盗賊の噂
セリーヌの光の回復魔術を受けて体の痛みが無くなったので下へ降りる。アイヴィへ看病してくれたお礼をしないといけない。
「アイヴィ」
アイヴィは疲れていたのか、食事にも手を付けずにテーブルに突っ伏して眠っている。俺はアイヴィの隣に座り、そっと手を握る。
「洋平・・・」
「ご心配をおかけしました。もう大丈夫です。看病してくれたみたいでありがとうございました。」
また泣き出してしまった。とりあえず手を握っておくか。セリーヌの目の前だからな。あまり抱き付くのもよくないだろう・・・たぶん。
「アイヴィとりあえず食事にするのにゃ。」
「俺も長い事眠っていたみたいだからお腹が空きましたね。アイヴィ一緒に食べよう。」
アイヴィは無言だ。どうしたアイヴィ。三人で食事を取り俺はアイヴィの手を引いて俺の部屋へ行く。セリーヌは空気を読んでくれて後片付けは任せるにゃとか言ってくれた。アイヴィはまだ無言だ。手を握る力はある。俺の事を心配したせいでこんな状況になったのだから俺がなんとかしないと。俺はアイヴィの手を繋ぎながらベットに一緒に座る。
「アイヴィ。心配させてすいませんでした。ずっとついてくれてたみたいでありがとうございます。」
何も言わない。ん~沈黙は嫌いじゃないんだけど、手を握られると恥ずかしいんだよな。
「セリーヌの試練も悪い事じゃなかったですよ。水の精霊に会えましたし」
アイヴィの目がちょっと開いた。この路線か。
「水の精霊って愛が好きみたいですね。俺が誰を好きなのかとかお見通しな感じだわ。今もきっと水の精霊が見てるんだろうな。」
「洋平・・・」
「はい。」
「心配しました。」
「お手数をおかけして申し訳ありません」
「洋平の事を考えると眠れなくなって、胸が苦しくて、今も隣にいるだけでふわふわしているんです。」
それは恋というやつだな。大丈夫だ。俺もだ。
「洋平が気を失ってから、私どうすることも出来なくて、セリーヌ様に強く当たったりしてしまいました。」
うむ。返す言葉が見つからない。この沈黙どうするべきか。
「アイヴィ。」
「はい。」
「今日一緒にここで寝ないか?」
「・・・はい」
今の俺がアイヴィにしてやれる事と言えば一緒に居てやること位しか思いつかない。決してやましい事をするつもりは無い。ベットは狭いから密着度は高い。妄想を膨らませて寝るとしよう。
朝、目が覚めるとアイヴィの姿は無かった。下から朝食の臭いがしてくる。ベットにはアイヴィの臭いがする。俺は下へと降りる。
「おはようございます」
「洋平おはようございます。」
「寝坊助さん、おはようにゃ。昨晩はお楽しみだったようにゃ。」
「「何もしてません!!」」
「アイヴィも元気になったようでよかったのにゃ。まぁセブンスネークが動かなかったのだから心配してないのにゃ。」
まじかよ。一線を越えたら俺は死ぬのか。
「ところで俺の試練の結果はどうなんだ?不合格か?」
「不合格にゃ。よーへーはもっと僕の元で力をつけるのにゃ」
「マジか・・・じゃあまた3週間ののち依頼を受けて来る感じか?」
「そうだにゃ。まぁ実力は認めてるからAランクになったらもう何も言わないのにゃ。」
突然家のドアが勢いよく開かれた
「おぉ!やっと起きたかバカ息子め!心配させやがって。」
「親父じゃねぇか。心配させちまってすまねぇな。」
セクターがやってきた。どうやら俺が目覚めるまでたまにここに来て朝食を食べているんだと。
「そういや前にも話したが盗賊がこの近くで目撃されたようだ。後サイモンが死んだ。」
「にゃに!!あのサイモンにゃ!?」
「そうだ。どうやら盗賊の仕業らしい。噂では盗賊の前では魔術が使えなくなるという噂もある。」
「えっとサイモンさんってのは誰なんですか?」
「セリーヌ様と同じ古代魔術師の方ですよ。盗賊ですか・・・」
「サイモンはそう簡単には死なないにゃ。サイモンもポズの毒手というSSの古代兵器を持っているにゃ。それに弓の名手でもあったのにゃ。」
「だから盗賊はポズの毒手を持っている可能性がある。姐さんも十分に気を付けるんだな。一応結界は貼ってあるからここに来たことのあるやつじゃないと見つけられないと思うが、用心に越したことはねぇ。洋平も盗賊に出会ったら戦おうとは思わず迷わず逃げるんだぞ。」
「わかりました。胡椒でも巻いて逃げますよ。」
「んじゃ俺は帰るぜ。洋平の無事を確認したからな。またギルドへ来た時は顔を出してくれ。」
セクターは嵐のように帰って行った。もちろん朝食は食べた。
「なんか物騒ですね。」
「にゃ~・・・」
アイヴィをこっちに引き寄せ耳打ちする
「あ~一人で依頼受けた時に盗賊に襲われると怖いな~」
「そうですね~。盗賊がうろついているなら、一人で居るのは絶好のカモですね~」
二人でチラチラとセリーヌを見る
「じゃあ依頼を受けなければいいだけなのにゃ!その間特訓に専念出来るのにゃ!!」
「セリーヌ様お願いします。洋平と一緒に依頼を受ける事を許可してください。先日の競争の約束を守ってください!リソワ様の事を話すか。一緒に行くことを許可するか。二つに一つです!」
「そうだそうだーいつまでも逃げんじゃねー」
セリーヌが手元のコップを俺に投げてきた。あぶねーな。まだ病み上がりだぞ。
「にゃ~・・・もう好きにすればいいにゃ。ただし!3週間毎日特訓をしてからにゃ!これ以上は譲れないのにゃ~!」
「セリーヌ様ありがとうございます!」
「セリーヌマジ天使!!」
これで俺とアイヴィは一緒に依頼を受けられる。ようやくだ。まだまだ俺の力は足りないけど、いつかアイヴィを守れる位に強くなってみせる。
「そういえば、セクターが結界がどうのこうの言ってたんですが、この家は普通の人には見えないんですか?」
「この家はセリーヌ様とセクター様と私が認めた人以外は認識することが出来ない結界が常に貼ってあります。その上でさらに結界を貼りなおしたので盗賊には見つける事は難しいと思います。」
「今はよーへーも弟子だから洋平が認めた人も入ってくることが出来るのにゃ。あまり変な人は連れて来るんじゃないにゃ」
ロイさんが今度来たいって言ってたからな。まぁロイさん位ならいいだろう。まぁこれからはアイヴィも一緒だからアイヴィにロイさんを見てもらおう。
「そういえば俺とアイヴィの他には弟子って居ないんですか?」
「それは・・・」
「一人だけ居るのにゃ。」
「じゃあその人も入って来れるんですね。」
「にゃ~・・・」
あれ?俺なんか変な事言ったか?もしかして禁句だったか。俺は恐る恐る聞いてみる
「もし、その人が盗賊だった場合・・・?」
「入って来れるにゃ。」
「でもカル兄さんはそんな事する人じゃありません!!」
カルって言う名前なのか。どんな人なんだろう
「アイヴィは騙されやすいのにゃ。よーへーがしっかりついてサポートするのにゃ」
「わかりました。一時も離れずアイヴィの御傍に着く事を誓います!」
セリーヌに殴られた。まぁいいさ。3週間の辛抱だ。やってやるぜ。その道が茨の道でも俺は最後まで進んでやる!




