お勉強
次の日は午前中にいつもの修行をして午後は授業をした。そしてまたその翌日の午後
「では今日の授業を始めます。」
「はーい」
「では昨日の復習から、これはなんと読みますか?」
「つんでれ」
「正解!さすがですね」
「洋平には負けられませんから」
昨日の授業では日本語の勉強をしたのだ。まずは平仮名からだ。
「日本語には沢山の文字があります。昨日は平仮名と勉強しましたが、日本語には平仮名と同じ読みをする片仮名というのがあります。」
「同じ読みをするのに文字が違うんですか?」
「そうです」
「なんで?」
「えーっと・・・なんでだろう。」
「それは必要なのですか?」
「う~ん確かにいらないと言えば要らないですね。たぶん日本に元からあるものと他の国から来た物とを区別する為に使われているのだと思います。」
「なるほど。洋平の世界には日本という国の他に国があるんですね。」
「国は沢山ありますね。日本を含めて195の国があります」
「そんなにあるんですか!?なんで?」
「さぁなんででしょう?私にもわかりません!!」
「まぁ私も、他の国の事は余り知りませんからね。」
「では続きを、日本で生きていく為には平仮名と片仮名の他にも漢字と英語を覚えなくてはいけません!!」
「なんでそんなにあるんですか!?」
「知りません!頑張って覚えるんです!」
「ぶーぶー」
「さらに漢字と言うものには、一つの形で二つの読み方があります!」
「同じ形で読み方が違うのですか?」
「そうです!」
「なんでですか!」
「だから知らんといっとろうが!!」
「どうしてそんな国に居るんですか!」
「日本で生きていくには必要な事なのです!」
「い~じ~わ~る~」
等と楽しく話しながら、アイヴィと一緒に勉強をしていった。
セリーヌが帰ってくるまでは技術的な事は無しにして語学の時間にした。アイヴィが日本に来ると言うのなら語学は必要だ。家庭教師のバイトもしていたので、教える事は苦手では無い。いつも教え子との妄想を膨らませて楽しくやらせていただいてる。アイヴィとの妄想は尽きることは無さそうだ。日本語を覚えさせて日本に行きたいと思わせる作戦だ。
「では今日はこれくらいにしましょう。明日はセリーヌが帰ってくるので、前の授業に戻ります。また語学の授業は時間を見つけてやりましょう。」
「洋平の国は大変ですね。色々な文字が組み合わさってるなんて、私は自信が無くなってきましたよ」
「大丈夫ですよ。時間はたっぷりありますからね。」
そうして特に何事も無くセリーヌの居ない時間は終わってしまった。次の日の昼にはセリーヌは帰って来た。その日の午後の授業からセリーヌが合流して俺の授業を受ける。機械のメカニズムに関して色々と勉強してきたのでそろそろ次のステップだ。
「ではセリーヌも帰って来たので、新しい授業を始めます。」
「「おー」」
「私の居た世界では、化学というものが発達しています。魔法や魔術が無い世界なので人工的にその現象を引き起こしていると言うわけです。エンジンの中で爆発が起こる事やそれを動力にする方法等、この世界では他の事で代用できる物もあるかもしれませんが、今後は化学について詳しく説明していきたいと思います。まずは水について説明します。水は冷やすと氷になり固体になります。温めると水蒸気となり気体になります。その逆もあります。氷を温めると水になり、さらに温めると水蒸気になります。水蒸気も冷やすと水になります。って言ってる事わかります?」
「難しいのにゃ」
「わかりません!」
「どこがわからないですか?」
「水蒸気とはなんなのにゃ?」
「あ~水蒸気ってのは空気中に含まれる水分量って感じですね」
「じゃあ空気から水を作れると言う事なのかにゃ?」
「その通りです。」
「空気を冷やすと水になると言う解釈でいいのかにゃ?」
「間違いではありませんが、空気中に含まれる水分量は微々たるものなので空気から水を生み出すには空気を集めないといけません。空気中に含まれる水分量は場所によって異なります。」
「ん~」「む~」
二人とも難しい顔をしてる。説明的には間違って無いんだろうけど、空気から水を作ると言うのが難しい説明だな。俺も専門家じゃないからな。どうするか。
「では実際にその現象を起こして説明したいと思います。アイヴィさん手伝って下さい。」
「はい。」
「では鍋と卵と調味料をなにか適当に持って来てください。塩とあとはちょっと濃い味のやつでいいのでお願いします。」
アイヴィの頭に?マークが浮かんでるがアイヴィは言われた通りに動いた。
「セリーヌは火を起こしてください。あと水の準備もお願いします。」
「わかったのにゃ。」
実際に水蒸気を出すなら卵は必要無い。だがこれは次の段階に行く足掛かりになるはずだ。
俺は部屋に戻り、いつか使おうと思っていた。自作のコップまがいの物を持ってきた。石で出来たコップだから耐熱性は問題ない。
そのコップに卵を入れる、そして塩とアイヴィがセレクトしたバルタ汁を入れる。バルタ汁は醤油に近いがちょっと臭い感じの醤油だ。モンスターの素材でバルタと言うモンスターの体液だそうだ。ちょっと怖いが加工しているので大丈夫だ。俺はいつも食べてる物だからな。そして卵をかき混ぜる。泡立たない用に丁寧にやるのが大事だと思う。中に気泡があるとよくないからな。そしてそのコップを鍋に入れる。セリーヌとアイヴィが興味津々で覗いてくる。鍋に水を1センチ程入れれば準備完了だ。俺は鍋をセリーヌの起こした火にかける。
「最初はちょっと強めの火で行きましょう。」
「わかったにゃ」
鍋を火にかけ蓋をちょっとずらして置けば準備完了だ。あとは沸騰するのを待つ。
「今この鍋には水が入っていますね。それを温めると水蒸気になります」
「洋平、卵は意味があるんですか?」
「今回の水蒸気には関係ありません。ちょこっとお楽しみです。」
そろそろ沸騰しそうだな。湯気が立ってきた。
「これが水蒸気です。今この水蒸気が出ている場所の空気は水分が沢山含まれています。なのでこの水蒸気に手をかざすと、手に水が付きます。これでわかりますか?」
「にゃるほどにゃ」
よかった。理解してくれたみたいだ。やはり百聞は一見にしかずって事だな。これからも実際に起こせる現象をやってみせた方がいいだろう。
「セリーヌさん、もう沸騰したので火を弱めて下さい。止めない様に、その状態でしばらく待ちます。」
俺が作っているのは茶碗蒸しなのだ。中身は何も入っていない。まぁ実験だからいいだろう。多少味はあるはずだ。
「これで水蒸気は理解出来ましたね。とまぁ今日はこんな感じにしておきましょう。」
「質問なのにゃ。この水蒸気は水分量が多いから水が作れるとして、この水蒸気以外の所からの空気からも水は作れるのかにゃ?」
「どこの空気の中にも水分は含まれますのでそれを集めれば水を作り出す事が出来ます。」
「どうやって集めるのにゃ?」
「えっとーそれはちょっと時間がかかるので明日にでもやりましょう。」
「わかったのにゃ」
「そろそろ出来たかな~」
俺は鍋を覗き込んで確認する。見た感じはよさそうだ。セリーヌに火を止めさせ、皮の手袋をはめ中身を取り出す。二人の目が茶碗蒸しに注がれる。
「たぶん出来ました。これは私の居た世界というか私の国の伝統料理の一つです。」
「食べれるのですか?」
「食べれない食材は使ってないでしょう。」
「なんと言う料理なのですか?」
「これは茶碗蒸しと言うものです。」
俺はスプーンを持って来て茶碗蒸しを一すくいする。ちょっとゆるい気がする。汁も出ているが、まぁ形を保っているのでまぁ成功でいいだろう。時間も適当だったしな。そしてそれを我先にと口へ運ぶ
おぉ。懐かしい触感だ。バルタ汁の臭みが全く無い。緩くて口に入れた瞬間に崩れるが、それはそれでいいだろう。もう一口・・・
と思ったが二人の視線が痛いな。俺はスプーンをセリーヌに渡す。
「どうぞ一口食べてみて下さい。熱いので気を付けて下さいね。」
「では頂くにゃ。」
セリーヌが茶碗蒸しを口に運ぶ。すると見る見る表情が変わってくる。そしてもう一口。さらにもう一口。目にはそれしか見えてない感じだ。というか全部食べやがったぞ。アイヴィの分が無いじゃないか。
「アイヴィの分を残しとけよ。バカ猫。」
「よーへーおかわりだにゃ。これは美味しいのにゃ!もっと持ってくるのにゃ~」
全くしょうがない奴だな。俺はアイヴィと一緒にまた茶碗蒸しを作る。アイヴィも文句の一つでも言ってもいいと思うのだが、アイヴィは黙って一緒に作ってくれている。今度は一度に三つだ。全員が食べれるように。セリーヌはもっと要求しそうだから6個位作るか。一つの器に卵を二つとか入れると蒸す時間が変わると思うので、同じ大きさのを6個だ。鍋にはちょうど入る位だからちょうどいい。というか俺も一口しか食ってねー。
「アイヴィどうですか?」
「これは凄く美味しいですね。初めて食べる触感です。これはセリーヌ様が興奮するのも頷けます。私ももっと食べたいです。」
「多めに作っておいて正解ですね。」
三人であっと言う間に食べてしまった。6個の内訳は俺一個アイヴィ二個セリーヌ三個だ。
「美味しいのにゃー。よーへーの世界にはこんな美味しい物がもっとあるのにゃ?」
「これは簡単に出来る物ですからね。美味しい物はもっとありますよ。」
「よーへーの世界は凄いんだにゃー。よーへーの株がまた一つ上がったのにゃ。」
「また何か思いついたら作りますけど、あまり料理は得意な方ではありませんので、期待しないでくださいね。」
「美味しい物に文句はにゃいのだが、質問があるのにゃ。どうして卵はあんなプルプルになるのかにゃ?」
「よくぞ聞いてくれました!卵は液体とは違い物質です。焼けば固まってしまいますね。ではなぜプルプルになるのかと言うと・・・
分子レベルの話になると俺も説明出来ない。そこまで詳しくねーよ。
・・・わかりません!そうゆうものなのです!」
「よーへー出来るのにわからにゃいのか。」
「ん~なんとなくはわかるんですけど、説明は出来ないですね。科学反応の一種ではあるのですけど、私も詳しくないので教えれません。」
残念ながら俺は科学者じゃない。普通の大学生だ。日本人だ!
現代知識は活用しないとね




