特訓開始!!
「洋平。見るのでは無く感じるのです!」
「俺はアイヴィみたいに天才じゃねーよ!」
「では背中に目をつけるのです!」
「無理だろそんなこと!」
「物事を客観的に判断するのです!」
「難しい事ばっか言いやがって!」
「窮地にこそ、冷静になって物事を判断するのです。今自分に何が出来るのかを。周りをよく見て全体を掌握するんです。今自分がすべき事を考えれば、自ずと私の考えていることもわかるでしょう。」
俺はアイヴィと絶賛訓練中だ。最近のアイヴィの強さは増してきている。剣に鋭さがある。前までは魔術を使わない状態で特訓をしていたが、今のアイヴィは風に乗って物凄いスピードで俺に攻撃をしている。アイヴィの説教が止まらない。
「そんな事じゃいつまでも私を守れませんよ!」
「くそう・・・」
「攻撃には呼吸がありますからそれを見極めるのです。その人が得意とする技は自信がありますから何度でも使ってきますよ。その隙を見つければ攻撃の機会は増えます。」
「なるほど。相手の得意な技を見極めて隙を探すのか。」
「はい。まだまだ行きますよ!全体を見るのです!足が止まってますよ!常に動かないと的にしかなりませんよ。足があるんですから動いてください!!」
「最近きつくないか?」
「セリーヌ様に言われましたからね!しっかり洋平は鍛えます!今で7割位の力は出してますよ」
「まだ3割あるのかよ。」
「一瞬だけ全力で行きますよ。奥義『燕』!」
俺の体を風魔術が自由を奪い、アイヴィの剣が物凄い速さで斬りつけられる。でも実際には木刀だから斬られてはいない。殴られているんだ。
「ぐはっ・・・」
ここまで行くのか・・・。無理っぽそうだな。
「アイヴィひどいにゃ。ちょっとやり過ぎでは無いかにゃ?」
「いいえ。まだまだです。はい洋平立って!続きをやりますよ!」
「せめて回復を・・・」
「自分でやってください!行きますよ!奥義『飛燕』!」
俺の体を風の刃が斬りつけ、刃と共にアイヴィの剣が俺を斬る。風の刃によって宙に投げ出され、高く空中から地面に叩き付けられる。俺はアイヴィの攻撃を甘んじて受けよう!!アイヴィとの特訓がきつくなればなるほど、夜にアイヴィが俺を心配して部屋にやってきて甘えさせてくれる。これが楽しみだから俺は甘んじて受けようぞ!!
アイヴィとの連携もなかなか上手くいかない。俺とアイヴィでは力に差があり過ぎる。6割程で俺と互角らしいが、それではセリーヌに決定打は与えられない。
「よーへーアイヴィの動きを見るんじゃないのにゃ!感じるのにゃ!」
「だからそれが出来たら苦労しないと!」
「アイヴィの動きを全て頭に叩き込むのにゃ!!」
「俺の頭の中はアイヴィでもう一杯だ!」
ユニゾン。シンクロ。こんなん簡単にできねーよ。フュージョンだって力を合わせないと出来ないだろうが。まぁアイヴィが力を抑えても俺がダメなんだが・・・
「ちょっと休憩にゃ。もう一度二人で話し合うにゃ。」
「洋平。もっと全体を見て動かないとダメですよ」
「う~む。難しいな。アイヴィは俺の動きがわかるのか?」
「私には手に取るようにわかりますよ。洋平は単純ですから。」
「そうか・・・まぁ俺の出せる技は少ないからな。」
「そうゆう事では無くて。洋平は相手がちょっと下がって間合いを取る時にしか攻撃しないんですよ。」
「そうなのか。いつも防戦一方だからなぁ。アイヴィは色々技持ってるからな。俺は覚えきれないよ。」
「私も単純ですよ。相手に合わせているだけです。その時その時の最善の一手を出しているだけですよ。」
「無駄が無いと言う事か。」
アイヴィは強い。動きに無駄が無いのだ。攻撃も常に最小限の動きで回避するし、攻撃も最短を行く。相手の攻撃に合わせた最善の一手か。相手の攻撃が見えればな・・・。てか俺は攻撃見えるな。体が付いていかないだけで。逆順処理だな。今はアイヴィの攻撃を受けてから俺が動いているから、それを想像する。相手の攻撃を見てからアイヴィがどう動くのか想像する。そうすれば一手早くなるな。
「そろそろいいかにゃ。」
「はい。洋平行きますよ!」
「お、おう。ちょっと頑張るわ。」
「ちょっとじゃなくて全力で頑張ってください。」
セリーヌは剣を持つ。セリーヌは色々な武器を使って俺に経験を積ませてくれている。今日は剣だ。剣が縦に振られ、アイヴィが体を右に少しずらしそれを躱す。ということは俺は左からいけばいいのか。
「にゃ」
剣が横薙ぎで振られる。アイヴィはそれをしゃがむか飛ぶか後ろに下がるか。この軌道はしゃがむな。なら俺は先に飛んで攻撃をする。
「にゃにゃ」
剣が縦に振られる。これは右によけるから俺はさっきと同じ左だな。
「おっと・・・すまん」
アイヴィが左に避けてきてぶつかってしまった。あの軌道は左なのか。なるほど。今度は剣が下から来る。俺がアイヴィより先に左に動けばアイヴィは右から来るな。
「にゃにゃにゃ」
次はなんだ。もうちょいで何かを掴めそうだ。今度は袈裟か左上から右下へ。アイヴィは躱しやすい左だな。なら俺はアイヴィの隙間を開けてさらに左から。
「にゃ!」
当たった!セリーヌはアイヴィの攻撃を剣で受け止めたが、俺の攻撃はまともに当たった。
「ここまでにゃ。よーへー何か掴んだみたいだにゃ。さっきまでとは別人だにゃ。」
「アイヴィの動きを創造したんですよ。」
「私も凄くやりやすかったです。洋平凄いですね。」
「まぁ一日中アイヴィの事を考えていたおかげだな。」
「それも一理あるのにゃ・・・。」
セリーヌが悔しそうだ。この顔親父にも見せてあげたいぜ。そしてあっと言う間に3週間が過ぎて行った。




