婚前準備
中二病炸裂!
「さて。洋平。騎士団長から話を聞くに、ほぼ一人で復興作業をしたと言うのは本当かね?」
「いいえ。私一人の力では出来ませんでした。ここに居ます騎士団の方と冒険者の方の力があればこそでした。」
「ふむ。ハイトが言うには洋平は魔物を使役していたと聞くが、それは本当かね?」
「はい。私の言う事を聞いてくれるアイアンゴーレムがこの石の中に入っています。」
「それが復興に大きく貢献したと聞いているが、よければ見せてはくれないか?」
「わかりました。う~ん・・・よし。大地の精霊よ。汝が力を体現せし者に今一度力を。究極召喚!ファング!!」
俺の中二病全開の掛け声と共にファングが姿を現した。ちょっとかっこつけたいじゃん。
「ファングよ。王の御前である。控えろ。」
俺の指示と共にファングが膝を付く。
「ふむ。本当に言う事を聞く様だ。よろしいファングと言ったか。此度の活躍褒めて遣わす。今後は特別にウィンストハイム領での人権を与えよう。まぁ人では無いのだが人型と言う事で問題はなかろう。」
「ありがとうございます。」
ファングに代わり礼を言う。ファングも頭を下げて敬意を示している。
「そして洋平よ。そなたから頂いた金貨500枚だがな。洋平が復興にこんなに尽力をしたおかげでほとんど使い道が無さそうなので。保障を差引、金貨370枚を返そう。大臣。洋平に」
「ありがとうございます。」
俺は、大金持ちから、お金持ちに変わった。まぁたいして変わってないような気もするけど・・・
その後王様の元を後にした俺は新しく出来たセクターのプライベートルームに来ている。俺が作ったんだから俺しか知らない部屋を作るのは極自然な事だ。セクターには一応話はしておいてある。まぁ4畳半位の部屋なのだが十分だ。そこで久しぶりの睡眠をとるのであった。
翌日、秘密の部屋で目を覚ました俺はセクターと一緒に朝食を食べ、ついでにギルドランクをAにしてもらい今後の事を話し合い、とりあえずセリーヌの所へ帰る事にした。エターナルストーンをセクターは持っているのですぐ帰ろうと思えば帰れるのだが、俺にはまだやることがあるのだ。一度セクターと別れて、俺は町に買い物に出る。一応勢いではあるがアイヴィに告白をしてしまった。むしろあれはプロポーズと取ってもらって構わない。なので俺は一部始終を見ていたセクターと相談し、この世界の結婚と言う物について説明を聞き、基本的には元居た世界となんら変わりの無いものだと聞いて安心した。つまり俺なりのケジメというのをつけようと思うのだ。
「指輪だよなぁ・・・」
一人でそう呟き、俺は宝飾店へと足を踏み入れる。店の中にはショーケースらしき物に入った沢山の宝石達が並んでいた。値段はピンキリではあるが、基本宝石とは魔力を沢山蓄えれる物で、基本的には魔道具の一部に分類されるのがほとんどだ。加工されていない宝石もあるが、加工済みと比べても値段がたいして変わらない。つまりここでは魔道具を買えと言う事だ。指輪型の魔道具は大きく分類して攻撃型と防御型に分かれる。攻撃型は念じれば宝石に封じ込められた魔術を行使することが出来る。これは魔術の才能に関係無く使えるが、所詮魔道具なのでいつかは壊れる。防御型もそのようなものだ。婚約のさいには防御型を送るのが一般的らしい。またそれとは別に普段身に着けるエンゲージリングもこの世界にもあると言う。俺は指輪があまり好きでは無い。細かい作業をするのに邪魔でしかないと思うのだ。まぁもっとも指輪なんてはめた事が無いのもまた事実である。防御型の婚約指輪を探していると店員に聞いたら、俺の身なりを見て冒険者だと思ったようで一番安いやつを勧めてきた。なのでそれを突っぱねて、一番高い物を見せてくれるように頼んだら、今度は逆に全く手が出ない。俺の予算は金貨にしておよそ400枚程度ならば出せるのだ。一番安い物でも金貨5枚したのだが、さすがにこれをアイヴィに渡す訳には行かない。こうゆう時位は男ってのは見栄を張るものだ。俺は店員と相談しながら一つの指輪を購入した。その指輪はエメラルドを少し薄くした色をしていて透明感のある緑色をしている指輪だ。宝石の大きさも大きすぎず小さすぎず、ちょうどいいと俺は思った。指輪のサイズは基本魔道具なので自動でサイズ調整はしてくれるようなので心配はいらない。ちなみに金貨350枚だった。
「これでやっと初夜を向かられるか・・・」
などと考え、次にエンゲージリングの代わりを探す。お互いにお揃いの物を身に着けると言う意味での役割なのであれば指輪に拘る必要性は無い。ネックレス等でもいいのだが、現在俺はポケットドラゴンをネックレスにしているので、あまりジャラジャラしたくは無い。お揃いの防具なども考えたがペアルックとか恥ずかしくて耐えられない。となると残るは腕の装飾品に絞られた。腕輪か。これも間違いなく邪魔になるだろう。だがミサンガなら別に問題は無いだろう。俺はミサンガを探してある人の元を訪ねた。
「こんにちは~」
「男かよ。冷やかしなら帰んな。」
店の女の人はこちらに見向きもせず、黙々と作業を続けている。
「前にも、こんな事があったな。よし!大地の精霊よ。不埒なディルマに裁きの鉄槌を!その力を存分に奮いたまえ!究極召喚アルティメットファング!!」
俺の叫びと共にファングが現れた。その衝撃音でディルマは顔を引き攣らせて固まってしまった。
「わわわわわ待ってくれ!すまなかった!勘弁してくれ!!」
「ふむ。わかればよろしい。ん?ファング?」
ディルマが怯えているのに構わず近所の子供がファングの足元の集まって来た。ファングは通行の邪魔にならないように端に避け、しゃがみ、すべり台モードになっていた。
「洋平。あれはなんだ?」
「アイアンゴーレムだと思うが?」
「なぜ街中に居る?」
「王から人権を与えられたから。」
「は?」
「まぁ、こまけぇこたぁいいんだよ。」
「いや。全然細かくねーし!先日街中で大暴れしてたのもアレか?」
「暴れたのは俺の嫁のアイヴィな。俺とあそこのファングは止めただけ。」
ついにディルマの頭のキャパシティが超えたのか、口をぽかーんと開け宙を見ている。俺が事情を説明し、ようやくディルマが落ち着きを取り戻してきた。
「つまりあれか、二人でお揃いのミサンガが欲しいんだな?」
「出来ればハートのミサンガが欲しいんだが、女性限定だもんな。お揃いでつけれるオススメのミサンガは無いか?」
「ん~実用性を考えてもミサンガは護身用だからな。基本は使い切りだ。冒険者なら万薬のミサンガが一番オススメかな。どんな状態異常でも防いでくれる。」
「なるほど。じゃあ万薬のミサンガを4つとハートのミサンガをくれ」
「あいよ。金貨一枚にまけとくよ。」
実際ハートのミサンガだけで金貨一枚はするのだがいいのだろうか。俺はディルマに金貨を渡し、ギルドへと行く。もう用事はほとんど終わったのでさっさとセリーヌの家に帰らないといけないな。セクターのエターナルでひとっ跳びだ。万薬のミサンガを4つ買ったのは予備だ。使い切りとはいえ常につけているべきであろうと判断したのだ。
あー結婚してー・・・




