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風の試練再び


屋敷の裏手から山に続く階段を登る。その階段の長さは果てしない。以前は走って登って行ったが、今回は4人で一段一段ゆっくりと踏みしめながら歩いていく。


「洋平。どこまで行くんだ?」

「この階段?山?には幻術がかけてあって普通の人にはわからないらしいぞ。」


空気を読まないルドルフと会話をしながらひたすらに歩く。階段の幅は一段一段違うので歩きにくい。ふとリソワが足を止める。


「ここだけ空気が違うな。」

「ルドルフわかるのか?」

「まぁなんとなくだけどな。洋平もわかるだろ。」


目を閉じ精神を集中させる。なにもわからない。しかしここから上は何かが違う気がしないでもない。言われて集中して初めてほんの少しの違和感に気づく程度だ。意識をしていなければまず俺にはわからない。


「俺には言われないとわからないな。」

「アリエル。私だ。開けろ。」


リソワがアリエルと呼ぶとリソワの目の前に光の玉が現れる。そして次の瞬間、天まで続くと思われていた階段は姿を消し、以前見た山頂にある祭壇が現れる。


「アリエルってなんだ?」

「私の妖精の一人だ。行くぞ。」


光の玉はリソワの周りをフワフワと浮きながら着いてくる。そして祭壇の前で全員足を止める。


「ここからは洋平の仕事だ。」

「はい。行ってきます。」


俺は祭壇に近づき、確認する。祭壇には依然と同じく風車が弱弱しくカタカタ回っている。


「汝、我の力を求める者よ。その風車の動きを止めよ。さすれば我が力貸し与えん。この風車に触れれば風車は止まる。さすればエルフの里に吹く風も止もう。エルフは風と共に生きる種族。風が無ければ誰一人生き残る事はないだろう。さぁエルフの命と引き換えに我が力手に入れよ。ってか変わりは無しだな。」


試練の内容は以前と変わりは無かった。


「よっし!じゃあやるか!」


俺は祭壇の上にある風車を手に取る。手に取った風車は徐々に勢いを失っていき、ついに動きを止めた。その瞬間今まで吹いていた風が止んだ。


「止まった。大丈夫か!?」


俺が後ろを振り向きリソワ達を見ようとした瞬間周りの景色が変わる。


「・・・来たか。」


いつもの真っ白な場所に来た。目の前には綺麗な緑色のお姉さんが立っていた。どことなくエルフっぽいが人間のような感じもする。


「よくぞ封印を解いてくれましたね。お礼を言います。ありがとう。洋平。」

「あ、えっと・・・」

「私は風の精霊シルフです。シルフィとも呼ばれます。話はサラマンダーから聞いていますよ。霊術使いだそうですね。」

「シルフさん。一つ聞きたい事があります。」

「なんでしょう?」

「エルフのみんなは!リソワやランスやアイヴィは大丈夫なんですか!?」

「今はまだ大丈夫です。脅威がやってきます。その脅威は今あなたの手の中にあります。」

「え?俺の?」

「戻ったら風車には十分注意を払ってください。」

「あ、なるほど。わかりました。」

「では準備はいいですか?洋平に風の力を与えます。」

「お願いします。」

「風よ。この者を守り、災いから身を守る術を。」


体中を心地よい風が吹き抜ける。今までとは比べものにならない程に魔力の流れが速い。


「これは・・・。扱いきれるか・・・。」

「風は操作の力を与えます。体内を巡る魔力の操作から放たれた魔術の操作まで。使い方は洋平次第ですよ。焦らずじっくりとなさい。決して目標を見失ってはいけません。」

「ありがとうございました!」


徐々に景色が戻って行く。


「リソワを頼みましたよ。」

「え・・・?」


最後に言われた言葉が引っ掛かったが景色が山頂の祭壇へと戻った。後ろに居た三人は無事のようだ。


「終わったのか?」


リソワが聞いてくる。


「はい。無事風の精霊とも会う事が出来ました。」

「そうか・・・。シルフィと会ったか。ところでシルフィは・・・」

「ん!?」


急に手に持っていた風車が震え出した。そして風車は俺の手から離れ飛んで行った。


「なんなんだ・・・。っ!」


風車は空中で巨大な鎌に姿を変え、俺へとブーメランのように戻ってきた。そのスピードは速く、急な出来事で反応が遅れた。


「悠長に話をしている場合ではないようだな。だが聞かせてもらおう。シルフィは何か言ってたか?」

「リソワ様を頼むと。」

「そうか。」


急な鎌の攻撃をリソワが俺の前に出て防いでくれた。そしてその鎌を弾き飛ばす。


「これはホウライでは無さそうだな。気を付けろ!」


リソワに言われすぐに三人は戦闘態勢に入る。リソワが弾き飛ばした鎌は空中にとどまっており、その鎌周辺にどす黒い魔力が集まって行き姿を形成する。


「あれは・・・。カウスピウス・・・。」


リソワが呟いたカウスピウスは人型で巨大な鎌を持ち漆黒の鎧を身に纏っている。人型であるが身長は3メートルはありそうだ。


「飛べ!!」


リソワの声が響き急いで飛び上がる。カウスピウスは振りかぶりもせず鎌を横薙ぎにした。その先から風の太刀に似た目に見える程の魔力が圧縮されたようなかまいたちがさっきまでいた場所を通過する。


「リソワ様!敵の情報を下さい!」

「あいつの強さはスピードだ。それを超えるスピードで動けば問題無い!行くぞルドルフ!着いてこい!」


リソワとルドルフが敵に向かって走り出して行った。凄いスピードで今の俺には付いていけそうにない。風の力を受けたからと言ってそれを直ぐに使いこなせる訳ではないのだ。正直この力は余りある。リソワとルドルフの攻撃と同時に鎌で受けそれを弾き返すと同時にかまいたちを放つ。弾いた方向に放ったかまいたちは体勢の悪い二人に命中する。


「おっしゃあ!行くぜ行くぜ行くぜ!!」


かまいたちの直撃を受けたにも関わらずリソワとルドルフはさらに敵に向かって行った。



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