ベイルの町へ
「洋平起きてください。もう朝ですよ」
「う~頭痛い。飲み過ぎたな。」
俺はアイヴィに起こされる。昨日の事は途中から覚えていない。久しぶりにみんなとはしゃいだ。アイヴィも一緒で俺の気持ちの高鳴りを抑えられなかったらしい。
「はい。これを飲んでください。解毒効果があります。」
「二日酔いは毒なのか。まぁ確かに体に悪い物か。ってにげー・・・」
ウコンどころの騒ぎじゃない。でも我慢して飲み干す。
「すっげー効くな。もう大丈夫だ。さぁ今日は依頼を受けに行こう。」
「気になってたんですけど依頼の当てとは?」
「昨日ロイさんと話してた事なんですけど、ベイルの町までロイさんの護衛ですね。」
「なるほど、ちょうどいいですね。護衛なら危険な可能性もありますけど、他に比べるとそうでも無さそうですね。」
「俺もちょっと他の町に行ってみたいんだよね。」
二人で朝食を食べギルドへと向かう。というか指名依頼ってどうやって受けるんだ?俺は不安になりならがもギルドの戸を開く
「指名依頼ってどうやって受けるんだ?」
「職員に話せば大丈夫だと思いますよ。あちらから声をかけてくれる場合もありますから、特に心配はいりません。」
「おっけー。ちょっと行って来るわ。」
アイヴィは依頼の貼ってある掲示板に向かった。俺向きの依頼を探すんだとさ。俺は職員の一人の所に向かう。
「すいません。俺宛ての指名依頼って入ってないですか?」
「はい。確認致しますので、プレートを出してください」
ライラはまだ居ない。まぁこの時間ならそうだな。俺はプレートを渡す
「洋平様ですね。指名依頼が5件入ってますね。依頼主はロイ様、バーン様、ハク様、シエル様、ディルマ様です。内容は全員ベイルの町まで護衛ですね。」
「は?5件?」
「皆様お知り合いの方では無いのですか?」
「一応知り合いだが、この依頼って一纏めにならんのか?」
「それは依頼主同士の話合いの結果次第ですね。」
「わかりました。とりあえず全部受けれるんですか?」
「いいえ一度に受けれる依頼の数は3つまでです。洋平様は二人パーティですので4つまでは受けられます。」
「なるほどそうゆう仕組みなのね。」
俺はアイヴィの元へ行き事情を話す。アイヴィは知り合いの冒険者が居たらしく、話をしているので俺一人で向かう事になった。
「ロイさんどうなってるんですか?」
「洋平か。いやー昨日つい口を滑らせちまってな。みんなに恨まれたよ。依頼は受けてきたのかい?俺はいつでも出発出来るぜ。」
「もう全員依頼出しちゃってそれどころじゃないんですよ」
「え?というと指名依頼5つか?」
「はい。どうにかして一纏めに出来ませんかね?」
「全員ベイルの町までか?」
「そうみたいですね。」
「じゃあ一つにしてしまった方がいいな。洋平達はちょっと大変になってしまうかもしれんが、大丈夫か?」
「まぁ盗賊さえ出なければ大丈夫でしょう。」
「そうか、まぁ最近物騒だからな。とりあえずあいつらと話をしてくるからギルドで待っててくれ。」
俺はアイヴィの元へ行き事情を説明する。その間にロイ達が依頼を一つにし、依頼書を俺の所へ持ってきた。
「これが依頼書だ。よろしく頼むぜ。」
「わかりました。行ってきます。」
俺はカウンターへ行き依頼を処理してもらう。依頼内容は商人達の護衛だ。5台の馬車を無事にベイルの町まで送り届ける事だ。帰りは無しだ。
「終わりました。今すぐ出発するんですか?」
「そうだな。俺の準備は済んでるが他の連中はまだのやつも居るからな。昼の鐘が鳴る時に城門集合でいいだろう。」
「わかりました。ではまた後で会いましょう。」
俺達は一旦ロイ達と別れて準備の為に買い物に行く。道中は馬車で5日程だ。この町から南へ行くとベイルの町があるそうだ。俺は行ったことが無いから期待に胸を膨らませる。
「必要な物はテントと食糧位でいいのかな?」
「まぁ最低それだけあれば大丈夫でしょうね。武器はありますからね。後は盗賊対策の為に色々買っておきましょう。こちらは馬車5台もありますからね。逃げるのも一苦労ですよ。」
「そうだな。例の盗賊が出たら逃げないといけないしな。」
「状況次第ですけどね。倒せるレベルの盗賊なら倒した方が安全な場合もありますから。」
「なるほどなぁ」
俺はアイヴィと盗賊対策の為色々と打ち合わせや買い物を済ませ城門へと向かう。盗賊はサイモンを殺した以外にも沢山いるようだ。俺には必殺のポケットドラゴンがあるからな。遠距離から石を投げまくれる。もう石を持ち運ぶ必要も無いから荷物が大分軽くなった。流石はAAAランクの古代兵器。格が違うぜ。
「お待たせしました。って凄いな。みんな」
みんなの馬車はそれぞれ独特の形をしている。移動屋台みたいな馬車がベースだ。そのまま露店としてすぐ店を開けるようにする為の知恵だそうだ。それにみんな色々と工夫を凝らしている。
「んじゃあよろしく頼むぜ。」
「はい。精一杯頑張らせて頂きます。」
馬車は、ロイ、シエル、ディルマ、ハク、バーンの順だ。シエルの馬車に屋根には煙突がありアイヴィはそこに立って周囲を警戒している。俺はバーンの荷台に乗り後方警戒だ。道中は森等は抜けない。草原一本道だ。草原の中に獣道が出来上がって、それが道しるべとしてベイルの町まで続いている。これなら迷う心配も無い。たまに草原に変な生き物が居るが、基本は無視だ。こちらに向かって来るなら戦うが、無駄な体力は使うべきではない。
「洋平。」
アイヴィが俺の名前を呼び、草原の向こうを指さす。よく見るとポグの群れが居る。俺はポケットドラゴンで石を作り投石を開始する。5匹のポグはあっと言う間に気絶した。その後もアイヴィが魔物を見つけ、俺が石を投げる事で馬車の安全は守られた。バーンは俺が投げた石を拾いに行こうと脱線したが俺が石をあげたので事無きを得た。バーンが叫んでいるから、前のハクにも聞こえハクにも石をあげる。ポケットドラゴンで作り出す石は様々な石を出せる。小石サイズや、顔のサイズの石まで、もっと大きい石も出せるらしいが、機会が無い。しかもこれのいいところは形までも作り出せるのだ。俺はバーンの屋根で創造をしながら進む。警戒はアイヴィがやるから俺は呼ばれた時に動けばいいや。アイヴィゴメン後で変わるよ。
「洋平!前方注意!」
俺は急ぎアイヴィの元へ駆けつけ前を見る。よく見ると馬車が傾いて止まってしまっている。
「車輪が外れたみたいですね。」
「あれは盗賊の可能性がありますから注意してください。荷台から沢山の人の臭いがします。」
「そうなのか。じゃあちょっと遠回りをして避けるか。」
「それが一番安全ですが、もし盗賊じゃ無い場合・・・」
「手を貸してあげるのが道理だよな」
すると前の馬車から一人の女性がこちらへ走って来た。
「すいません。馬車が壊れてしまって、どうか手を貸していただけないでしょうか?」
俺はアイヴィと顔を見合わせ、小声で話をする。
「俺が様子を見て来るよ。危なかったら逃げて来るからアイヴィはそのまま進んで行ってくれ。後で追い付く。」
「絶対に危ない事はしないでくださいね。」
俺は馬車の屋根から降り少女の前に立つ
「俺でよければ力を貸しますよ。さぁ行きましょう。」
俺は一人で倒れている馬車へと向かう。少女は置いていく。アイヴィが付いていればあっちは大丈夫だ。二人が離れて馬車の守りが手薄になる事は避けたい。俺は馬車へとたどり着いた。
「あ~壊れちゃってますね。ちょっと直すから誰か手を貸してください。」
「直せるのか?」
「楽勝楽勝」
俺はポケットドラゴンで馬車の車輪を作り出す。他のパーツも色々と一気に出す。
「ほう、土魔術師だったのか。珍しいな。ヒューマンで土魔術を使えるとは重宝する。」
俺のは石魔術だけどな。なんかこいつら怪しい。盗賊の臭いがするというか。あの少女以外はみんな完全武装している。俺はさっさと石の車輪を馬車に取り付ける。
「終わりました。では失礼します。」
「お、おう、ありがとな。そうだお礼をあげるからちょっと待っててくれ。」
そういって周りの男達が俺を取り囲む。まぁ想定内だ。
「痛い目に合いたくなかったら持ち物を全部置いていきな。言う事を聞けば命までは取らねぇよ」
やっぱり、でもこいつらは大したことが無さそうだ。俺はポケットドラゴンを握りしめ上空にジャンプする。イメージするのは板だ。大きなやつ。余り重いと死んじゃうからな。潰れる位でいいだろう。俺は大きな石の板を上空に出す。そしてその上に乗りそのまま落下する。落下の衝撃で石の板は割れ、馬車を粉々にし、盗賊達を一瞬で無力化させる。
「はい、一丁上がり!アイヴィももう見えなくなったからな。お楽しみタイムと行こう。」
俺は全員の服をまさぐる。女は最初の少女しか居ない。残念だ。たまに気絶してないやつがいたが足の上に大きな石を乗せて身動きが取れない様にする。はいはい、みんな大人しくしててね。めぼしい物が全然無いな。とりあえず全員からお金を奪い取り、高そうなアクセサリーだけ貰う。武器になりそうなものはまとめて石でぺちゃんこだ。これで少しは懲りるだろう。バル達だって変ったんだ。お前達も変われ。
俺は急いでアイヴィの元へと駆けつける。どうやらみんな無事なようだ。
「洋平。全部見てましたよ。」
「え?マジ?アイヴィ目がいいな~」
「やってることは盗賊と同じじゃないですか?」
「正当防衛だから罪にはならないでしょ?」
「まぁ無事でよかったです。」
「ぎゅっとしてやろうか?」
アイヴィに叩かれた。嬉しい癖に、顔に出てるぜ。それからも盗賊にはちょいちょい絡まれた。その度に俺が出向き、石でぺちゃんこにする。ポケットドラゴンマジで強い。使い方次第だな。使い方も創造すればいいさ。夜になると俺はみんなの前で創造を披露していつもの飲み会みたいな感じだ。ポケットドラゴンのおかげで創造が捗る。俺の為にあるような古代兵器じゃないか。寝る時はアイヴィと一緒のテントだ。予定では5日の所、三日目にはベイルの町に着いてしまった。
「いやー洋平のおかげで助かったよ。予定より早く着いてしまったな。もう少し旅を楽しみたかったんだけどな。」
「俺も色々な話が出来てよかったです」
「俺らはまたここで仕入れてウィンストハイムへ戻るからよ。帰りは心配するな。この町ではオークションもあるから楽しめばいいさ。じゃあまた店に顔を出してくれよ。」
これでAランクの依頼は一つクリアだ。特に問題があった訳では無い。だが油断せず行こう。俺達はロイ達と別れベイルのギルドへ行き依頼の報告をする。ギルドはどこでも同じ形をしている。この町はガフ族が多い。大きさはウィンストハイムよりは小さいがそれでも非常に活気が溢れている。商人が多く。店の品物も充実している。近くに迷宮が多くあり、古代兵器や魔道具がオークションで売られると言うらしい。
「さてこれからどうしますか?」
「俺はちょっと観光したいなー。とりあえず宿でも取るか。」
「そうですね。私は何度かこの町に来たことがあるので少しは案内出来ますよ。」
今日はアイヴィに任せよう。俺達はベイルの宿屋グラングランに宿を取り荷物を置く。ウィンストハイムの店とは系列店らしい。まぁいい宿だから何も文句は無い。その後アイヴィと一緒にベイルの町を観光する事にした。
「ここがオークション会場ですね。30日毎にオークションが開かれています。次に開かれるのは、10日後ですね。」
「へ~、何が出品されるんですかね?」
「それはあっちの方でカタログを売ってますのでそれを買えばいいんですよ。」
「よし。買って来る!」
「洋平オークションに参加するつもりなんですか?」
「まぁ商品次第かな。俺も出品出来ればしたいしな。」
カタログによると今回出品される商品の目玉はまだ決まっていないらしい。オークションの三日前に出品の締め切りがあり。そこでカタログが完成するらしい。三日前なら誰でも出品出来るらしい。お金はかかるようだが。
「三日前なら依頼をやっても間に合うな。」
「洋平何をするつもりですか?」
「今回のオークションの目玉がないらしいからな。その目玉を創造してみようかなと」
「何を作るのですか?」
「それは内緒だ。アイヴィにも手伝って貰いたいから後で教えるよ。」
アイヴィの等身大フィギュア。これは間違いなく売れる。むしろ俺が買う。また妄想に花が咲くぜ。その後アイヴィと一緒にベイルの町を見て回り宿へ帰って就寝。ベットが2つあるがお互いにベットに横になって会話をするのは楽しい。




