Bランク昇段試験
ロイ達から色々貰って次の日、俺は一日中創造に励んだ。あまり外に出るのはよくない。ロイからペンダントをごっそり貰ったからな。沢山作ってやる。明日にはロック鳥の卵が手に入るのでそれを報告して晴れてBランクだ。あとは買い物をして帰れば完璧だな。もっと観光していたい気もするが、アイヴィと一緒がいい・・・
翌日俺はグラングランから荷車を借りロイの所へ向かう。荷車には約1000個のガチャガチャがある。ロイの姿を確認した所でロイがこちらに気づき、口を開けてポカーンとしている。俺はわざとロイを無視して目の前を通り過ぎる。
「おぉっっと!ちょい待てよ!どこ行くんだ!?」
「冗談ですよ。これここに置いておくんで好きに使ってください。」
「洋平・・・こんなにどうすんだよ・・・」
「さぁ?そこはロイさんの腕の見せ所じゃないんですか?無理ならバーンさんとかの所にでも持って行きますけど?ハクさんならうまい事売ってくれそうな気がするな~」
「ふ~む・・・いや売ってもいいんだがな。と言うかたぶん完売するだろう。だがこんなに沢山あっても売るのがちょっと大変だな。」
「そうですね。俺も作りすぎたと思います。じゃあ5人で200個位づつ分けるって感じでいいですかね?」
「あぁそれならみんな喜ぶだろうよ。俺ばっかり洋平のおこぼれにあずかる訳にもいかないと思っててな。みんなの視線が痛いんだよ。まぁそれが好きなんだがな。」
と言う事で俺は5人に200個づつガチャガチャを渡してきた。みんなそれぞれの売り方を考えるらしく、誰が一番高く売れたかを競うという流れだ。その売上でまた俺にプレゼントを各々用意するという事で話はついたらしい。今の俺は特にお金に困ってないしな。ということで少し市場をぶらぶらしながら露店街を抜け商業区へ向かう。前にバルに案内されていたので裏店通りの位置は把握しているのだが、それ以上に商業区はなかなかに面白い場所だ。武器や防具はもちろんの事。魔道具以外にも魔道具になっていない剣も売っている。俺は今つけている剣は最初にアイヴィにもらった物なのだが、そろそろ刃こぼれしていて、買い替えた方がいいらしい。愛着があってよかったのだがトロルとの戦闘で相当消費したみたいだ。剣が戦闘中に折れると言うのは怖いし、折りたく無い。部屋にずっと飾っておきたい。と言う事で剣を見に来たのだ。バーンの店で買ってもいいのだが、あそこの店はユニークな品が多くて初心者向けのが無いのだ。俺はまだまだ剣には自信が無いので、安い剣があったら買うという感じだ。別に買わなくてもいいのだがな。まぁ冷やかしって感じだ。普通の武器屋に行ってみたいんだよ!!
「う~む・・・」
やはり魔道具じゃないと俺の目に適うやつは無いようだ。だが魔道具で剣を探すと高い。まぁ今回は見送るか。まぁ楽しかったから問題なし!時間も潰せたしな。昼じゃないとライラが出勤しないからそれまでの時間潰しにはちょうどよかった。俺は裏店に入りバルからもらった会員証を見せ、ロック鳥の卵を買いに来た。
「ロック鳥の卵は入りましたか?」
「先日バル様と一緒に来られた方ですね。はいちょうど今朝入荷しましたので品質には問題が無いと思います。」
「では買います。銀貨40枚でしたっけ?」
「はい。ですが今回は特別に銀貨30枚におまけさせて頂きます。」
「ありがとうございます。」
「ではまたのご来店お待ちしております。」
怪しい店なんだが、接客態度は素晴らしいな。怪しい店だから逆に信用を伺える。俺はロック鳥の卵を手に入れたのだが、この卵はデカい。目立つな。さっさとギルドに持って行こう。俺がギルドに入るとバル達が居た。俺は目で挨拶をした。なんかバル達はいつもここにいるな。だが今回はちょっとみんな真剣になにやら話し合っているみたいだ。まぁ真面目にやっているというのは本当なのだろう。俺はライラを見つけライラにロック鳥の卵を渡す。
「洋平様。お疲れ様です。確かに受け取りました。」
「今日も綺麗ですね。ライラさん」
「何言ってるんですか。早くプレートを出してください。」
「はいはい。」
「っともうBランクの昇段試験ですか?今すぐ申請しますよね?」
「はい。よろしくお願いします。今回もライラさんがやってくれるんですか?」
「えぇっと・・・マスターに昇段試験の試験官をやるのを禁止されていまして・・・」
「あぁ・・・なるほど。すいません」
「いいんですよ。自業自得ですから。私は洋平様への感謝が尽きませんよ。では昇段試験は明日の昼の鐘がなる時に行いますね。」
「わかりました。ところでセクターはまだ帰ってないんですか?」
「昨日帰って来て洋平様が来た事をお伝えしたんですが、ロック鳥の卵の依頼を受けているとわかったら残念そうにしてましたね。今は部屋に居ると思いますよ。」
「ちょっとお話したいんですけど大丈夫ですかね?」
「洋平様なら断る理由も無いと思いますよ。では案内しますのでこちらへどうぞ」
俺はライラに案内されてセクターの部屋の前まで来た。ライラが部屋をノックする
「マスター。洋平様がお見えになられました。」
「おぉ!入ってくれ」
ライラはお茶を入れて来ると言って、俺に微笑んで立ち去って行った。俺はドアを開けて中へと進む。
「久しぶりだな。どうだ元気でやってたか?」
「久しぶりだな。どうだ元気でやってたか?」
俺はオウム返しをしてセクターに向き合う
「相変わらずだな。今日はどうした?なんか用か?」
「親父の顔を見に来ただけだ。親父を倒してBランクに楽々上がる予定だったのに、忙しそうだな。」
「そうか。ちと最近立て込んでてな。依頼はどうだ?順調にやってるのか?ロック鳥の卵納品を受けたと聞いたが」
「それはさっき終わった。明日の昼に昇段試験を受けてBランクになって終了だ。」
「そうなのか。相変わらずだな。明日の昇段試験の相手は俺じゃないが。まぁ強い奴を用意しといてやるよ。」
「もっと楽に勝てる相手にしてくれよ」
「それはダメだ。お前はまだまだ経験が浅いからな。一度位つまづいた方がいい」
「もっと優しくしてくれてもいいじゃないか!」
「これが俺の優しさだ!受け止めろ!!」
俺とセクターが睨みあってるとライラがお茶を入れて入って来た
「あっ・・・すいません。ここに置いておきますね。」
ライラが申し訳なさそうに退散した。
「全くお前と会うといつもこれだな」
「全くだ。」
「Bランクは何の依頼を終わらせたんだ?」
「トロル討伐と家庭教師だ」
「あの家庭教師を終わらせたのか!すごいな。」
「まぁ俺は頭がいいからな」
「それもそうだな。がっはっは~」
その後もたわいもない話をして盛り上がった。やっぱり落ち着くな。まぁ共通の秘密を持ってるからな。お互いに剣は抜けない。
「じゃあ俺はそろそろ仕事に戻るから気を付けて帰るんだぞ」
「わかった。まぁギルドに来たら顔を出すよ。」
「昇段試験が終わったらすぐ帰るのか?」
「明日Bランクになれば一泊してから帰る予定だな。」
「そうかわかった。じゃあ明日は頑張れよ。」
俺は背中を向け手を振りながら部屋を出た。明日の相手はなんか強そうだからな。体調を万全にしていったほうがいい。今日は早く帰って寝るとしよう。
翌日グラングランで朝食を取り、町へと繰り出す。今日はBランクの昇段試験だからな。気合いを入れていかないと。石の中身を沢山買ってギルドへと向かう。
「こんにちは。昇段試験を受けに来たんですけど」
「はい。洋平様ですね。少々お待ちください」
ライラはこの時間に居ないので別のねーちゃんだ。ギルドの中にはバル達の姿が無くちょっと残念だ。
「お待たせしました。洋平様で全員揃いましたので、また訓練場へ行って待っていてください。間もなく試験官が参ります。」
俺はギルドを出て裏の訓練場へと入る。するとバル達5人が居た。
「元気だったか?」
「洋平様。お久しぶりでございます。となると洋平様もBランクの昇段試験ですか?」
「うむ。バルはBランクだよな?今日は誰が受けるんだ?」
「自分はBランクで今日は残りの4人がBランクへ挑戦します。」
「じゃあ俺を入れて5人って訳か。みんな頑張ろうぜ。」
俺がバル達と仲良く話していると今日の試験官らしき人が現れる。青い髪のエルフ男だ。その後ろからライラも着いてくる。まぁ試験の監督とかそんな感じなのだろう。ライラが俺に向かってウィンクをしてくれる。激励と受け取っておこう。
「ではこれよりBランクの昇段試験を始める。名前を呼ばれた者は前に出て来い。俺に一撃を加えれれば合格とする!」
一撃でいいのか。石投げて終了だな。楽勝楽勝。まずはノッポからだ。ノッポが弓を使い矢を放つ。その矢が風の魔術を受けて直角に曲がりエルフの肩をかすめた。合格らしい。まぁ俺から見てもいい動きをしてる。というかエルフは一歩も動いていない。その後もエルフは動かず、チビの剣を正面から受け、デブの剣も正面から受け、魔術師の魔法も正面から受けバルの仲間は全員合格した。動かないの?楽勝じゃん。
「では次!洋平!」
俺は名前を呼ばれて前で出る
「やっと本命のお出ましか。魔道具は禁止だ。石を投げるのも禁止だ。武器は後ろにあるのを自由に使い俺に一撃を加えよ。」
え?なんか今までと違うんだけど・・・。セクターめ。覚えてろ。
俺は石が入っているポーチを外し身軽になり後ろの木刀を取り構える。
「いつでもいいぞ。全力でお相手致す!」
ちょっと待て!全力ってオカシイだろ!セクターーーーー
エルフは木刀を持ち悠然と構えている。
「しゃーない。やるか。」
俺はクラウチングスタートのような体制を取る。両手を地面につけて、右手で剣を持ち、左手で砂を掴む。いくらでもやりようはあるんだよ!
一気に駆け出しアイヴィに教わった剣術で攻撃をする。だがエルフはそれをうまく受け流す。
「その剣術はエルフのモノだな。誰に教わったか知らんが、いい腕をしているな。」
「でも一撃入れないと合格にはならないんですよね?」
「その通りだ。さぁもっと楽しもうじゃないか!」
その後もエルフの男によって俺の剣は一撃を与えるに至らない。それどころか俺に指導までし始める。
「違う!小手返しはこうやるんだ!」
「いってー・・・」
「真剣ならお前の手首はもう切り落とされているぞ!もっと厳しく来い」
俺はその後も指導を受けつつ機会を待つ。左手の砂をいつ使うか。
「こっからは俺のオリジナルだ!」
俺は相手の攻撃を受け流しつつ左手の砂を相手の顔面に投げつけた。
「ぐあ!なんだこれは!」
「今だ!」
俺はエルフの腹に思いっきり剣を叩き込んだ。
「ぐふっ」
エルフの男が地面に倒れた。勝った!勝ったぞぉぉぉ!!
ライラの顔が変だ。卑怯と言わんばかりの顔をしてる。勝ちゃあいいんだよ。
バル達もコソコソと何かを言っている。
ライラがエルフの男に近寄り回復魔術を使う。
「卑怯者め」
「うるせーな。これが俺の戦い方だ!」
「俺は負けを認めんぞ!もう一度だ!!」
「やだよ。めんどくさい。俺の勝ちでいいですよね?ライラさん?」
「はい。見事一撃を与えましたので洋平様は合格です。」
「ライラ!なぜこの男の味方をする!!今のはどう見ても反則だろうが!!もう一度だ!」
もう一回やったら俺は勝てる気がしねーよ。石も使えないというお前の条件を飲んだんだから大人しくしてればいいのに。すると突然エルフが剣を振るい剣先から風の刃が出て来て俺を襲う。俺はとっさに剣で防御するが壁まで吹っ飛んでしまった。
「ほら。俺の方が強いじゃないか!もう一度勝負しろ!!」
「いってーな。大人しく負けを認めろよ!ライラさんが可愛そうじゃないか!」
「五月蠅い!黙れぇぇ~」
エルフが俺に向かって走ってくる。俺は壁に置いてあったポーチから胡椒カプセルを出そうとしてあるものに目が止まる。これだ!!
「まてぃ!!貴様この髪飾りが目に入らぬか!!」
「な!!!なぜそれを!!!貴様が持っている!!!!!」
「これはエルフの女王!リソワ様より預かった物である!俺に危害を加えるつもりならリソワ様を敵に回すと思え!!」
「なん・・・だと・・・」
「わかったか!わかったならば!控えおろ~!頭がたか~い!!!」
「ぐ・・・」
エルフが俺に跪く。これめっちゃ効果あるやん。やはり国宝レベルか。
「俺の勝ちでいいな。」
「俺の負けだ・・・。」
「よろしい。此度の無礼。水に流してあげようぞ。」
エルフと俺以外の目が何が起こったか理解出来ないようだ。まぁいいだろう。これで俺もBランクだ!!




