石の試練
翌日。異常なまでの魔力を感じて飛び跳ねるように起き上がる。
「なんだ・・・。一体何が・・・。」
部屋を飛び出し一階へ行くが誰の姿も無い。俺は焦り家を飛び出し惨状を目の当たりにする。
「どうゆうことだ・・・。」
シルバーが居た小屋を中心に辺り一面、地面が吹き飛んでいる。セリーヌ、クリスト、リンセも一緒に吹き飛ばされたようだ。そして小屋の中からファングの気配を感じる。
「誰か説明しろ!」
俺が大声をあげるが誰も答えない近くにいたクリストの胸倉を掴み問いただす。
「何があった!?」
「・・・。」
「答えろ!!」
「ファングとシルバーを一つにした・・・。」
「っ!!!」
俺は怒りのあまりクリストを全力でぶん殴った。俺はやりきれない気持ちを感じ小屋へと歩き出した。そして小屋の扉に手がかかろうとした瞬間小屋が爆発するように吹き飛んだ。俺も一緒になって吹き飛ばされる。
「くっそ!!おい!ファ・・・ング・・・。」
小屋があった場所の中から出てきたのは大きな石の塊だ。小屋の中丸々あったんじゃないかというほどの大きさだ。
「なんだこれ・・・。」
俺は恐る恐る巨大な石に近づく。石から声が聞こえてくる。ファングにも似ているがどこか機械調の声だ。
『我は石の試練。我の力を得たくば、我の名を答えよ。』
一瞬にして思考が停止する。突如聞こえた声と意味不明な内容。いや、意味は理解出来るが、頭で考えるより先に体が動いた。
「ぐだぐだ言ってねーで俺のファングとシルバーを返しやがれ!!」
俺は全力で身体強化したパンチをする。だがビクともせず逆に拳を痛めてしまった。
「かって―な!ウォーターカッター!!」
カッターも石にキズ一つ付ける間もなく消滅してしまう。そしてまた声が聞こえてくる。
『我の名はシルバーでもファングでも無い。』
「じゃあシルバーファング!」
『そんな長ったらしく呼びにくい名前があるかボケ!ちゃんと考えろ中二病!』
「んっ!!!」
急に話し方が変わり馬鹿にされまたもや思考が止まる。
「一つだけ教えてくれ。お前はシルバーとファングが合体したのか?」
『質問は受け付けない。だが元マスターに免じその質問にだけは答えよう。我はシルバーでもありファングでもある。シルバーでも無いしファングでも無い。二人は合体共同体。』
「元マスター・・・。」
俺はその場に座り込み考えを巡らす。セリーヌ、クリスト、リンセも俺の後ろに着き色々アドバイスを送ってくれている。
「シルバーとファングが合体したのにゃら、シルバーファングでいいと思うにゃがそれが違うとなると・・・。はっ!ファンシルにゃ!」
『略せばいいと言う話でも無いだろう。それにダサい。センスが感じられない。』
「にゃび~ん」
セリーヌはショックを受けて落ち込んでしまった。
「よっへよっへ!」
「ん?なんだ?」
「リンセ。よっへ好き!ファングも好き!みんな好き!」
「俺もみんなの事が大好きだ。だからファングもシルバーも絶対に諦めない!」
「んっ!」
リンセが俺の頬に軽くキスをした。
『リア充爆発しろ。』
「おい!誰がそんな事を教えた!?」
『お前が元々言ってただろう。』
「くっ・・・。クリスト元に戻す方法無いのかよ?」
「こんな事が起こるなんて俺も思いつかなかった。精霊と同じ試練。どうゆう事かさっぱりだ。だが試練ならば乗り越えるしかないだろう。そうやってお前はこれまでやって来たんだろう。」
「そうだ。なんとしてもこの試練!乗り越えて見せる!」
『いちいち中二病臭いのなんとかなんねーのか。』
「対話が出来る試練ってのは見たこと無いけどな・・・。」
俺は冷静になって考えを纏める。これまでの話でいくつかヒントになる事はあった。シルバーとファング。この二つが合体したのは間違いない。運命共同体ってのも気になるが、何より、知識がこの世界の知識と違う。俺が元いた世界の知識だ。中二病もリア充爆発しろも俺の世界ではよく耳にする言葉だ・・・。たぶん。後は話し方か・・・。ファングならもっと丁寧に話すはずだし・・・。となるとシルバーなのか。だがシルバーでは無いと自ら言っていた。
「わからん・・・。」
『答えは己の中に必ず眠っている。かっこいい名前を付けてくれよ。中二病らしくな。』




