復興
さてヒステリックバーサーカー頑固分からず屋馬鹿アイヴィオールエン俺の嫁が暴れたその日の夕方。俺はどこに居るかと言うと。王様の目の前です。折れた左腕はセクターに治してもらった。
「事情はだいたい聞いた。そして洋平だったな。顔を上げるがいい。さて此度の問題を色々と解決しなければいけない事が多い。まず損害について、ギルド本部及び家屋倒壊が40件。さらに家財道具等諸々。通路の整備費等など。これらは直ちに修理をせねばならん。そこで大臣が計算した結果。約金貨500枚との事だ。当然Bランク一人の冒険者に払える金額では無い。そこで洋平の冒険者の報酬の5割を金貨500枚になるまで徴収する事を命じる。その担保としてセリーヌの古代兵器を何点かこちらで預かる事にする。以上だ。何か質問はあるかね?」
「はっ!失礼ながら質問させて頂きます。今手元に金貨500枚がありますのでそれを今お支払してもいいでしょうか?」
「おい!嘘はいけねぇぞ!」
隣りにいるセクターが突っ込んでくる。
「いや、あるんだって。ほら。」
俺はバッグを取り出し、その中にある金貨の山をセクターに見せつける。
「マジか!お前どうやって。まさか盗賊・・・」
「んな訳あるか!ベイルの町のオークションで手に入れた金だ。」
「ゴホン。」
「失礼しました。」
「そのバッグの中身を確認させてもらってもよいか?」
「はい。どうぞご確認ください。」
大臣が近くに来てバッグの中を確認し数を数える。そして金貨500枚を確認するとそれを王に伝える。
「ふむ。確かに金貨500枚あるようだ。では今回の事件についてはこれで終わりとする。今後はこのような事が無いように頼む。」
「はい!申し訳ございませんでした!!」
謁見の間を後にし、俺とセクターで城を後にし、ギルド本部が有った場所に来る。
「とんでもねぇな」
「なにが?」
「金貨500枚とか普通じゃ手に入らねぇぞ。」
「まぁそうだろうな。それでどうする?」
「いやー建物が無いとな。明日から国が建ててくれるとは言え、それまでの間、どうやって冒険者を迎え入れるかが問題だ。大事な書類とかは持ち出したから無事だが建物が無いと明日からのギルド運営が出来ねぇ。依頼書はあるけど受ける事が出来ないって事だな。」
「そうだな。じゃあ今仮の建物でも作るか」
「どんだけ時間かかると思ってんだよ。」
「まぁ見てろって。ファング!」
俺はファングを呼び出した。
「おい!お前気をつけろよ。」
「大丈夫だって。ファングこれから建物作るから手伝ってくれ。」
ファングは片方しか無い腕を振り回してやる気アピールをしている。俺はポケットドラゴンで壁を次々に作り出しファングがそれを丁寧に並べていく。まずは外壁、ドアもつけれるように工夫を凝らす。ギルドの入口は西部劇の酒場みたいな小さな両開きのドアでもつければいいか。外壁を配置したら次は一階の小物類。小物と言ってもギルドの依頼を受けるカウンタースペースを作って、それからイスとテーブルを作って一階に配置。そして階段をつけ、以前と同じようにカウンターの奥に階段を作りそこから二階へ上がれるようにして、一階の天井兼二階の床を作る。そして会議室等、セクターの部屋を作る。一階に救護室も作る。
「つーか前と同じ感じでいいよな?」
「親父の部屋ちょっと広くしとくよ」
「ついでに三階まで作っちゃうか」
「あぁ訓練所も作るか。」
「ステージとかつけるのいいな」
「周りの家もついでだから作っちゃおうぜ」
「通路も作り直しか、今夜は徹夜だな」
作業は朝まで続いた。夜は瓦礫の中から木材だけを取り、それを燃やして灯りにし、周りを照らす。徐々に朝日が眩しくなってきた。ギルドはだいたい完成し、民家に取り掛かる。民家はよくわからないので基本二階建てだ。家具もベッドとテーブルとイスに本棚位しか作っていない。ポケットドラゴンの中である程度の形には作れるので、本棚とかは出してファングに置いてもらうだけだ。民家一軒が完成したら後はそれのコピーの要領で量産出来る。目の前に完成品があるとイメージがしやすい。そこで朝の鐘がなる。ギルド職員はライラとセクターと数人の有志が手伝ってくれたが、ギルドが出来上がると自宅へ帰った。セクターはファングが街中に居るので護衛と言う事も兼ねて住民への対応等をしている。町が徐々に喧噪を取り戻しつつある時、ある団体が来た。
「なんだこれは・・・おーい洋平殿~」
「はい。あっ、え~っとハイトさんでしたっけ?」
「よく覚えててくれたな。ウィンストハイム騎士団団長のハイトだ。」
「えっと、何か用ですか?」
「用も何も町の復興作業に来たのだが・・・」
「騎士団長様ともあろうお方が町の復興作業をするのですか?」
「もちろんだ。国に仕える騎士として、国の命令は絶対だ。」
「いや、大工とかに任せればいいのでは?」
「もちろん国お抱えの大工も来ているぞ。まぁ最近は平和なのでな。騎士団とはあるものの日々の訓練以外にやる事があまりないのだよ。こうゆう仕事も騎士団の務めだ。」
「なるほど。わかりました。ですが・・・このクオリティでよければ一人で出来ますよ。ファングも居ますし。」
ファングが俺の後ろについてハイトを見ている。ハイト他騎士団の方々は街中に居る魔物に驚きを隠せないが、先程まで建築作業をしていたのを見るに、あまり警戒はしていないようだ。
「いやそのゴーレムがいくら安全だからと言って町の中でうろうろさせる訳にもいかないだろう。とりあえず一度ゴーレムを隠してくれないか?」
「そっか。わかりました。おいでファング。」
ファングは素直にポケットドラゴンの中に入った。俺は石をいくつかファングに与える。
「それでこの建物は洋平殿が一人で作ったのか?」
「そうですね。ファングに手伝ってもらいましたけど。」
「一人で一晩でか?」
「そうですね。ファングも居ましたけど。」
「ふむ。セナよ。どう思う?」
セナと呼ばれたのはドワーフのおじいさんだ。大工であろう恰好をしている。
「少し拝見致しましたが。非常によい石材を使われておられる。この辺りの家屋はみな木材ですからな。石材のが強度はありますし。この作りなら通気性も問題もなかろうと思います。」
「ふむぅ。私達も家を作る気で来ているのでな。この完成度とあれば・・・うぅむ。私達の仕事が無くなるではないか・・・」
「ここはこの洋平殿の指示に従い手伝うのが一番の早道だと思われますが。」
「セナが言うのであれば間違いはなかろう。よし。洋平殿。私達、騎士団も洋平殿を手伝う事にしたぞ。さぁ何をすればいい?」
なんか変な事になったな。俺寝てないんだけど・・・。まぁいいか。眠くないから。では行くか。セクターはファングが居なくなったので仮眠をしに出来たばかりの自室へと帰って行った。
「ではまず外壁から作ります。自分がこうやって壁をドンドン出していくので、隣の家と同じ用に組み立てていって下さい。」
といって俺は外壁の一枚を出す。兵士達が10人位で持ち上げようとしていたが持ち上がらない。
「洋平殿。もうちょっと小さく出来ないものか?騎士団の者も鍛えてはいるがさすがにこれは重い。」
「えー。じゃあファング出していいですか?」
「いや、それはあまりよくは無いが・・・仕方ない。許可しよう。」
「出番だぞー。」
俺はファングを出す。ファングは俺が出した壁を片手で軽く持ち上げて俺のイメージ通りの場所へと置く。その繰り返しなのだ。
「我々の出番が無いようだ。だが何もしない訳にもいかない。何か私達に出来る事は無いのだろうか?」
「あ~じゃあ家具類は小さいので何人かで運べば行けると思うのでそちらをお願いします。」
俺は本棚やベッド等を出してそこらへんに置いておく。それを騎士団が大勢で持ち上げ家の中へと運んでいく。
「ふむ。私とセナが暇だな。洋平殿。我々にも何か別な仕事をくれないか?」
「あ~じゃあ朝食を頼む。」
「???・・・わかった。セナ行こう。」
物わかりがよくて助かる。セクターも起きてギルドにも少しづつ人が集まってきている。そこでバル達を見つけた。
「おーい。バル~」
「っ!・・・洋平様。お久しぶりです。もう色々と驚きません。」
「ちょっと町の復興を手伝ってくれ。」
「もちろん。そのつもりで来ました。今ギルドから緊急依頼と言う事で洋平様のお手伝いをするという依頼が出ていますので、我々はいち早くこの場に来た次第であります。なんなりとご命令を。」
セクターが緊急依頼として俺の手伝いの依頼を出したのか。これは助かるな。ギルドから出てきた人のほとんどがこちらに向かって来る。騎士団に冒険者全部で100人を超える復興部隊だ。瓦礫の片づけ。これは石類は俺がポケットドラゴンで処理する。その他は処分場へ持って行く。建物の建造。俺が出したパーツをファングと騎士団と冒険者で運び家を作っていく。プラモデルのような気がしてきて、俺のテンションが跳ねあがっている。ハイトとセナが朝食も持って来てそれを食べた時に、普通はハイトにそんな事頼めないとバルから言われた。知ってたよ・・・それくらい。
「ん?どうしたファング?」
ファングが作業を少し中断し俺の前へ座った。
「なになに。片腕が無いからバランスが取りづらく、作業効率もあまりよくないってか。でもまぁしょうがないだろ。ん?俺が腕を作れば大丈夫?そうなのか。」
俺の意思とは無関係にファングがポケットドラゴンへと入って行く。俺の意思無視とか出来んのかよ。勝手に出て来るとかは辞めてほしいな。俺はポケットドラゴンの中でファングの腕を創造する。右腕がそのままなのでそれを対象にコピーするだけだ。するとファングの腕が元通りに復元される。そしてポケットドラゴンの中で出してほしいアピール。自分では出れないのね。よかったよかった。
「新たな力を存分に発揮せよ。いでよファング!」
大きい音と共にファングが再登場した。その音に周囲は少し驚くが腕が再生されたファングを見てみんな一安心しているようだ。そのままファングは両手で壁を持って走って行き作業を再開した。騎士団が何かファングに話しかけたりしている。どうやら警戒はもう無さそうだ。同じ仕事をしている仲間としての認識だろう。それに人間に比べて作業効率が段違いだからな。100人力とはこの事だ。人海戦術とコピーのおかげで作業が捗り昼の鐘が鳴る頃にちょうど復興作業が全て完了した。まぁまだ民家の中は空っぽだし、損害を受けた人はほとんど国から保障されるので問題は無いようだ。民家の住民はゴーレムの作業を見て、自分達の家を建ててくれる恩人に感謝の意を表している。
「ふぅ~。ようやく終わったか。」
「っておい!早すぎじゃねーか。」
「あ。親父。なんとか出来上がったぜ。まぁ全部石造りだから無骨だけど、なんとか人は住めるレベルだろう。」
「これだけの石を全部一人で出しちまうんだもんな。お前はやはり自慢の息子だ。」
等と起きてきたセクターと話ながら騎士団が持って来てくれた昼食をみんなで食べる。ファングはもう外に出しっぱなしだ。今は民家の子供のすべり台になって遊んでいる。
「洋平殿。お疲れ様でした」
「あ。ハイトさんお疲れ様でした。」
「昼食を食べてからでいいので、王からまた来るようにとの要請がありました。」
「なるほど。わかりました。」
俺は昼食をさっさと住ませ、子供達と遊んでいるファングを戻し、子供にワーワー言われながら王の謁見の間へと急ぐ。
金の力・・・




