灰色な残留の、欠片
「人や物は
誰かからの助けを借りて
漸く美しく輝くことができる」
そう、お婆様に私は教わった
「感謝の心は忘れずに」
お婆様が死んで、最後に習ったその言葉
それは、日が経つごとに
記憶の海に溶けていく
時にふと甦っても
また溶けて、沈んで、何も分からなくなる
その無限の忘却の海に
私は愚かさを知る
そして、お婆様の顔も融けて消えていく
それを、黙ってみることしかできなくて
今では、掴むこともできない幻影
灰色が、私の手をすり抜けて
もう何も、見えなくなった