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破滅へカウントダウン

ついにあいつが登場!!

「よーへー」

「はい。」

「よーへーはこれからどうするつもりなのかにゃ?」

「目的は変わらず四大巡業をすることです。ですがまだ自分の力及ばぬ事が多々あると痛感致しました。ですので、ウンディーネの試練をやろうと思います。」

「よーへーは、いい目をするようになったのにゃ。これならもう僕が心配することは無いのにゃ」


この世界で生きていくためにはこの世界に従わなければならない。魔術が使えないなら使えるようにするまでだ。元々この世界の者では無い俺に、この世界のルールが通用するかはしらないが、もうここまで来たらやるしかない。


「ん?なんだ?」


セクターが視線をドアへと向ける。


「誰かが近くに居るな。一人のようだが。迷子か。」

「セクター見て来るのにゃ。」


セリーヌに言われセクターがドアを開けて外へと出ていく。現在この家は結界に守られてセリーヌが認めた人かセリーヌに認められた人と一緒の人しかこの家を認識できない様になっている。もし迷子だとしたら保護する為にも誰かと一緒に居なければいけないのだ。


「おーい。懐かしい顔が来たぞ。」


セクターに肩を抱かれて入って来たのは青い髪に青い目。白と紫のローブを身にまとった笑顔が眩しいヒューマンの好青年だ。


「カル兄さん!」


アイヴィが立ち上がりカル兄さんと呼ばれた人へと走って行く。お酒を飲み過ぎたのかちょっとふらついて勢い余って転倒しそうになりカルに抱えられる。カルってのは前に言っていたセリーヌの元弟子って人か。見る限り好青年なのだが、俺はどことなく危険な香りを感じ取っていた。


「久しぶりだな。アイヴィ。」

「はい!」


優しい声をしている。アイヴィの頭に右手を乗せて頭を撫でている。アイヴィもそれに逆らわずにただ撫でられている。俺の嫁に触るんじゃない。


「セリーヌ様お久しぶりです。」

「今頃来てなんの用だにゃ。」

「それは・・・」


セリーヌの声には怒りが混じっている。カルが言葉を詰まらせると


「うっ・・・」

「セクター?」


セクターが急に胸を押さえて大きな音を立てて床に倒れた。俺はその行動に目を奪われてカルから目を離してしまった。それは当然俺だけでは無く、セリーヌも同様だ。


「よーへー!!前!!!」

「っ!!」


セリーヌの言葉に慌てて前を見るが、そこには左拳を振りかぶったカルの姿があった。その左拳にはセリーヌに教えてもらったボズの毒手が見えた。アイヴィは力なく床に倒れるのがスローモーションで見える。俺は咄嗟に両手をクロスさせ拳を受ける。だが思った以上の衝撃で壁まで吹き飛んでしまった。衝撃で壁は砕け、瓦礫が俺に襲い掛かって来る。セリーヌの怒号が聞こえる。俺はいち早く状況を確認するために這いながらやっとの事、顔と右手だけ抜け出す。そこで目にした光景に俺の思考はショートし、考えを止めてしまい、ただその光景に目を奪われるのであった。


「ククククク・・・お前の事は調べさせてもらったぜぇ。ざまぁねぇな。洋平。っと喋れないよなぁ。なんせお前には麻痺毒をプレゼントしてやったからな。そこまで這って来るのに相当な痛みを伴うはずなのに、よくこれたなぁ。これが愛の力ってやつかぁ~」


先程聞いた優しい声では無い。何かドス黒い物が垣間見えそうなねちっこく憎い声だ。カルの左手にポズの毒手がある。その手でアイヴィの首を捕まえ宙に浮かせている。アイヴィは苦しそうに顔を歪めているが両手足が力なく垂れ下がっている。セリーヌは俺とカルの間に膝を突いて苦しそうにしている。


「カル・・・アイヴィを放すのにゃ・・・」

「この状況でよく物を言えるなぁ。セリーヌ。俺はなぁ・・・この時をずっと待っていたんだよ。お前に復讐する為になぁ!どうだ!お前も目の前で大切な人を失ってみれば俺の気持ちも少しはわかるだろうよ!!」

「聞くのにゃ・・・あれはしょうがなかった事なのにゃ・・・」

「何がしょうがないだ!お前のせいで、俺の姐さんは死んだんじゃねぇか!」

「恨むなら僕を恨めばいいのにゃ・・・アイヴィに罪は無いのにゃ・・・」

「うるせぇ!俺の気持ちもわからねぇ癖に!」


セリーヌの体から緑色の光が溢れ出ている。それがカルの右手の指輪の一つに吸収されていく。あれは本で見た事がある。12環物語に出て来る、12の一つ。吸魔のリング。対象の精神力を吸い取り無力化する事が出来る。精神力は魔力。つまり魔力を吸っているのである。吸収した魔力は指輪の中から体内へと入り、その魔力を自分で使う事が出来るのである。

俺はセリーヌとカルのやり取りを見て落ち着きを取り戻し、思考を再開する。カルは俺に麻痺毒をしたと言った。つまり俺は麻痺にかかったのか。それを万薬のミサンガで無効。セクターも麻痺か、アイヴィは体に力が入っていない気がする。これは麻痺ではない。筋弛緩に近い。カルの復讐の為に、セリーヌを無力化した上でアイヴィを殺すと言う算段か・・・。カルは俺が麻痺にかかったと思っている。この状況を打破するには俺が動くしかない。俺は瓦礫の中から徐々に這い出し上半身を出し、下半身も自由になるスペースを作る。いつでも飛びかかれる状況になる。しかしいつ飛び出す?今か、今はアイヴィを盾に取られているから無暗に飛び込むのは危険だ。じゃあいつだ。このままアイヴィが殺されるのを待ってろと言うのか!そんな事出来るはずがない!俺は意を決し飛び出そうとした時に、目の前のセリーヌが制止をかけた。左膝を突き左手をだらんと下げて、自分の背中のあたりでカルに見えない様に空中に文字を書いたのだ。


(僕の魔力が枯渇したら、奴は僕の懐のセブンスネークを取りに来る。その時アイヴィから目が離れる。チャンスは一瞬。逃すな。逃げろ。)


その文字は空中ですぐに消えていく。セリーヌの魔力が枯渇するのを待って、アイヴィをカルの手から奪い取り、逃げろと言うのか。これならアイヴィを奪い返す事は可能かもしれない。だが・・・セリーヌはどうなる。このままセリーヌとセクターを見捨てて逃げろと言うのか。そんな事して生き残っても俺もアイヴィも嬉しい訳ないじゃないか。ちょっとは考えろよ。バカ猫・・・。


「っとようやくか・・・見た目によらず化け物みたいな魔力だなぁ。」


セリーヌの魔力が切れた。どうする?この状況を打開する方法を考えろ!


「古代魔術師のセリーヌ様ともあろうお方が、このような魔道具も見抜けないなんてな。サイモンもそうだが、古代魔術師ってのは名前だけで実力なんてのは聞いて飽きれるぜ。」

「やはり・・・隠蔽効果がついてるのにゃ・・・」

「ほう。やっぱり見抜いてるんじゃねーか。じゃあ何故止めなかった。」

「それは・・・どんな理由があろうともカルは僕の弟子なのにゃ・・・弟子を信じない者が弟子に信じられる訳もないにゃ・・・」

「くだらねー偽善を語ってんじゃねーよ。よく周りを見ろ!セクターとそこの洋平は麻痺。アイヴィは神経毒。お前は魔力が空っぽなんだぞ!もはや絶対絶命だな!お前のセブンスネークに殺される愛弟子を見ているがいい!」


カルがローブをなびかせこちらへやって来る。あのローブは隠蔽効果があるようだ。そのせいでポズの毒手の様な古代兵器を今まで気づくことが出来なかったようだ。左手でアイヴィの首を捕まえて引きずっている。セリーヌはついに膝立ちから横たわり、辛うじて意識があるような状態だ。


「ぎゅふ・・・」

「お前のセブンスネークに殺される姿を見ているがいい。」


カルがセリーヌ小さい体の腹を踏みつける。セリーヌの目には涙が浮かんでいる。俺はタイミングを見計らっている。カルがセリーヌの懐に手を入れた瞬間。今だ!


「ファング!!!」


俺の叫びに応じてファングが飛び出す!


「わかってるな!構わずぶっ飛ばせ!!」


ポケットドラゴンの中でファングとの打ち合わせは済んでいる。ファングは拳を後ろに振りかぶった状態で出てきておりそこから猛烈な勢いで拳が振り抜かれる。その刹那。俺はカルの右側へ飛び込んでおり、カルの手を払いのけアイヴィを取り戻す。次の瞬間目の前を猛烈な風が吹き、ファングの拳を食らったカルは吹き飛ばされる。その勢いは壁を突き破り、カルを外へと放り出した。


「大丈夫か!二人共!」

「よーへーのばーかー」

「・・・」


二人を抱きかかえ声をかける。セリーヌはこの後に及んで悪態をついてくる。だがその声も耳を近づけなければ聞こえない程だ。相当弱っている。だがもっと深刻な問題はアイヴィだ。目からは涙が溢れており力なくこちらを見つめている。口を動かそうとしているのか、ピクピクと口が動いているが声にならない。


「くそっ!どうすればいいんだ!」

「・・・来るにゃ・・・」


カルが飛び出て行った方から凄まじい魔力を感じる。その魔力は際限を知らず膨れ上がっているのがわかる。次の瞬間壁を突き破り大量の水が襲い掛かって来る。その水は建物を呑み込み、砕きこちらへと牙を向ける。


「ファング!!二人を守るぞ!!」


俺とファングは二人と水の間に立つ。ファングは俺も含み三人に覆いかぶさるようにしている。俺はファングを包み込むように石の壁を作る。水の勢いに逆らわない様にドームの様な形だ。水がドームに当たり。凄まじい音を立てる。耐えていると思ったが次の瞬間いともたやすくヒビが入り破られる。俺はファングの腕の中で二人に覆いかぶさる。時間にして数秒だろうか。俺にはもの凄く長く感じた。激しい水が凄まじい音を立ててこちらに襲い掛かっている。だが俺はセリーヌの声を聞き取る事が出来た。


「僕にキスをするのにゃ・・・」

「こんな時になにを・・・」


だがセリーヌの真剣な目を見て思いとどまる。セリーヌは冗談は言うが、間違ったことは言わない。セリーヌの言葉は俺の中に水のように入って行き、俺は一瞬アイヴィを見つめ、目が合う。


「ごめん・・・」


セリーヌと口づけをする。最初に感じたのは冷たい感覚。それが徐々に俺の中に広がっていき、俺とセリーヌの感覚が一つに共有されたような感じがしたあと、それがセリーヌの中に戻って行く。次の瞬間頭に痛烈な痛みを感じた。


「ばーか!誰が口にしろと言ったのにゃ!」

「いってー。だってキスしろって言ったじゃないか!」

「それは手とかにでもすればよかったのにゃ!もう汚れてしまったのにゃ!お嫁に行けないにゃ!責任を取るのにゃ!アイヴィを見るのにゃ!」

「アイヴィ・・・ごめん」

「とりあえずこの馬鹿みたいな水を止めるのにゃ!」


セリーヌ完全復活!どうやら俺の魔力を吸収したらしい。俺の中にどっと疲れが押し寄せてきているが今は泣き言を言っている場合では無い!


「フーーーーーー・・・にゃ!!!」


セリーヌが魔力を解放した。それだけで辺りの水が一瞬にして消えてなくなる。その中からカルが現れる。右手にセブンスネーク。左手にポズの毒手。


「よーへーの魔力はなかなか美味しいのにゃ。」

「一体何をしたんですか?」

「制約の誓いだにゃ。僕が対象を認識し、その対象が僕に忠誠心をもって口づけをするならば、対象の1割の魔力を貰えるのにゃ。まぁ色々とリスクはあるのにゃが。」

「まぁ詳しい話は後でしましょうか。とりあえず現状確認を。」

「ポズの毒手の毒は特別なのにゃ。魔術で治すには時間がかかるからアイヴィはよーへーが守っておくのにゃ。」

「わかりました。この命に代えても必ず。」

「ホントは逃げてほしいのにゃ。でもどうせ言っても聞かないのにゃ。」

「よくわかってるじゃないですか。流石は俺とアイヴィの師匠です!ファング。まだやれるな。」

「ファングは僕と一緒にあいつをぶん殴るのにゃ!こっから第二ラウンドにゃ!」


俺の大事な人を二人も傷つけたあいつを許してたまるか!あ・・・三人か・・・セクターは水に流されてどっか行った。



もーりあがってきたー!

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