新時代を築く者
記念100話!
「ギャォォォォォ!」
「おうおう、お怒りの様で、リンセは俺の後ろに隠れてろよ。」
「ん!」
巨大なトカゲは左前足を破壊され怒りをあらわにし吼えている。粉砕した足に体から溶岩がまとわりつき足を修復させる。リンセは俺の背中にぶら下がってお気に入りのポジションだ。
「HP自動回復って感じだな。それより大きいダメージを与えればいいだけだなっと。アイスランスダブル!」
先程と同じような巨大な氷の槍が二本発射される。その二つはトカゲの反応すら許さない速度で二つの前足を粉砕し、トカゲの頭を地面に叩き付ける。
「ギャゴォォォォォ!」
「よし!一気に決めるぞ!」
俺が近づこうと思い一歩踏み込んだ瞬間に少しトカゲに違和感を感じてトカゲを見る。これはブレスを吐く予備動作に感じられた。今までなら危険だと判断し逃げる所だが、今の強化された俺には警報が鳴らない。
「ギャォォォ!」
トカゲが巨大な溶岩の弾を口から吐きだした。ブレスだと思っていたが弾丸だった。しかし俺の頭は未だに冷静を保っていた。
「いい実験台になってもらうか。ウォーターバレット二式!」
溶岩の弾を同じ大きさの水の弾を作りだし溶岩の弾に当てる。当たった瞬間に大きな爆発音と共に二つの弾は消滅した。
「あれが水蒸気爆発的なやつだな。俺も火魔術が使えたらあれを再現出来るのにな。アイスランス4式拡散」
四肢が復活したトカゲに向かって4本の氷の槍を四肢に突き刺す。氷の槍はマグマの体に触れ軽くない爆発を起こして四肢を吹き飛ばしトカゲを身動きの取れない状態にする。
「これで身動きは取れんだろ。あとは・・・」
トカゲが悔しそうな声を出しながら俺を見つめている。四肢を回復させようにも一瞬で回復出来る訳ではない。俺を睨みながら大きく口を開いた。
「そこだ!ウォーターバレット一式!」
俺の手から一筋の水放たれる。それは凄い速さでトカゲの口の中へと入り体内を水で満たす。そして背中を突き破り水は出て来る。
「終わりだな。」
「よっへ!すごい!」
トカゲは今にも体の中で爆発が起こりそうで苦しみもがいている。そして後方から沢山の気配を感じる。
「っと待たせたな!あれが敵だな!任しとけ!!行くぜ!!!」
颯爽と現れたルドルフと俺を捕まえに来たと思われる兵士達。中には王の姿も見られた。その中から飛び出したルドルフは俺に一声かけトカゲに飛んで行った。体は真っ赤に光っている。
「うりゃ!!」
掛け声と共にトカゲの首を一刀の元に跳ね上げる。そして制御を失ったマグマの体は耐えきれずに爆発を起こす。さながら戦隊物の敵を倒した時の爆発のようだ。
「なんだ?一撃じゃねーか。弱いな。こんなやつに苦戦してたのか?」
「全く・・・。タイミングがいいんだか悪いんだか。かっこいいのは認めるがタイミングが悪い。」
「今、俺の事を褒めたな?そうだろう。かっこいいだろう。こう颯爽と現れて敵を倒す。そして爆発付きだ。我ながらかっこいいな。うんうん。」
「あーもうわかったわかった。試練も終わったから帰るぞ。」
俺がルドルフと話していると兵士に囲まれる。ゆっくりと王も姿を現す。
「あーそういや。こいつら居たんだっけか。」
「どうする?」
俺とリンセとルドルフを中心に兵士と王に完全に包囲される。
「ルドルフ!何をしておるのだ!早くそいつを捕らえよ!」
俺とルドルフが目を合わせ困った顔をする。
「だってよ。」
「飛んで逃げてもいいけど、セリーヌに挨拶はしないといけないしな。めんどくさいのは御免なんだけど・・・。なぁサラマンダー?」
俺がサラマンダーに呼びかけると上空に炎の塊が集まってきて人の形を形成する。
「よくやった。洋平。お前のお蔭でミカトレアは救われた。もう噴火の心配も無い。礼を言う。」
「強化してくれたから楽勝だったけどな。まぁいいところはルドルフに持ってかれたけどな。」
「おぉ。お前がルドルフだな。うむ。俺の加護もいい具合だな。そういえばゲミニーの贈り物は受け取ってくれたか?その調子だと問題は無さそうだな。それにしてもその剣どこで見つけたんだ?」
「あぁあの剣はリンセが海から拾って来たんだ。封炎剣だってよ。」
「あの剣は確か海底神殿に住まう海神に預けたはずなんだけどな。」
「あぁたぶんリンセは海神の加護だからなんとかなったんだろ。」
俺が突如現れたサラマンダーと話をしているとルドルフを含め兵士や王の動きが固まった。その中こっそりとルドルフが耳打ちしてくる。
「おい。あれってまさか火の精霊様か?」
「そうだぞ。サラマンダーって聞いてなかったのか?」
ルドルフがゆっくりとサラマンダーを見てから片膝を付き頭を下げる。それを見た兵士達も同じように膝を付き頭を下げる。王も驚きの顔をしながらもゆっくりと膝を付く。その中で平気な顔をしてるのは俺と俺の背中にぶら下がってるリンセだけだ。誰も何も言わず、まるでサラマンダーが何か言うのを待っている様だ。ゆっくりとサラマンダーが口を開く。
「ミカトレアの王よ。」
「はい。」
注目が王へと集まっても王の声は変わらず落ち着きを見せている。
「お主の活躍は全て見てきておる。民の命を最優先に考え、国にとって民にとって少しでも不安のある事は行わない堅実な振る舞い。見事である。今後も精進せよ。」
「ははっ!」
「そしてこの者。洋平であるが、我の封印を解きミカトレアに迫る脅威を取り払ってくれた。この者のお蔭で今後はさらにミカトレアに恵みをもたらすことを約束しよう。」
「ははー。」
「此度の洋平の行動はお主の信念には反する行動だったと思う。しかし洋平は精霊の使いである。精霊の使いであるのいうのは知っていたであろう?精霊の使いと言う者は精霊の意思を紡ぐ者。常に新しい時代を築く者だ。ミカトレアの王は代々精霊に対しての認識が薄い。昔の大戦を思い出せ。精霊が神が何をしたのかを。帰ってからセリーヌに話をしてもらうがよい。そしてそれを後世へと伝えよ。それも王としての役割だ。」
「・・・必ずや。肝に命じておきます。」
最後の王の声は僅かながらに震えていた。そして俺は違和感を覚えサラマンダーへと向き直る。
「なぁ?サラマンダー。」
「なんだ?」
「どうしてそんな堅っくるしい話し方なんだ?聞いてるこっちの方まで肩が凝ってくるぞ。」
「ここに居るのは洋平だけじゃないからな。王や兵士だっているだろ。ここは威厳って言う物を見せつけてやらないと。」
「俺と最初に話してるのをみんな聞いてると思うから今更手遅れだと思うけどな。」
「あーやっぱりか。つーか洋平ももっと敬悟を使えよ!」
「なんでだよ!」
「俺は精霊だぞ!」
「知るか!俺は新しい時代を築く者だ!精霊に敬悟を使わない時代を築く者だ!」
「喧嘩売ってんのか!?」
「おーし!やったろうじゃないか!強化された力を見てビビんなよ!」
「まだ使いきれてないだろ!精神力自体強化されてるから慣れるには時間がかかるゆっくりと」
「御託はいらねぇんだよ!アイスランス10式!」
「おい!待て!洒落にならんぞ!」
こうしてミカトレア火山の頂上で頂上決戦が始まった。
一周年過ぎてました。一人でも読んでくれる方がいる限り頑張ります。ゆっくりとしたペースですがこれからもお付き合い頂ければ幸いです。




