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ドラゴン!

どらげない・・・

ギルドへ着いた俺は目の前の光景に圧倒される。今までギルドにこんなに人で溢れかえった事は見たことが無かった。そこでセクターが登場し、声を張り上げる。


「冒険者の諸君!よく集まってくれた!話は聞いたと思うがドラゴンが目撃された。諸君らには緊急依頼として北のメルヴィルの森で目撃されたドラゴンの調査、及びに討伐を行ってもらいたい。」


初耳なんだが・・・。ドラゴンてやっぱ居るのね。


「緊急依頼だが非常に危険である。報酬も少ない。それでもこの町を守るために諸君らの力を貸してほしい。危険な依頼の為討伐参加はランクB以上とする!Bランク未満は調査や補給、町の防衛に当てってくれ。では参加する者は急ぎカウンターで依頼を受け直ちに出立してくれ。以上だ。」


冒険者達が一斉にカウンターへと押しかけすぐに受理してもらいギルドを出ていく。俺はそれを眺めながら立ち尽くしている。そこへセクターが俺を見つけてやって来た。


「悪いな。緊急の依頼で手が離せなくなってしまった。姐さんの所へは送ってやれなくなってしまった。悪いが一人で帰ってくれ。」

「俺はそのドラゴン討伐に行かなくていいのか?」

「緊急依頼ってのは強制じゃないからな。まぁギルドへ恩を売る依頼だと思ってくれていい。報酬も少ないしな。」

「つまりはみんなの慈善って事か」

「まぁそうゆう事だ。ちなみにドラゴンは強いから一人では行かせられないぞ。パーティを組んでる事が最低条件だ。5人一組のBランクがどうにか倒せるレベルが一般的だな。まぁ上位種になるとそうはいかんがな。今回のドラゴンももしかすると上位種の可能性も無くは無いが、滅多に姿を見せんしな。こんな所までドラゴンが来るなんて上位種にはありえない。まだ幼いはぐれドラゴンだろう。」

「じゃあ俺は必要ないって事か。」

「しかし・・・洋平が参加してくれれば周りが楽になる事は間違いない。アイヴィと二人ならドラゴンの一頭でも倒せると思うのだがなぁ。一人ではさすがに荷が重いだろう。」

「俺にはファングが居るから大丈夫なんじゃね?」

「そうか。まぁ無理にとは言わん。もし受けるならどこか他のパーティでも誘って行くといいだろうが、まぁ連携の問題もあるし、あまりお勧めは出来ないな。」

「わかった!俺が軽く倒してきてやるよ!そしたらエターナルで送って行ってくれ!」


俺はセクターにそう言い放つと、カウンターへ行きさっさと受理してもらい、ギルドを出る。


「おい。待てよ。」

「勘弁してください!」


ギルドを出てある集団に声をかける。


「ちょっとドラゴン倒しに行くの付き合えよ。」

「むむむちゃを言わないでください。まだ死にたくないんですよ。」

「ほらファングも一緒だから大丈夫だって。立派な壁はある。」

「じゃあ俺らは役に立たないじゃないですか・・・」

「何言ってんだ。玉避けは多い方がいいに決まってんだろ。」


俺とセクターがギルドで話しているとコソコソと逃げるようにギルドを出た集団。バル達だ。


「いいから行くぞ。着いてこい!」

「ひぇぇぇぇぇぇ」


俺は半ば強引にバル達を引き連れメルヴィルの森へ向かう。この森の先にはエルフが住んでいるとされる森だ。以前にトロルのやられそうになった時にリソワに助けてもらった森である。森へ着くと他の冒険者と合流し、中へと向かう。


「洋平様。帰りましょう!!」

「ここまで来て何言ってんだ!」

「ですが・・・」

「お前らは昔ギルドに迷惑かけていたんだろう。これを機会に恩返しをしたいと思わないのか?」

「昨日洋平様を手伝ったからいいじゃないですか・・・」

「温室育ちめ・・・」


等と下らない会話をしていると、森の奥から人の悲鳴が聞こえる。俺はバルを引っ張りその声のした方へ向かう。


「グルルルルゥ・・・」

「ドラゴンだ・・・」


ゲームとかでドラゴンを見たことはあるが、実際に目の前に居ると迫力が違うな。ドラゴンの体長は5メートルはありそうだ。尻尾の先まで入れるともうちょいあるか。体はいかにも堅そうな鱗で覆われており、その色は緑色をしている。図鑑で見た知識と合わせると、これは


「フォレストラドゥンだな。」

「知ってるのですか!?」

「図鑑で得た知識だけだ。主に接近戦を得意とし、尻尾の先には神経毒があり、口から放たれるブレスには麻痺毒が含まれている。討伐難易度からランクはSだ・・・」


SランクとはAランクの冒険者が24人集まって倒せるレベルとされている。フォレストラドゥンは逃げている冒険者達を追うようにこちらに近づいてきている。俺は万が一に備えて万薬のミサンガをつけ、胡椒爆弾とまきびし爆弾を準備する。


「こいつを倒すのは無理だ!他の人が逃げる時間を作るぞ!」

「えぇい!ここまで来たらやるしかない!みんな行くぞ。洋平様に続け!!」


俺はフォレストラドゥンに向けてまきびし爆弾を投げる。一個では足りなそうだったので3つ投げる。3つとも頭部にヒットしこちらへと視線を向けて来る。


「今だ。やれ!」


俺の声と共にバル達が攻撃をしかけようとしたが前衛は俺のまきびしが邪魔で先に進めない。弓と魔法で二人が攻撃したのだが、そうなると当然ヘイトはそっちに行くわけで、大きく息を吸い弓と魔法で攻撃した者へと攻撃を仕掛けようとする。俺は咄嗟に胡椒爆弾を投げるが、それも吐いたブレスによって攻撃した二人へと襲い掛かる。麻痺と胡椒の最悪のブレスだ。そのブレスを食らった二人は動かなくなり地面へと倒れる。


「相手が悪い。バル引くぞ!俺のまきびしを平気で踏みつぶしてくる!倒れた二人を連れて逃げろ!。俺が少しでも時間を稼ぐ!」

「ですが・・・わかりました!お気をつけて!!」


俺はフォレストラドゥンへと向き直り、まきびしを気にもせず歩いてくるのに顔を歪める。


「さすがはSランクってとこか。しかしバルを誘った手前、逃げるまで時間を稼がないといけないよなぁ。だが接近戦に関して動きはセリーヌやアイヴィに比べるとそこまで早いとは思わない。避ける事だけに徹していれば攻撃は食らわないだろう。あとは尻尾とブレスだが・・・っと」


右前脚の鋭い爪で俺を斬り裂こうとして来るが、動きは丸見えだ。俺は左に飛びそれを回避するが、フォレストラドゥンは体を左によじり尻尾をこちらに向けて振り回してきた。あまりにも自然体な動きで空中に居た俺はそれを受け止める事しか出来ない。俺はバーンソードでその尻尾を受け止めるが空中でそれと止めれる筈も無く地面に叩き付けられ、5メートル程飛ばされる。尻尾を剣で受けた衝撃でバーンソードが中程から折れる。


「くそっ。バーンソードが・・・しかもミサンガまで切れるとは・・・」


尻尾を少しでも触れたであろうとミサンガは腕から切れて地面へと落ちる。俺はもう一つのミサンガを取り出し素早く腕に付ける。そして距離を取る。手には胡椒爆弾を二つ持った状態だ。その距離を取ったのを見てフォレストラドゥンは大きく息を吸い始める。その時を待っていた俺。


「今だ!!」


すかさず胡椒爆弾を顔面へと投げ息を吸い込んでる所に胡椒を入れる。


「グギャ~~ギャギャギャ」


フォレストラドゥンが胡椒を思い切り吸い込みその場で暴れるように苦しむ。その隙に攻撃しようとしたが、暴れまわっているせいで中々うまく近づく事が出来ない。

バル達を見ると仲間を回収して無事逃げしたようだ。これで一安心は出来るがこれで俺が逃げると完全に俺を追いかけて来るのは間違いない。町に被害を出す訳には行かないので森の奥の方へ逃げる。フォレストラドゥンは胡椒から抜け出して俺を追いかけて来る。これで完全に一対一の状況だ。俺が逃げた先は絶壁が聳え立ち、登る事も出来そうにない。つまり逃げ道はもう無いと言う事だ。


「追いかけっこもここまでだな。行くぞ。ファング!」


俺はファングを呼び出し二人でフォレストラドゥンに向かい合う。すると大きく息を吸い込む動作も無しにブレスを吐いて来た。咄嗟にファングが前に出て俺を庇うが明らかにファングの動きが鈍った。ノーモーションでもブレスを吐けるのか。しかも麻痺つきとはなかなかやる。俺はファングを飛び越えてフォレストラドゥンに向かう。空中で石の板を作り出しそのままフォレストラドゥンに叩き付ける。大きな石の板なので目の前の俺を見失うはずだ。その隙に後ろに回り込み空中へ飛び上がる。ポケットドラゴンに全力を注ぎ込み大きな岩を作り出す。だがポケットドラゴンに限界が来たのかこれ以上力を注げない所まで来たのが感じられる。巨大な岩が出現し、フォレストラドゥンへと影を落とす。上を見上げたフォレストラドゥンは今まで使わなかった翼を大きく広げ空へと飛び出そうとしてる。岩は10メートル四方位の大きさにしかならなかったが上空で出したので落下には少し時間がかかる。俺が岩を蹴って下へ叩き落とすが、フォレストラドゥンは寸での所で逃げ出し、直撃を避けたようだ。フォレストラドゥンは長くは飛べないのかすぐに地上に降りて俺の落下を待ち受けている。俺は空中で石を作り出しそれを足場にして逃げようとしたが、地上で待ち受けているフォレストラドゥンが飛び上がり、足場にしようとしていた石を尻尾で切り裂いて、俺へと叩き付ける。俺は空中からさらに上空へと舞い上げられ痛みに顔を歪める。どうやらミサンガがまた切れてしまったようだ。意識が飛びそうな頭を必死に回転させ状況を確認する。体は痛い。頭も働かない。下ではフォレストラドゥンが大きく息を吸い込んでるのが見える。しかし俺の落下は止まらない。射程内に入ったのかフォレストラドゥンがブレスを吐いて来た。俺はそれをまともに受ける。痛みは無いが一瞬にして体が動かなくなる。動かそうとすると激痛が走る。これが麻痺か。そのまま受け身も取れないまま地面に衝突する。衝撃で全身に痛みが走る。


「ぐはっ・・・」


口から鮮血が飛び散る。体は動かないが頭と目は動く、フォレストラドゥンがゆっくりとこちらへ歩いてきている。そして俺の倒れている。目の前で止まった。フォレストラドゥンの右前脚が大きく振りかぶる。それが振り下ろされるのが見える。俺の人生はここで終わったと思ったのだが前足の攻撃が俺を外す。フォレストラドゥンが後ろを見るとそこにはファングがフォレストラドゥンの尻尾を掴み引っ張っている。予備動作が無いだけ麻痺が弱かったのだと推測するが、ファングだけではこの状況を打開するには至らない。フォレストラドゥンが尻尾を振り回し、ファングを撥ね飛ばす。そして改めて俺へと向き直る。やはりファングでは打開出来なかったか。その時俺を覗いてるフォレストラドゥンの顔の後ろ、明るい空の一部が光る。その光は徐々に落下しこちらに向かって来る。俺の視線が気になったのかフォレストラドゥンが空を向く、その瞬間光は地面へと舞い降りた。着地の音もせず静かな時間が流れる。舞い降りた光は銀色に薄い緑が入った軽鎧を纏い、金色に輝く髪をなびかせている。手には見たことも無いような美しい剣。刀身が薄い水色でほぼ透明と言っていいだろう。向こうの景色が見える。


「またお前か・・・」


その人はこちらへ振り向き、剣を鞘に戻した。


「リソワ様・・・?」

「この程度でやられるとは不甲斐ない。お前にはもっと強くなれと言ったはずだ。それがこの様か。」

「申し訳ありません・・・」

「最善を尽くしたのか!!強くなろうと努力をしたのか!!その程度が貴様の限界ならばバカ猫も平和ボケでもしたのか!!」


光の正体は6勇者の一人にして現エルフの女王リソワである。話しているとフォレストラドゥンの首が傾き俺の腹へかぶさって来る。一瞬で首を切っていたらしい。首が俺へとかぶさり痛みに悲鳴をあげる。


「ぐはっ・・・」

「そもそもいつまで魔術が使えないと甘えているのだ!!ウンディーネから言われなかったのか!!貴様がそんなだからアイヴィも髪飾りの力を使うはめになったのでは無いか!!貴様がアイヴィを守れないのであれば今ここで私が引導を渡してやろう!!!」


リソワが腰の剣を抜く。美しい刀身を持つ切っ先が俺の首へ向けられる。


「俺は・・・」


言葉が出てこない、確かにアイヴィの強さに甘えていたのかもしれない。そこらへんの冒険者よりはなまじ強いからと言って調子に乗っていたのかもしれない。慢心だ。周りがみんな優しくしてくれたからそれに甘えていたのかもしれない。怠惰だ。アイヴィと一緒にいるんじゃなかったのか。こんなんじゃいつまでたってもアイヴィを守る事なんて出来るわけないじゃないか。決して自惚れていた訳じゃない。死ねば元の世界に帰れるとか思っていたのかもしれない。だが死ねばアイヴィは悲しむのは間違いない。俺もアイヴィが死んだら悲しい。なら俺のやるべきことはもうすでに決まっているんじゃないのか。

決意の光が目に灯る


「俺は・・・弱い・・・」

「そうだ。貴様は弱い!弱者は自分を弱者と認めて初めて強くなれるのだ!!」

「もうなりふり構ってられない。俺は帰ったらすぐにウンディーネの試練に挑みます。例え何度失敗することになっても俺は諦めない!今の力ではダメだ。全然足りない!!もっとだ!もっと俺に力があれば!」


俺の頬を冷たい涙が伝う。


「その気持ち忘れるでないぞ。次は無いからな。」


そう言い残してリソワは飛び立って行った。目の前の絶壁をひとっ跳びか。あの先にエルフの里でもあるのかな。俺の目の前にはフォレストラドゥンの顔があるのだが。


「洋平!!」


するとセクターがやって来た。俺の顔を覗き込んでくる。近い近い。


「大丈夫か!!今助けてやるからな!!」


セクターの後ろからぞろぞろと人がやって来る。バル達もいる。あとはハイトも居るのか。バルの報告でセクターと騎士団も動いたって感じか。みんなで俺の上に乗ってる顔をどかし、セクターの魔術で麻痺を取り除いてもらうのとついでに色々骨が折れていたらしいのでそれも治してもらう。


「すまない。無茶をした。」


俺はセクターに捕まりながら立ち上がり皆に頭を下げる。


「いや無事でなによりだ。それよりこの状況を説明してくれるか。」


俺はリソワに助けられた事やそれまでの顛末を話した。


「なるほど。状況は理解した。とりあえずギルドへ行くぞ。今は休め。」

「あぁ、今回はちょっと疲れた。ファング帰るぞ。」


ファングをポケットドラゴンに仕舞い、セクターのエターナルでウィンストハイムまで戻った。フォレストラドゥンの死体と一緒に。



りーそーわーさーまー

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