意思が無い訳では無い。それぞれ神に与えられた使命を全うするはずなのだが、この行いは見過ごせるものでは無かった。火、水、風、土、光、闇の精霊は団結し神と戦った。魔大陸の時の精霊は神の強力な支配を受けて敵に回った。それぞれの精霊は神と戦うが、神には勝てない。だから神を封印しようとした。だが一重に封印と言ってもその場所から動けなくし、その場所では力が弱まるだけ、という事しか出来なかった。その場所こそがアスラ神島。神はそこへ封じ込められた。しかし自らが生み出した精霊の行いに怒り狂った神は、その怒りをまき散らす。自らが封印されてしまう前に全種族に災いを与えようとした。それが呪い。その呪いは種族だけでは無く、自らに逆らった精霊にも及んだ。各精霊は神と同じ様に封印されてしまった。その場所から動けず、力も弱まる。だが精霊はその場所から動けずとも大陸を支える事は出来た。これで世界は平和を手にしたのである。各精霊は各種族の代表達と契約を結ぶ。この世界にまた神の怒りが訪れた時にはまた共に手を取り戦うと。お互いの種族間で争わない事。それが守られるなら精霊は大陸を守り続ける事。この契約を種族の代表者は精霊と結んだ。しかし。ガフ族の勇者である狂犬のイゴールは死んだ。その代わりに火の精霊と契約を結んだのは光の勇者であるセリーヌだ。セリーヌは炎の精霊と契約したさいにガフ族の影響を受けて耳と尻尾が生えた。代わりに光の精霊と契約したのはマユラだ。マユラは光と闇の魔術を使う事が出来た。そのお蔭で光と闇の2つの精霊と契約をすることができた。寿命が来た契約をした代表者は次に国を治める人にその事実を伝える。そうしていままで世界は平和を保たれてきた。

今もアスラ神島には力衰えた神がいる。だがしかし、今、水の精霊ウンディーネはその姿を消した・・・



セリーヌが話し終り、また沈黙が続く。俺は思考を巡らせる。


「つまりウンディーネが居なくなって神の封印が弱まってるって事か?」

「その通りなのにゃ。」

「何故前に話した時にこの話をしなかった?俺は別に神なんて信じてねーぞ。」

「他の誰かに知られる事を恐れたのにゃ。今はもう洋平は無関係では居られなくなったのにゃ。ウンディーネ様は洋平の為に居なくなったようなものなのにゃ。」

「それは・・・わかるが。なぜセリーヌがやらないとダメなんだ?今、水の精霊と契約してるのはウィンストハイム王じゃないのか?」

「僕は火の精霊と契約したのにゃ。だけど、人間の王のブラッドは使えない人だったのにゃ。元々圧政をしていたブラッドは力で全てを治めていたのにゃ。でもそれは小さな争いが絶えなかったのにゃ。それで、リソワがズバっと・・・」

「あいつがやったのかよ・・・」

「それで契約者を失った水の精霊は焦ったのにゃ。その場に居合わせた者で水の魔術が使えるのは僕だけだったのにゃ。それで僕は水の精霊と契約したのにゃ。」

「じゃあセリーヌは火と水の精霊と契約してるって事?」

「そうなのにゃ。僕にかけられた呪いは永遠。つまり死なないから安心なのにゃ。つまりガフと人間はこの話を知らないのにゃ。あと知っているのは、ドワーフの王だけなのにゃ。」

「なるほど・・・深いな。」

「リソワがブラッドを殺した時にも封印は弱まったのにゃ。その時に神は隙を突き、世界に魔物を解き放ったのにゃ。今回も封印が弱まった隙をついて何をしてくるかわかったものじゃないのにゃ。だから洋平にはウンディーネ様が言った通り、当面は四大巡業をしてガルガンティアを見て回って来るのにゃ。洋平は神がウンディーネ様を封印した試練を解いたのにゃ。封印が解ければ精霊も本来の力を取り戻すのにゃ。そうすればまた神が暴れても封印出来るのにゃ。洋平が元の世界へ帰る為にもこれは避けて通れない道なのにゃ。」

「・・・わかりました。」

「一人で辛く厳しい旅になるにゃ。でもアイヴィの為に頑張るのにゃ!!」

「ファングも一緒ですからなんとかなりますよ。」

「ファングは僕が貰うのにゃ。よーへーは一人で行くのにゃ!!」

「なんでだよ!!ファングは俺が捕まえたんだぞ!!」

「ファングは魔物なのにゃ。ファングを調べれば神への対抗手段も見つかるかもしれないのにゃ。」

「なるほど・・・でも・・・」

「でももへったくれも無いのにゃ!僕はここで一人で寂しいからファングは置いていくのにゃ!!ついでにポケットドラゴンも貰うのにゃ~~!!」

「や~め~ろ~~~~~~~~」



最後はコメディちっくになってしまいました。まだまだ説明しないといけない部分は山ほどあるのですが、あまりそれが続いても読みにくくなるので残りは2章に引き継いで貰います。27日に活動報告を書く予定です。1章の製作秘話と2章の開始時期について書こうと思います。

一応予定では3月の頭からやりたかったのですが、もう少し時間がかかるかもしれませんが許してにゃん♪

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