表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/110

水の精霊現る

決戦当日、俺は五月蠅い猫の声で目を覚ます。時刻は昼になろうかという所だろう。昨日の作戦会議通りまずは焦らす作戦だ。冷静さを欠くのが目的だ。俺は戦いの準備を済ませ家を出る。


「待たせたな小次郎!!」

「おっそいのにゃ!!いつまで待たせるつもりなのにゃ!!さっさと始めるのにゃ!!」

「いやー昨日創造が捗りましてね。新作が出来たんですよ。よかったら見てください。」

「そういってまた中から変な物が出るのにゃ。」

「そんな事はしませんよ。どーぞ。」


俺はカプセルをセリーヌの足元まで転がす。セリーヌも自分で拾うのだから警戒心が薄そうだ。


「左に回して開けるんですよ」

「結構堅いのにゃ」


俺は左手を後ろに隠しペンダントを握りインスタントオンと念じる。次の瞬間セリーヌがカプセルを開け中から胡椒が出て来る。それを俺の風が舞わせる。俺は走りながら接近し次の玉を準備する。


「うにゃ!!」

「次だ食らえ!」


俺はそのまま次の石をセリーヌに向かって投げる。ガマの油が入ったガマボールだ。ガマボールがセリーヌの顔面にヒットし油をかける


「インスタントパンチ!」


俺は右手の火のペンダントを握りそのまま火を纏った拳でセリーヌの顔面を殴る。ここまではセクターと戦った時と同じだ。セクターいわくセリーヌは嗅覚が発達しているので効果が高いはずだとの事だ。セリーヌは俺のパンチをまともに食らい位5メートル程吹っ飛んだ。まぁ対してダメージを与えてはいないだろうが。まずは先制の一撃だ。


「これが作戦なのかにゃ?」


セリーヌが水魔術で体を覆い火を消しながら聞いてくる。


「ここまではセクターと同じ戦い方です。こっからが本番ですよ」

「まぁ発想はいいのにゃ。ちょっと褒めるのにゃ」


冷静だな。もっと怒ってくれてもいいんだが。さすがは勇者様。器が大きい事で。


「んじゃこっちからも攻めるのにゃ。真面目にやらないと死ぬから覚悟するのにゃ。」


セリーヌが飛んでくる。やはり早いな。他の人とは桁が違うが、今日の俺は強い。俺はセクターから借りたウィングブーツで移動速度が跳ね上がっているのだ。セリーヌの動きにはギリギリついていける。セリーヌがツメで攻撃してくるのを俺は紙一重で躱しながらたまに石を投げる。それをセリーヌは確実に避けるが、次への布石だ。石を投げて当てれるとは思わないさ。条件次第だがな。


「なかなか早いのにゃ。まぁ魔道具の力を借りてるとしてもいい動きだにゃ。」

「じゃあアイヴィと一緒に依頼を受ける事を許可してくれますか?」

「まだまだよーへーの力を見てないのにゃ。ちょっとギアを上げるからしっかりついてくるのにゃ」


まだ早くなるのかよ。俺もギリギリで躱すが時々服が破かれる。俺は石を取り出し地面に思いっきり投げる。赤い粉が舞う。


「うにゃ~」


今度は唐辛子ボールだ。実際には唐辛子ではなく火蜥蜴の鱗を削ったやつらしい。これはアイヴィからもらった。この機会を逃すはずは無く、俺はラッシュする。セリーヌを吹っ飛ばし、後ろの木に激突させる。俺は追い打ちをかけるべくセリーヌに向かう。飛び蹴りをしようとしたが水の壁が出現して俺を弾き返す。俺が後ろに飛んでいると、水の中からセリーヌが飛び出してくる。空中ではさすがに身動きが取れないので、胸にあるペンダントを握りしめインスタントと念じる。ロックストーンの効果で2メートル程の岩が俺とセリーヌの間に現れセリーヌが岩に激突する。が岩をすぐに粉々にしてしまうが突撃の足は止まった。俺は再びセリーヌと対峙する。


「魔道具の使い方は悪く無いのにゃ。戦いのセンスはいい感じなのにゃ。」

「もうそろそろ手詰まりですよ。」

「剣はつかわにゃいのか?」

「剣を使ってもセリーヌには勝てないからな」

「まぁそんな事も言わず使ってみるのにゃ。別に勝てなくても許可は出すにゃ。あくまで実力を見るだけなのにゃ。」


殺すとか言ってたくせに。まぁさすがは勇者様。器のデカさに感服致します。俺はアイヴィから木刀を貰いセリーヌに向かい走り出す。今度はセリーヌは完全に受けてくれているので、俺は全力でアイヴィに教えてもらった攻撃を繰り出す。


「悪くにゃいのにゃ。だがまだまだアイヴィには及ばないのにゃ」

「別にアイヴィに勝とうとは思ってねーよ」

「強くなれとあいつに言われなかったのかにゃ?」

「あいつってリソワ様か?」

「そうにゃ」

「なんでそれを知っている!」

「内緒だにゃ。男なら女を守れるくらい強くないとダメなのにゃ!!」


セリーヌが俺の腹を思いっきり蹴飛ばす。俺は10メートル位吹っ飛んでうつ伏せに倒れる。セリーヌがゆっくりと歩いてきて俺を見下ろす。


「よーへー」


俺は腹の痛みで声が出せない。顔をかろうじて上げセリーヌを見上げる。


「よーへーは強くなったのにゃ。もう実力的にはAランクはあるのにゃ。でもまだまだにゃ。もっと強くなるのにゃ。魔術が使えないのによくやってきたのにゃ。今になってその精神力が惜しいのにゃ。魔術が使えればきっとアイヴィにも勝てると言うのに。アイヴィを守れる位強くなるのにゃ。」


ダメか。やはりまだまだ力及ばずって事か。俺なりに頑張ってきたつもりなんだけどな。


「立つのにゃ。最後の試練を与えるのにゃ!これに耐えれたらアイヴィと一緒に依頼を受けることを許可するのにゃ!」


俺はその言葉に期待を覚え。震える体にムチを打ち、立ち上がる。


「それでアイヴィと一緒に居られるなら、俺はどんな試練も耐えて見せる!」


セリーヌは後ろに下がり詠唱を始める


「水の精霊よ。古の勇者が一人、セリーヌ・アルベルト・D・ガガが命じる。彼の者に水の試練を。今一度、封印を解きその力を見せよ。水龍」


セリーヌが詠唱を終えると、後ろに水の龍が現れる。顔が俺を向いている。とりあえずデカい。


「よーへーの力を見せて見るのにゃ。半端な気持ちだと死ぬのにゃ!」

「姐さんやり過ぎだ!!」

「セリーヌ様止めてください!洋平が死んでしまいます!」


二人が俺の前に立ちはだかる。俺は二人を押しのけて前に出る。


「これが試練だというのなら、何か俺を試すものがあるのだろう。大丈夫だ。セリーヌ!来い!!」

「いい心がけだにゃ!その身に刻め!オ・パーグノ!」


セリーヌの声と共に水の龍が俺に向かって来る。ゆっくりだ。俺は腰を落とし、両手を顔の前でクロスさせ万全の体制と取る。次の瞬間、龍が物凄い速さで俺を呑み込み。簡単に地面から引きはがされてしまう。俺は水の中をぐるぐると回っている感じがしてふと止まる。


白い世界だ。なんだか宙に浮いているようなふわふわした感覚だ。どちらが上か下かもわからない。そんな中声が聞こえる。


「やっと会えましたね」


声の主を探すと誰も居ない。


「私は水の精霊ウンディーネ。」

「俺は死んだのか?」

「いいえまだです。」

「じゃあこれから死ぬのか?」

「それは貴方次第です。」


意味がわからない。ここはどこだ。死んで居ないということは、これが水の試練という事なのか


「愛っていいですね」

「は?・・・」

「ずっと見ていましたよ。貴方のアイヴィを思う気持ち。真っ直ぐでいいですね」

「はぁ」

「アイヴィが好きですか?」

「そりゃあもちろん!」

「どれくらい?」

「世界で一番!」

「貴方の居た世界も含めて?」

「当然だ。もうアイヴィが居ない世界なんて考えられん!」

「でも貴方は貴方の世界に帰るのですよね?」

「そうだ。アイヴィと一緒に帰る!」

「それは出来ません。」

「何故だ!?」

「アイヴィはこの世界で生きてますから」

「言っている意味がわからん」


水の精霊かなんだか知らんが俺はアイヴィと一緒に俺の世界に帰る!これは確定事項だ。


「全ての精霊に会えば真実に辿りつきますよ。」

「まぁ元の世界に帰るにはそうするしかないだろうな。」


俺はセリーヌから借りた書物等で元の世界に帰る方法についてはだいたいの検討がついている。長い道のりになるのは間違いない。だが俺はアイヴィと一緒ならやっていける自信がある。


「貴方が私の封印を解くのをお待ちしております。」

「封印ってあの問題の事か?」

「そうです。あの封印が解ければ貴方に私の力を分け与える事が出来ましょう。」

「そりゃあ力は欲しいけどさ、あの問題はちょっと難しすぎやしないか?俺も封印が解きたいからさ、もうちょっと問題を簡単にしてくれないかな?」

「今の私の力では問題を変えることは出来ません」

「そうなのか・・・まぁ頑張ってみるよ。」

「では期待して待ちましょう。私にもっと貴方の愛を見せてください。」


最後の声がエコーになって消える。そして俺は意識が遠くなる・・・



早くチート無双がしたい・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ