背中の幸せ
朝目覚めると目の前の光景に驚く
「そういや。これ俺が作ったんだっけ。アイヴィ起きろ~。朝だぞ~」
俺の肩にもたれ掛ってるアイヴィを起こし、俺は朝食の準備をする。
「洋平。おはようございます。」
「アイヴィ。おはよう。朝食を食べたら帰ろうか?」
「でも、私は足が・・・」
「背負うから問題無いよ。」
背中が幸せになるしな。俺は簡単に朝食を作り、目の前の壁を見る
「この壁は壊すしかないのか。」
「ポケットドラゴンで作った物ならたぶん回収できますよ。」
「そうなのか。では早速」
俺は目の前の壁にポケットドラゴンを当て念じると目の前の壁が無くなった。天井もついでに無くした。ベンチだけを残し、昨日戦った時に作った石の壁も適当に回収してきた。
「んじゃアイヴィ。行くか。」
「よろしくお願いします。」
骨折というのは魔術で治せる。怪我のほとんどは魔術で治せるのだが。それぞれの系統によって治せる種類が違ってくる。アイヴィがよく使う風系統は疲労回復だ。体内の乳酸を取り除く感じだろう。水は体内の清浄化。病気はほとんどこれで治せるらしい。火は外傷。切り傷や火傷等だ。そして土が内傷。骨折等はこれに相当する。切れた腕を生やしたり、死者を呼び戻すのも無い訳では無いが。それはもう失われた魔術になるそうだ。
俺はアイヴィを背負い石のベンチも吸収し、ゆっくりと歩き始める。骨折だと振動でも痛いだろうからな。走ってはダメだ。だがそうゆう訳にも行かない状況もあるだろう・・・
「俺はトレントが見分けれないからアイヴィが指示をしてくれ。基本的に全て踏まない様に気を付けるけどな」
「わかりました。とりあえず今踏んでるのはトレントの根です。」
「え?ここ何も無いよ?」
「地中に埋まっていてもトレントは反応します。」
ゆっくりとトレントが動き出し俺に向かって枝を振り回してくる
「逃げるけど。ちょっと痛くても我慢してくれ。なるべく静かにいくようにするから。」
「私は大丈夫です。一人で居るより安心しますので気にせず走ってください」
俺はアイヴィを背負い走る。相当神経を使いながら。常に下を向いて走っている訳にもいかない。着地地点に根があればそれを避ける為に歩幅をずらさないといけないし、そうするとアイヴィに振動が伝わるからそれでまた歩幅を調整しないといけない。なんとも難しい。とりあえず全部の根を踏んでいるらしい。アイヴィが耳元で教えてくれているが、優先順位はアイヴィへの振動が一番高い。トレントは走ればなんとか撒けるからな。最初に踏み出した時点でもう止まる事は許されなかった。途中ダイヤウルフの群れに遭遇したが、完全にスルーした。追いかけてきたが、まきびしで対処した。6時間程走っただろうか。俺はやっと森を抜ける事に成功した。すぐにベンチを作りアイヴィを座らせる。俺も座りたい。かなり神経を使った。疲労感が半端では無い。俺もアイヴィの隣に座ろうとすると森からダイヤウルフが飛び出してきた。
「全くめんどくさい奴らだな。今は疲れてるんださっさと帰れ」
俺はアイヴィにブーストを貰いダイヤウルフの群れに突っ込む。何故か自分でもわかる位に動きがいい。早い。今の状況ならセリーヌともいい勝負が出来そうだ。俺は人より精神力が多いので魔力操作による身体強化が難しい。アイヴィを背負って走っていたことで精神力が少なくなり、魔力操作がしやすくなっていた。ベイオウルフと戦っていた時と同じ感覚だろう。あの時は無我夢中だったのだが、今はそこそこ冷静でいられている。でもセリーヌが言ってた通り、ピンチになってからじゃ遅い。もっと鍛錬をしなければと胸に誓った。
ダイヤウルフを圧倒し、俺はアイヴィの隣へ座った。
「色々迷惑をかけてすいません。」
「いいよ。気にすんな。俺のせいでもあるんだし。まぁアイヴィを背負えているんだから悪い事ばかりではないさ。」
一時間程休憩をしたのち俺はまたアイヴィを背負いベイルの町へと向かう。もう走る心配もないからゆっくりでいい。背中の幸せをかみしめるように俺はベイルの町へと歩みを進める。
ベイルの町に着いた時にはもう夕暮れになっていた。まずはアイヴィの足の治療が優先だ。話によると教会が病院みたいな役割をしているらしい。回復魔術に長けた者が常駐しており、治療を行ってくれるらしい。俺はアイヴィを背負い教会へ向かい中に入りシスターと思われる女性に話しかける。
「すいません。怪我をしてしまって。ここで治療できると聞いたんですけど」
「はい。どうやら、骨が折れているみたいですね。すいません。土魔術を使える人は今で払っておりまして、明日の朝になればいると思いますので申し訳ありませんが明日またお越しください。」
「そうですか・・・アイヴィ。明日まで我慢できるか?」
「私は洋平が居てくれれば大丈夫です。」
「わかった。じゃあとりあえず宿に戻るか。」
俺は教会を後にしグラングランへと戻った。宿の店主に事情を説明し、夕食を部屋まで持って来てくれる事になった。俺はアイヴィをベットへ降ろし、俺もアイヴィのベットに大の字になる。
「あ~疲れた~。アイヴィいつもの頼む。」
「今、私に出来る事はこれくらいしか出来ません」
「いや、これで満足だ。やっぱアイヴィの魔術は気持ちいいよ。」
俺は足の疲労感が無くなってからアイヴィを抱き寄せ、腕枕をして一緒に横になる。もうここまで来たらやるしかない。アイヴィは身動きが取れないからな。すると部屋の戸をノックされ夕食を店主が持って入って来た。俺は慌てて立ち上がり受け取る。
(彼女怪我してるんだろ?今やると男の評価に関わるぜ?)
店主が俺だけに聞こえる声で忠告してきた。それもそうだな。動けない事をいいことにしたらダメだな。あれだけ振動とか言っておきながら、これじゃ意味無いな。背中が幸せすぎてずっと興奮しっぱなしだったからな。落ち着け。冷静になるんだ。俺は店主に向かって頷き部屋のテーブルをベットの近くまで持って来て食事を置く。
「ここなら安心して食べれるな。」
俺がそう言いながらアイヴィの方を見ると、アイヴィが口を開けて待っている。
「いやいや、手は使えるだろう?昨日の事は忘れよう。」
アイヴィの顔が悲しみに染まる。
「あ~はいはい。わかったよ。足が治るまでの間だけだからな。」
アイヴィがこれでもかという笑顔で口を大きく開いた。このアイヴィも可愛いな。俺はしょうがなくあ~んをしてやる。その後はまた俺もあ~んをしてもらう。そして食後のキスをする。するとアイヴィは顔を赤く染め布団の中に潜り込んだ。
「全然元気じゃないか!明日は朝教会に行くからな!」
「朝食も・・・」
布団の中から声が聞こえる。全くこいつはなんなんだ。デレ期か。まぁいいけどさ。俺も布団に入る。ゴブリンとダイヤウルフとの戦闘を終え久しぶりの心休まる時間だ。精神力がかなり減っているからな。俺はすぐに眠りについた。
活動報告その1を書きました。遅いですけど自己紹介です・・・




