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「まぁちゃん?教室に入って。」
小さな頃の私を知っている人が呼ぶ呼び方。
匠に呼ばれるのは久しぶりだ。普段は、匠が家に届け物に来ても私の前で名前は呼ばない。
ちなみに私は匠を、たっくんと呼んでいた。
さっきの「来てくれたんだ。」もあり、やはりこのメモは匠なんだろう。
このままの方が人目についてしまう。教室を見渡し他に誰もいない事だけをラッキーに思って仕方なく教室に入り扉を閉めた。
「まぁちゃん…。」
お互い話しが出来る距離まで歩み寄ると、匠に顔をじっと見つめられる。
「家のお母さんに届け物?」
手を差し出す私に匠は、否と首をふる。
唯一の心当たりがハズレますます意味がわからない。
手を引っ込め小首をかしげていると、匠は思いもかけない事を聞いてきた。
「まぁちゃん彼氏や好きな奴いる?」
「…は?」
なんでだ?たっくんに関係ないだろう。大きなお世話だ。
「俺と付き合わない?」
黒板を見つめながら、そう匠が言った。
言われた私は、すぐに言葉の意味がわからなかった。
その時…
「たっくみ~。って、あれ?」
元気よく扉が開き匠の友達三人が教室に入ってきた。
「えっと…。じゃあサヨウナラ。」
チャーンスとばかり固く棒読みで言い捨てて、逃げるように私は教室を飛び出した。
「うわっ!!ちょ…やめろ~!!」
扉が開け放たれたままの教室からは、友達らしき叫びが聞こえてきた。
それは、私には無関係とばかりに一人急いで家に帰ったのであった。