ボス戦
ダンジョンウォーカーが出現したと言う事はダンジョンの終わりが近い事を示す。次の階層に迷宮のボスが居る可能性がある。迷宮には必ずボスという存在が居る。そのボスを倒すと一応は迷宮のクリアになるのだ。迷宮クリア後は魔法陣が出現し地上まで戻れると言うのがこの世界の迷宮に共通することだ。俺とアイヴィは19階層で苦戦をしたのでしっかりと休憩をしてから20階層へと降りる。
「うぉ!なんかすっげーな。」
「これはこの迷宮のボスですね。」
部屋はとても広く松明が周りにあり明るい空間を出していた。その部屋の中央に存在する、圧倒的存在感の物体。これはゴーレムだ。
「洋平あれはなんですか?」
「あれはゴーレムだ。」
「ゴーレムと戦う時の注意点は?」
「ゴーレムは力が強いから攻撃は受けるのでは無く、避ける。動きは遅い。基本属性は土属性だが例外も存在する。こんなもんか?」
「まぁ合格でしょう。ただしあれは普通のゴーレムではありませんね。」
「むむ・・・わからん。教えてくれ。」
「あれはアイアンゴーレムですね。」
「と言う事は鉄か。防御が高そうだな。」
「その通りですね。これは私もちょっと困りましたね。私の攻撃で効果的なのは火の魔術位しかありません。ですが一人でこれを倒すとなると相当な時間がかかってしまいますね。」
「俺はどうすればいい?」
「洋平は洋平に出来る事を考えてください。来ますよ!」
アイアンゴーレムはゆっくりと巨体を起こし全体像が見える。体長は3メートル程度。体が全て鉄で出来ている感じだ。アイアンゴーレムはこちらを確認し向かって来る。動きは遅く感じるが。実はそれほど遅くも無い。大きさのせいで歩幅が広く普通に人が走る以上のスピードは出ている。アイヴィは火の魔術を使い遠距離から攻撃を仕掛けている。なら俺に出来る事はせめてアイヴィに攻撃が行かない様にする事位だ。俺は走り出し、アイアンゴーレムに向けて石を投げる。顔面にヒットするが傷一つ付いていない。だがしかし俺に注意を逸らすことが出来た。アイアンゴーレムが俺に向かって来る。
「さて、こっから本番だな。よっしゃ!やるか!」
アイアンゴーレムの右腕が振り下ろされる。攻撃が早い。結構余裕は無い。俺はギリギリで躱す。そしてまた頭に狙って石を投げる。これでヘイトは稼げるからアイヴィが後ろで魔術を使ってもそっちにはいかないだろう。アイアンゴーレムの左足が蹴りだされる。俺は横に飛んで躱すが、そこに右手がやって来た。
「まずい!ぐはっ!!」
「洋平!フレイムランス!」
俺は10メートルも吹き飛ばされて壁に叩き付けられた。アイアンゴーレムがアイヴィへと向かう。アイヴィは攻撃を躱しながらだと魔術が上手く使えていない。俺は起き上がり、体のダメージを確認する。うん。痛い。けど我慢だ。俺は真っ直ぐにアイアンゴーレムへ向けて走りアイアンゴーレムの頭へ掴みかかる。ポケットドラゴンから強度の堅い石を作りそれを握り、アイアンゴーレムの頭部を叩く。
「洋平!!!」
「アイヴィ!俺に構わず攻撃するんだ!」
アイヴィがフレイムライスでアイアンゴーレムに攻撃し、俺は頭を殴る。だがアイアンゴーレムがアイヴィの攻撃を無視し、俺の体を掴み頭から剥がしてしまう。
「洋平!はぁぁっ!」
アイヴィが剣を抜きアイアンゴーレムへ向かって来るが、それはアイアンゴーレムの蹴りによって逆にアイヴィは壁まで吹き飛ばされてしまう。アイアンゴーレムと俺の目が合う。なんか前にもこんな状況に陥った事があるな。そういえばトロルと戦った時か。あの時はリソワが助けてくれたんだよな。てか今はそれどころじゃない。
「ぐぬぬぬぬ~」
やばい潰れる。目いっぱい抵抗しているが、これではダメだ。だがこの感じはなんだ。胸から何か感じる、これはポケットドラゴンか。もしかしてアイアンゴーレムと共鳴しているのか。もしかして・・・
「ちょっと邪魔だから入ってろ!!」
俺はアイアンゴーレムに捕まりながらポケットドラゴンに念じる。するとアイアンゴーレムの姿が一瞬で消える。
「ふぅ。出来たか。倒せてないけど別にいいか。」
「洋平!」
アイヴィが駆け寄って来る。不思議な顔をしている。
「ゴーレムは?」
「あぁ、ここに入ってる。」
俺は胸のポケットドラゴンを示す。
「え?そんな事が可能なのですか?」
「可能も何も出来たからな。たぶん出せる事も出来ると思うけど」
そう思い、俺はポケットドラゴンの収納スペースを意識して中を見る。するとそこにはアイアンゴーレムが暴れていて、俺が頑張って作っている家その他もろもろを壊していた。
「おい!ちょっと止めろって!!」
「どうしたんですか?」
「アイアンゴーレムがこの中で暴れてるんだよ!おい止めろ~ストップー」
するとアイアンゴーレムの動きが止まった。
「はぁ?」
「どうしたんですか?」
「いや、色々とわからんけど、とりあえずは大丈夫らしいからこいつはこのままここに入れておいて、外に出てから人でも雇って処理すればいいかな。と言うかこれならポケットドラゴンの中で処理出来そうだな。」
俺がそう言うとアイアンゴーレムが凄く悲しい表情をした。実際には表情は無いのだが、明らかに落ち込んでいる。
「ちょっと待て、俺の言う事がわかるのか?」
アイアンゴーレムは頷く。
「言葉は喋れない?」
頷く。
「ここから出たい?」
頷く。
「もう俺達に攻撃しない?」
頷く。まぁ攻撃してきたら今度こそスペースから放り投げて人生終了のお知らせだからな。
「アイヴィ。アイアンゴーレムを出すから攻撃しないでくれよ?」
「え?あ、はい。わかりました。」
俺はポケットドラゴンに念じてアイアンゴーレムを出す。嬉しいのか体を叩いて表現している。
「えーっと、いくつか質問する。はいかいいえで答えられる質問そするから、頷くか首を振って答えてくれ。」
頷く。
「よし。ではまずこの迷宮のボスはお前だな?」
頷く。
「この状況では倒した事にならないのか?」
首を振る。そしてゴーレムの後ろに宝箱と魔法陣が出現する。
「ふむ。なるほど。倒すか、負けを認めさせればいいって感じなのか。アイヴィ何か質問は無いか?」
「いえ、まさかゴーレムに意思があるなんて・・・」
「まぁ生きてるんだからみんな意思はあるだろう。石だけにな!」
アイヴィそんな冷めた目で見ないで。アイアンゴーレムは大爆笑してるじゃないか。
「これセリーヌ様が知ったら大変な事になりますよ。学術的価値がある大発見だと思いますよ。」
「そうなのか。まぁたぶんポケットドラゴンに入ったから俺と意思が通じ合ったとかそんな感じなんじゃないのか。」
アイアンゴーレムが嬉しそうに頷く。
「じゃあ宝箱開けて帰るか?」
「そうですね。迷宮調査もしましたし依頼は十分でしょう。それよりも大きな発見がありましたけどね。」
俺とアイヴィは宝箱に元へ行き箱を開ける。
「これはっ!」
「空っぽですね。」
「おい!」
俺はアイアンゴーレムを睨みつける。アイアンゴーレムは慌てて身振り手振りで説明しようとしてる。
「なになに?俺らが。降りて来るのが早いから。宝箱の中身を用意できなかった。俺らのせいかよ!」
「まぁまぁ洋平いいじゃないですか。よくある事ですよ。」
「そうなのか?」
「まぁそうゆう事にしておきましょう。今は早くセリーヌ様の元へ。」
「ふむ。まぁアイヴィが言うなら今回は見逃してやるか。次来る時までにはちゃんと用意しておけよ!」
アイアンゴーレムは頷いたので、俺らは出口へと通じるであろう魔法陣に向かって歩き出した。するとアイアンゴーレムがいきなり俺らの前へ立ち塞がった。
「なんだ。またやるってのか?」
アイアンゴーレムは必至にまた身振り手振りをして説明している。
「なになに?宝箱の代わりに。俺をくれるって言うのか!?アイヴィどう思う?」
「たぶん解釈は間違ってないと思いますけど、でもこの大きさを連れて歩くと問題が起きますよ。」
「まぁ移動はポケットドラゴンに入れて運べばいいんだけどな。」
「そうですね。セリーヌ様のお土産にはちょうどいいのではないのでしょうか?」
「なるほど。それはいい考えだな。じゃあそうゆう事にしよう。」
アイアンゴーレムが首が取れるんじゃないかと言うほど首を振っている。
「俺。お前がいい。なんだよそれ理由になってねーぞ。なになに?俺の。ポケットドラゴン。の石。旨い。てめぇ俺が頑張って作った家食ったな!!」
てか理由が不純だな。飯の為か。まぁそれならそれで俺に敵意は無いと見ていいだろう。というかよく考えればこんな強いゴーレムが仲間になりたいって言ってるんだよな。俺とアイヴィ二人がかりで苦戦したやつが。そう考えればこれは断る理由が無いんじゃないか。
「わかった。お前を連れて行こう。だがほとんどこのポケットドラゴンの中だぞ。そうじゃないと色々と問題が起きるからな。それでもよければ歓迎しよう。」
アイアンゴーレムが嬉しそうに飛び跳ね、俺とアイヴィを抱きかかえて魔法陣へと突っ込んだ。
「おい、ちょっと待て!俺の言う事を聞け!!」
「洋平もう遅いです。もう起動しています。それにこの状況は動けません。」
「このやろぉぉぉぉぉぉ」
俺とアイヴィとアイアンゴーレムは魔法陣に吸い込まれていった。この感覚はポータルストーンと同じ感覚だ。こうして俺の初迷宮探索は終わった。報酬はアイアンゴーレムだ。個人的にはこれは凄く嬉しい。今度アイアンゴーレムって名前呼ぶのも不便だから名前でも付けてやろう。
よくわからないけど仲間が増えたよ!




