ポケットドラゴン!
「ではセリーヌ様行ってまいります。」
「よーへーをしっかり守るんだにゃ」
「俺がアイヴィを守りたいけどまだ力及ばずだからな。」
「よーへーは自分をよく知っているのにゃ。それはいい才能なのにゃ。アイヴィをしっかりサポートするのにゃ」
「では行ってきます。」
「余り長くならないように帰ってくるのにゃ!別に無理にAランクに上がらなくてもいいのにゃ!何かあったらすぐ帰ってくるのにゃ!セクターでもいいのにゃ!一人でなんとかしないようにするのにゃ!」
「母さん行ってきます。」
俺はアイヴィの手を引き走り出した。後ろで誰が母さんにゃ~とか聞こえているが、俺にとってはそんな存在だ。ここまでよくしてくれるなんて、感謝が尽きない。
やっと念願のアイヴィと一緒の冒険の始まりだ。まずはAランクになる。それから4大巡業。そっからバイラフスに渡って、ライイラへ行き、元の世界へ帰る。世界一周だな。アイヴィと一緒なら楽しい事が待ってるに違いない。俺は期待に胸を膨らませ走り出した。
「アイヴィ」
「なんですか?」
「そういえばこの前の競争のやつって俺には何をさせるんだ?」
「ん~今は思いつかないので決まったら言いますよ」
これで願い事はお互いに一つづつか。これは先に願いを言った方が負けだな。俺はアイヴィとゆっくりと走りながら会話を楽しむ。だがあっと言う間にウィンストハイムの城門まで来てしまった。
「もう着いてしまいましたね。全然時間を感じませんでした。」
「俺もだ。楽しい時間は過ぎるのが早いと言うがこの事だな。」
「それで、これからどうしますか?」
「ん~今までは一人だったからな。いつもなら宿取ってギルド行ってセクターに絡んで商人の知り合いと会ってそのまま一緒に飲んで寝る流れかな。アイヴィはどこか行きたい所あるのか?」
「洋平の行きたい所が私の行きたい所です。」
嬉しい事言ってくれるじゃないか。それなら今日は俺がアイヴィをエスコートしよう。俺達はまずグラングランに行き部屋を取る。二人部屋だ。ダブルとツインと聞かれたが、一応ツインにしておいた。さすがにベット一つはまずい。セブンスネークが飛んでくる。その後はギルドへと向かう。ライラに事情を説明しセクターの部屋へと案内される。
「食らえ!胡椒爆弾!」
「うぉ!洋平止めろ!書類が~~~~」
ブリーズのおかげで部屋が散乱した。しょうがないから4人で片づける。
「すいません。以後気をつけます。」
「まぁいいさ。こんな書類はどうせゴミの山だ。分別がめんどくさかったから積み上げておいただけだ。おかげで大分処分出来た。それより、やっとアイヴィと一緒に依頼を受けれるのか?」
「うむ。これからはアイヴィと一緒に依頼を受ける!」
俺とセクターは無言で握手をした。アイヴィはほったらかしだがこれは男の世界だ。
「じゃあ俺が手続きをしてやろう。」
「ん?なんか手続きをしないとダメなのか?」
「あぁ、複数人で依頼を受けるには、パーティ登録をしないといけねぇ。この登録はいつでも解除出来るからな。ってこの説明受けなかったのか?」
「セリーヌが入ってきてごたごたしたからな」
「そういやそうだな。パーティ登録は俺がしてやる。パーティの名前はどうする?」
「名前決めれるのか。アイヴィどうする?」
「洋平が好きな名前でいいですよ」
ここはどうするべきか。アイヴィと俺だからな。アイヴィアイヴィアイヴィ・・・AIVI、IB、IV・・・イヴか。じゃあさしずめ俺はアダムか。アダムとイヴいいじゃないか!でもこれはずい・・・エデンの園。これも連想するからダメだ。俺が耐えられない。一旦アイヴィから離れよう。俺は創造師だ。クリエイターか。これでいいんじゃないか。
「じゃあクリエイターズで」
「なんだその名前は?」
「俺の居た世界で創造をクリエイトと呼び、創造師はクリエイター。その複数系だからクリエイターズだ。」
「私は創造師じゃありませんけど?」
「こまけぇこたぁいいんだよ」
「まぁ変な名前だがいいだろう。それで登録しておいてやる。二人共プレートを貸してくれ。」
俺とアイヴィのプレートに所属クリエイターズというのが記載された。
「依頼は受けていくか?」
「依頼は当てがあるんで大丈夫です。」
「ほう指名依頼か。まぁBランクなら問題はねぇな。じゃあ頑張って来い。」
俺達はギルドを後にし、ロイの元へと向かう。いつも歩いている道だけど、アイヴィが居るとだいぶ違うな。世界がお花畑に見えるぜ。
「うぃ~っす」
「おぉ洋平じゃないか!よく来てくれたな。またしばらくこっちにいるんだろ?」
「そうですね。またお世話になります。」
「俺とお前の仲じゃねぇか。気にすんなって。ところで隣に居る綺麗な姐さんは彼女か?」
「そうです。俺のかのj。いてぇ・・・」
アイヴィに叩かれた。
「初めまして。洋平と一緒にセリーヌ様の元で修行をしております。アイヴィ・オールエンと申します。洋平がお世話になっております。」
「おぉ!セリーヌ様の弟子か!洋平は本当にセリーヌ様の弟子だったんだな。俺はロイ・ベルナルド。この町で主に露店を開いている。洋平には俺の方が世話になってると言いたいくらいだぜ。」
「とりあえずお土産は今日の飲み会でみんなに渡しますね。」
「おぉ!彼女っと失礼。アイヴィさんが居るのにいいのかい?」
「私が場違いにならなければいいのですけど?」
「そうか・・・じゃあちょこっとだけお邪魔するよ。」
「そうだな。わかった。じゃあ今日はもう店じまいだ。みんなに洋平が来ることを伝えないと俺がまた怒られちまうからな。んじゃまたいつもの店で待ってるぜ」
ロイはさっさと露店をたたみ始めた。
「すいません。私が居たばっかりに」
「いや、俺も配慮が足りなかった。まぁ俺もロイさんと飲むのも楽しいけど、アイヴィと居る方が楽しいからな。」
その後、適当に露店を回りながら色々な物を買いそろえる。お金はセリーヌから金貨を一枚づつ貰った。まぁお小遣いらしい。Aランクの依頼の準備はしっかりするようにとの事だ。買い物を済ませ先にローズンの酒場へ向かう。
「こんばんは~」
「あーすまねぇまだ開店前なんだ。もう少し待っててくれないか。ってお前か。どうしたんだ?」
「今日ちょっとここで食事でも取ろうと思ったんですけど、新作の料理を思いついたのでちょっと厨房を貸していただけないかな~と?」
「あぁ、お前さん料理もするのか。てっきり後ろの彼女がすると思ってたんだがな。俺とお前さんも同じカカア天下か。お互い苦労するな。こっちだ。ついてきな。」
アイヴィごめんて。あとで説明しとくから、そんなに顔を赤くしなさんな。
俺はマスターに案内され厨房の一角を借りた。作るのは茶碗蒸しだ。マスターにも食べてもらいたいから沢山作ろう。アイヴィも手伝ってくれてるのでそんなに大変な作業では無い。酒場が開店したのか徐々に店内が騒がしくなっている。ちらっと覗いてみたらもうロイさん達は揃っている。みんなで入口を見ている。そんなに俺が待ち遠しいのか。茶碗蒸しはセリーヌにせがまれて結構な頻度で作ったからな。これはもう慣れた。味付けもバッチリだ。中にキノコに近い物や鶏肉っぽい物や栗のような物も入れている。俺とアイヴィでまず試食する。
「う~ん。うまいな」
「やっぱりこれは凄く美味しいですよ。触感がたまりません。」
「お?出来たのかい?それはなんだ?見たことが無いが?」
「マスターの分も作っておきましたよ。おひとつどうぞ」
「お!俺は味には五月蠅いぞ。なんてったってこの店の料理長だからな」
いちいちフラグを立てなくてもいいよ。
「ん!なんだこれは!どうなってやがる!このプルプルとした触感。それに口の中に広がる甘さ。こんなのは食べたことが無い!中の具材も素晴らしい。このプルプルに加えて違う触感を挟む事でまたプルプルが際立つ!」
べた褒めじゃねーか。俺はもう一つマスターに渡す。またしても絶賛の声だ。すると後ろからマスターを呼ぶ声がした。料理が滞っているらしい。俺はマスターを呼んだ女性のウエイトレスを呼び茶碗蒸しをあげた。いい反応だ。
「あとで作り方教えますのでとりあえず仕事に戻りましょう」
「おぉう。そうだな。じゃあ今日の飯はサービスだ。好きなだけ食って帰ってくれ。」
俺はトレイに茶碗蒸しを5つ乗せアイヴィと一緒にホールへ出る。向かうはロイさんの元だ。
「お待たせしました。本日のスペシャルメニューでございます。」
「あぁ?そんなん頼んでねーぞ!それより俺達は忙しいんだっておい洋平じゃないか!」
「お久しぶりです皆さん。先日はお世話になりました。これは僅かながらお礼です。」
俺は全員に茶碗蒸しを配る。その器は全部俺が作成し、それぞれの名前を入れてあるのだ。ついでに新作のフィギュアもみんなに渡す。
「冷めないうちに食べましょう。」
俺とアイヴィも席に座り、みんなで茶碗蒸しを食べる。フィギュアでそれどころじゃないみたいだが一口食べると皆表情が変わる。
「この料理は誰が作ったんだ?そこの洋平の奥さんか?」
「これは俺が作ったんだ。後彼女は妻じゃない。同じセリーヌの弟子のアイヴィだ」
「まじかよ。その髪飾りを見た時にもしやと思ったんだがな。」
「というかこれ物凄く美味しいですね。」
「可愛いです~」
「彼女いるのか~残念・・・」
みんなそれぞれだな。まぁいいやアイヴィが居ずらくなる前に退散だ。
「では俺達はそこらへんで食事してますので、何かあったら来てください。」
「わかった。後で一人づつプレゼント持ってくからよ。前回の代金の代わりだ。」
あぁ、忘れてた。そういやガチャガチャ200個づつあげたんだったな。俺とアイヴィは一度厨房に戻り荷物と茶碗蒸しを持って空いているテーブルにつく。途中でバル達を見つけたので茶碗蒸しを一個づつあげた。歓喜の声を上げているのが微笑ましい。なつき度が上がったな。
「あの冒険者の方達も洋平の知り合いですか?」
「まぁ知り合いっていうか下僕というか。前に話した事あるけど、ギルドで初日に絡んできた連中ですよ。それから色々お世話になって今ではいい友達です」
「そうなのですね。洋平の友達なら私も友達になりたいですね」
アイヴィと談笑していると料理が運ばれてきた。尋常じゃない量だ。マスターがまぁ閉店までゆっくりしてくれと言うのだが、さすがにこの量は多い。
「さすがに二人では食べきれませんね。せっかくなんでみんな集まって一緒に食べますか?」
「アイヴィはそれでもいいのか?」
「私も洋平がこれまでしてきたことに興味がありますから皆さんと話してみたいのですよ」
「そうか。じゃあみんなで楽しくやるか」
俺は立ち上がり店内を見渡す。バル達とロイ達が全員俺を見ている。他の客は少ない。
「我が親友達よ!ここに集まったのも何かの縁であろう。今日はマスターのおごりである。こっちへ来て皆で楽しくやろうではないか!」
結局全員で食べる事になった。楽しい。アイヴィも楽しそうで何よりだ。女子は固まってひそひそ話をしているが、俺達男は下品な言葉を投げ合っているしな。茶碗蒸しの取り合い大会とか、誰が俺を一番自慢出来るか大会とか無意味だがそれが楽しい。実際にこの場にいる人でなければ伝わらないだろう。そして商人達からプレゼントが渡される事になった。
「俺は以前、洋平の剣を見たがかなり傷んでいたな。だから俺は剣を持ってきた。見よ!俺が洋平の為だけに作ったこの剣を!世界に一本しか無いぞ!名付けてバーンソードだ。」
「ありがとうございますバーンさん。」
名前はかっこいいんだが、自分の名前って、しかもバーンって火のイメージだけどこれは石が出るのか。意味がわからん使いづらい。
「僕は盾だ。前にあげたやつは使いにくそうだから。今回はちゃんとした盾だ。普通のバックラーだけどよかったら使ってください。」
「ハクさんありがとうございます。あの盾はちょっと使いにくくてセリーヌに取られちゃいました」
普通の盾。一番使える気がする。普通の盾でも結構高いんだよ。
「私はこれです。え~っとなんだっけ?そうそうこれはアーティと言う布で薄くて丈夫なんですよ。決して破れる事が無い布で鎧の下地に張り付けても効果があります。たぶん」
「シエルさんありがとう」
アイヴィの補足によるとこのアーティという布は黒角龍の皮膚から作られる素材で相当貴重な物だろうだ。
「じゃあ私だね。私はちょっと言いにくいんだけど媚薬だ。ちなみに私のスペシャルブレンドだ。これを使えばどんな異性もイチコロさ。奥さんと二人っきりの時に使うといいさ。」
「ディルマ・・・まぁありがたく貰っときます。」
やめてアイヴィ視線が痛い。
「よっしゃ。最後は俺だ!見て驚くなよ!これだ!ポケットドラゴン!!」
普通の灰色の石だなサイズは小さい。そこらへんにある石ころと同じ感じだ。アイヴィと商人達は驚く様な声を上げている。なになに気になる。
「それはなんですか?」
「おや?セリーヌ様の弟子がこれを知らないと言うのか。残念だ。じゃあこれはお預けだな。」
アイヴィの耳打ちだ。なるほど。やばい!超欲しい!!
「それをくれるのか!?」
「どーしよっかなー。まぁあげるつもりなんだけどな。ほらよ」
ポケットドラゴン。古代兵器でランクはAAA。基本的にAランクはAしかないが時に例外が存在する。戦闘面で見ればランクはCがいいところだろう。だが職人から見ればランクはSSそんな物がAAやAAAと表記される。この効果は石を無限に作り出すことが出来る。サイズも様々だ。街中で発動させたりしてはいけないが。いくらでも石を作り出せる。もちろん魔力は消費するが、俺には関係無い!これでペンダントとはおさらば出来る。
「大事に使ってくれよ。ちなみにこれは報酬の前払いって事にしといてくれ。」
「はい。ありがとうございます。報酬と言うのは例の件ですね」
「そうだ。例のやつだ。明日には出すから昼頃行ってくれ。」
「はい。例のやつを楽しみにしてたんですよ。」
俺とロイだけの秘密に他の商人が食って掛かった。バル達も乗っかる。もうぐちゃぐちゃだ。いつの間にかマスターがアイヴィに作り方を教わっていた。しょうがないからお金を少し落としていくか。店をぐちゃぐちゃにし、マスターに盛大に笑われ、楽しい一日が終わった。




