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朝から、とても疲れたけれど学校に向かう事にした。
「まぁちゃん。お試し期間は一ヶ月で良いかな?一週間は短いし…。」
隣を自転車を押しながら歩く匠に上機嫌で言われた。
一週間で短いなら二週間でいいじゃないか…。
けど、賭けにちょうどいいのが一ヶ月だったのか?
けど、お試し期間と言わなければ周りには分からないのだから「付き合う=勝ち」ならもう匠の勝ちだろう。
商品がそんなに嬉しい物だから、そんなに機嫌がいいんのかな?
傷を深めそうだったので詳しい賭けの内容を聞く度胸は、でなかった。
男女の身体のお付き合いは、周りの溢れる情報から知識はあった。
それ以前の付き合いといえば、メールやデートや一緒にお弁当や下校くらいしか思いつかない。
けれど、相手は匠。
私と付き合う事自体がおかしい。可愛かったり綺麗な人だったら釣り合いもとれるだろうけど、私だ。
私に対する風当たりがきつくなるのは、簡単に予想ができた。
購入しても使ってない商品や未開封なら、基本返品や交換もできる。使って一週間以内なら、返品できる場合もある。
お試し期間なら、登校時の今なら解消も自由なはずだ。
こじつけの理由で、私は自分を奮い立たせた。
「あの。たっ、谷沢くん。」
「匠でいいよ。いつもの呼び方でもいいけど。」
そうだ。呼び方もあったね。
けど、お互いの呼び方を仲良く決める事から、始めたいんじゃないの。
何かが起こる前に、終わりらせたいの。
やっぱり、私が賭けの対象にされて遊ばれる事は傷つくし、周りの女の子達からの風当たりが強くなるのも嫌だった。
「やっぱり、なかった事にしよ…。」
私は匠を見上げて言ったけれど、周りの音で聞き取れなかったのかもしれない。
「ん?手つなぐ?」
ニッコリ笑顔の匠に手を差し出されてしまった。
逆だよ。逆。
繋ぐんじゃなくて、離れたいんだよ。
よそ見していた振りをして、匠の手はスルーした。
お付き合いを止めようと頑張って言ったのに、更に疲れただけだった。
隣を歩く匠は、今も機嫌が良さそうに見える。
それを見た私には、もう匠に何か言う元気は残っていなかった。
いつも駅前で待ち合わせて、二人で登校している桜ちゃんが、私を見つけニコッと笑顔になった。
そして、肩を落として小さく手を振る私が近付くにつれて、桜ちゃんの目がだんだんと丸くなる。
今日は桜ちゃんが、一段とかわいいく見えるなぁ。
桜ちゃんの、気持ちはわかる。
「桜ちゃん。おはよう。」
一人増えてて、ごめん。
「おはよう。桜ちゃん。」
お前まで普通に桜ちゃんと呼ぶな…。
「えっと…谷沢くんおはよう?」
「ごめん。桜ちゃん。遅くなって。後で話すからとりあえず行こう。」
戸惑う桜ちゃんを巻き込み、急ぎ足で学校に着いたのはギリギリの時間だった。
学校に着くと匠は、手を振り離れて行った。
授業の間の休憩にも、私に話しかけてくる事もなかった。少し安心して私は、午前中をすごしていた。
そうして昼休みになったので、いつものように机を移動させて、友達達とお弁当を広げる。
あぁ。落ち着く。いつもと変わらない時間が一番いい。
視線を感じた気がして視線を向けると、友達達と一緒にいる匠がこちらに手を振るのが見えた。
視線はばっちり合ってるけど、私に向かってじゃない。そう思いたい、私。
そのまま、匠が見える席に座った。匠とは、学校では接点が無く見かけるくらいしかなかったので、観察してみるつもりだった。
学校の匠と言えばいつもキラキラ目立って、ワイワイ誰かといるイメージしかない。
家に届け物にきた時に、私が受け取る時には少し話をしたりはあるけど、学校ではまるで接点は無かった。
教室の後ろの方で男友達三人と座っている匠は、同じクラスのミキさん達に何か話しかけられている。
ニコリともせず「無理」とゆうように首を振る。
ミキさんが匠の肩に手を置き身体の距離を縮める…。
おおっ!頑張れミキさん!
思わず箸を握りしめた私の期待と応援は届かず、匠はスルリと擦り抜けるように身体を避けて立ち上がり、ミキさんに何かを言った。
「ごめんね」とゆうようにミキさん達に手を合わせる男友達に何か言われながら、匠は神妙な顔をして男友達と一緒に教室を出ていった。
今朝とも届け物にきた時とも違う匠。
特に今朝の小さなたっくんに見えた時間は、なんだったんだろ。
「真美ちゃん?」
「最近、寝不足でぼうっとしちゃってた。」
桜ちゃんの声に、私はヘラリと笑って言い訳をしてお弁当を片付けた。
残りの時間は、中庭に行くと友達達に伝えて二人で教室を出た。
匠との幼ななじみとまでいかない様なご近所付き合いや、靴の中に入っていたメモから始まる話を桜ちゃんにしていると
「え?」
と始めは驚いていた桜ちゃんが最後には、ため息を落とす。
「ひどいよ。賭けなんて。」
「賭けは私の想像だけだよ。まぁ、一ヶ月だけだし。」
「真美ちゃん。いいの?」
「よくはないから…。」
これが匠では無く別の人だとする。
ぽっちゃり地味な私が告白され付き合い始めたとする。
時期が来たら賭けだったんだとあっさり振られる…。
考えるだけで凹めた。
それが、昔は仲良く学校で接点が無くなっても薄い繋がりがあった、匠。
本気にして浮かれたりしたら、余計に凹んでみじめになりそう。
「駅に着く前に、やっぱりやめにしよって言ったら、手を繋ぐ?って、手を出されて言われた。」
私の言葉に、二人でため息をおとして教室に戻った。
午後からも匠からの接触は無く、授業も終わり放課後が来た。
その頃には今朝の事は、私の頭から抜けていて、委員の仕事もないので帰ろうと用意をしていた。
「まぁちゃん。」
そうしたら、キラキラの困ったちゃんが来てしまった。