なんかくれ!!
バル達と別れてから俺は宿に帰り今後の作戦を考える。まず三日待ちロック鳥の卵を手に入れて報告してBランクの昇段試験の手続きをする。そしてBランクになり家に帰る。これが基本の流れ。三日後まではなるべく人目に付かない方がいいだろう。ギルドにも入らない方がいいな。もう一つでも依頼を受けておけばよかったな。あとはロイさん達の店回りをしないとな、これは結構優先順位は高い。人目を避けるために少し変装するか。というかそろそろ装備とか買った方がいいな。さすがにBランクでこんなみすぼらしいと俺が気持ちよくない。キャー洋平かっこいいーとかアイヴィに言われたいしな。そうとなれば明日と明後日は買い物の日だな。なるべく人目に付きたくはないがまぁ誰も俺の事は知らんだろう。
次の日俺はグラングランでパンケーキを食べてロイの所へ向かい他4人の場所を聞き出した。まず順番に行くか。
「こんにちは~」
「いらっしゃっ!!おぉ!おめぇさんか!やっと来たか!ちょっと待ってろ!!」
忙しい人だな。この大柄な人はバーンと言う名だ。体が傷だらけで元はAランクの冒険者だったのだが腰を痛めて引退したらしい。冒険者の気持ちがちゃんとわかっているので冒険者向けの魔道具を扱っている。武器や防具が主だ。まぁ8割が武器だな。
「待たせたな。ほら来店祝いだ。もらっとけ。」
剣を投げてきた。まぁ短剣なのだが、それでも30センチはする。
「これは!?」
「それは俺が作った魔道具だ。俺の完全オリジナルだからな。他の店じゃ売ってねえよ。ちょっと抜いてみな。」
鞘から抜いてみると刀身が緑色だ。
「どうゆう効果があるんですか?」
「それはだな・・・柔らかい物程切れ味が増す剣だ。」
「は?」
「柔らかい物を切る時には便利だぞ!」
「柔らかいとなんでも切れますよね?」
「その通りだ!」
「ちょっと使い道が思いつきません」
「俺もだ!!がっはっは~」
つまりあんま意味が無いって事か。でもスライムとか不定形な敵には効果があるんじゃないか。まぁゴースト系は無理っぽいか。スライム特攻剣だな。
「まぁジャングルとか草木が茂っていて邪魔な時は結構使えるモノだな」
なるほど!じゃあ結構便利じゃん。
「まぁ普通の剣でも同じ事は出来るんだがな・・・」
「そうか。でもなんかこうしっくり来ますね。ありがとうございます。」
「そうか。気に入ってくれたみたいで俺も嬉しいぜ。んで・・・」
俺のバッグを興味深く見ている。はいはいわかったよ。お前は緑だ。
「うぉぉぉ!やっぱり凄いぜ!!ありがとうよ!これは家宝にするぜ!!」
めっちゃ喜んでくれると俺も嬉しい物だな。
次はメガネ君の店だな。
「こんにちは~」
「おぉ!洋平さんじゃないか。待っていたよ。君に渡すものがあるんだよ。」
このメガネをかけた青年はハクという名前だ。ズバリ頭がいい。メガネは伊達じゃないと言う事か。商人一筋で冒険はあまりしないらしいが古代兵器を求めて護衛を連れて迷宮に行ったりする見た目によらずアクティブな人だ。迷宮では自分の身を守る事しか考えないのでこの店で扱う物の多くは防御に関する物だ。防具から盾等、アクセサリーも防御系の物だ。
「あったあった。これをあげるよ。」
そう言って盾を渡して来る。丸い盾で特に装飾も無く物凄く軽い。まるでつけてる事を忘れる位だ。しかし盾は堅い感じがする。不思議な金属でできてる感じだ。というかこれはどっかで見たことがあるな。
「その盾はね。なんだかよくわからないんだけど古代兵器の一つぽいんだよ。」
「どっかで見たことあるような感じがしますね。」
「そうなのかい?まぁセリーヌ様の弟子なら文献で見たことがあるのかもしれないね。僕が昔に遺跡で見つけた物なんだけどさ。国に売るのも勿体しね。お金には困ってなかったから、何かあるまではと思ってたんだけど。このままだと使わないで終わりそうだからさ。洋平さんに持って行ってもらいたいんだ。」
「もしかしてすっごい高い物なんじゃないんですかね?」
「いや~そんな事は無いと思うよ。僕も浮かれてその盾で敵の攻撃を受けた事があるんだけどてんでダメさ。衝撃を吸収するどころか衝撃が増えた感じがするからね。」
「では調べてみますね。それまでは預からせていただきますよ。」
「いいよいいよ。その盾はもう君の物だ。その代わり・・・」
まーた俺のバッグを見やがって、ちなみにこいつはブルーだ。このフィギュアに古代兵器以上の価値があるとは俺には思えんぞ。
「いやーやっぱり凄いね。まぁその盾と交換って事にしといてよ。まぁ何かわかったら教えてほしいかな」
「わかりました。大事に使わせて頂きますね。」
次はっとおさげのそばかすちゃんか。ちょっと小柄で可愛いんだよね。
「こんにちは~」
「あ~洋平さん来てくれたんですね。いらっしゃいませ~」
「これをどーぞ。」
「わぁぁいいんですか!ありがとうございます。私も洋平さんにあげるものを用意してたんですけどどこしまったっけけ?」
この小柄でおさげで可愛い子はシエルちゃんだ。もちろん君はピンクだよ。この店は魔法布の専門店だ。魔法布と言うのはそのまんま魔法効果が付与されているのだがそれでローブを作ったりするのだが、まぁここは生地屋に近い。業者の人を相手に商売している感じだ。
「あったった。これです。はいどーぞー」
なにやら服を貰った。白い服だ。白Tだな。
「それは特殊な布で作った服で~なんていう布だっけ忘れましたけど~、効果は~忘れました!」
「普通の服とは違うんですか?」
「そうそう思い出しました。魔法を受けると色が変わる布で出来てます。」
「ほぉ~火を受けると赤くなるんですか?」
「火を受けると燃えちゃいますよ~。温めると赤くなって、濡れると青くなって、寝ると黄色くなって、動くと緑色になります。たぶん。」
「なるほど。」
魔法関係ねーじゃん。でもまぁちょっと面白いな。なんとなくわかった。つまり使い道は無いと言う事だな。
「同じ系統魔法を連続で受けると魔法耐性が上がる効果があるんですよ。たぶん」
めっちゃ便利じゃないか!前言撤回する。これは毎日着る物だ。
最後はギャルねーちゃんだな。ちょっと怖いんだけどなー
「こんにちは~」
「あ~勝手に見てけよー、壊すなよ~」
「ここに置いておきますね~さようなら~」
といって俺はフィギュアを置いて立ち去ろうとする。こいつは黄色だ。
「あ~おい!ちょっと待った!待てって!私が悪かったから!」
俺はこの業界の神だぞ。貴様神にどうゆう態度を取るつもりだ。俺は向き直り話をする。
「さっきは悪かった。よく来てくれたな。そうだお詫びって訳じゃないんだが。お前が来ると聞いててな。こんなのを用意しておいたんだ。」
俺に丁寧にリューターみたいなものを渡してくれる。これは正直嬉しい。俺も態度を改めようじゃないかディルマさん。
「おぉ。これは素晴らしいですね。ありがとうございます。」
「それは先端部分を変えられる感じのやつらしいからって私にはよくわかんねーけどあんたなら詳しいんだろ?」
「そうですね。たぶん5人の中で一番うれしいですよ。」
「何言ってんだ。褒めたって何も出ないよ。まぁここのアクセ位なら好きなの持って行ってもいいけどな」
出るじゃねーか。ディルマさんの店は完全にアクセサリー専門だ。女性向けが多いな。同じアクセサリーのロイとは結構違う。お洒落嗜好だ。ロイは生活嗜好だな。
別に今必要なアクセサリーは無いからな。とりあえずアイヴィへのプレゼントでもなんか選んでやるかな。俺はハートのミサンガを掴んでディルマに見せる。
「これ貰っていいですか?」
「それは女性用だからあんたはつけても効果は無いよ?それにそれは一般人がつけるような代物でも無いしな。しかもそれはちょいと高いからいくらあんたでもタダって訳にはいかないよ。」
「金貨一枚でしたっけ?」
「そうだな。だがまけてやっても銀貨80枚は欲しいな。」
「お金が貯まったらまた来ますよ。今はそんなにお金使えないんで」
「そうかい。んじゃまたお金が貯まったら来てくれよ!」
てな感じで俺は色々と貰い最後にまたロイの店に戻って来た。
「戻りました~」
「お~どうだった?っておい色々貰って来たな。」
「みんないい人です。こんな物の別に役に立つかわからないのに」
「い~や、洋平の作る物を持ってると運気が上がるって噂があってな。最近じゃ物凄い人気だぜ。またガチャガチャでも売ると今なら前の倍以上の値段は間違いない。俺も最近商売の調子が良くてな。みんな羽振りがいいんだぜ。」
「そうなんですか。じゃあロイさんにもこれをあげますよ。」
「おぉ。これは昨日ハクが貰ってたやつだな。相変わらず凄い技術だな。」
「一応全員に同じようなのあげたので、5体揃うと一つのポーズになるように作ってます。」
「そうなのか!早速今日の夜でもみんなでやってみるとするか。っとみんなから色々貰ってるのに俺だけ渡さない訳にはいかないな。」
「いや、ロイさんにはお世話になってるんでいいですよ。」
「というか実はもう用意はしてるんだ。ほら持ってきな。」
手袋を俺に渡してくれた。普通のレザーグローブのようだが、これはあれだ。今の俺の戦闘力を大幅に上げる装備だ。
「それは投擲のグローブと言って物を投げる力がちょっと上がるグローブだ。セクターと戦う時に持ってたらよかったんだが、この魔道具はここの町じゃ売ってなくてな。仕入れにベイルの町まで行ったときに買ってきたんだ。遠慮せずに使ってくれ。」
俺は早速投擲のグローブをはめてみる。ちょっと大きくてぶかぶかだと思ったがつけると締まって俺の手にフィットする。これは投げる力を上げるだけで純粋に力が上がる訳では無い。しかし投げる力が上がると言う事は、その分コントロールをつけやすい事を意味する。
「ありがとうございます。」
「なにいいって事よ。そうだ一つ頼みがあるんだがいいかい?」
「はい。なんでも言ってください」
「今度ベイルの町まで仕入れに行く時に護衛をしてもらいたいんだ」
「おぉ!力になれるならいくらでも力になりますよ。俺のこの町以外はあまり知らないんで是非行ってみたいですね。」
「そうなのかい?まぁ色々あるんだろうから詳しい事は聞かないが、ベイルの町へは月1の頻度で仕入れに行ってるんだが道中の敵というか盗賊がちょっと厄介でな。依頼のランクはAなんだがBランクにはいつくらいになれそうだい?」
「二日後にはBランクになってますよ。」
「そうなのか!そりゃ凄いな。今月の仕入れはもう終わったから来月でも都合のいい時でいいんだが頼めるか?」
「わかりました。今度来た時に顔を出すのでその時にでも行きましょう。」
そうして俺は護衛の仕事を引き受ける事になった。まぁBランクになればアイヴィと一緒だからな。問題は無いだろう。ロイ、バーン、ハク、シエル、ディルマ。みんないい人だ。人の繋がりは大事にしておきたい。




