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伝説の装備を手に入れたら「Version 12.4」って書いてあったんだが

作者: 日御碕 出雲
掲載日:2026/08/26

伝説の装備って昔の性能のまま、次世代の魔王って性能上がっているんじゃないの?と思ったので1本書いてみました。

【第3作目】

-----------------

剣士マックスは、古えより語り継がれる伝説の装備を求め、

魔獣ひしめく「古代樹の迷宮」の最深部に到達した。


幾多の罠を超え、守護獣を撃破し祭壇へたどり着く。


そこには、大きな宝箱。


幾千年もの歳月を経たはずなのに、今しがた磨き上げられたような輝きを放っている。


木々の隙間から差し込む光が箱を照らし、まるで「開けろ」と誘っているようだった。


マックスは、胸が高鳴るのを抑えながら箱に手を掛ける。


神々が鍛えた聖剣か、呪いを退ける神鎧。


伝説の勇者しか装備できない至高の武具。


そのどれかが、この箱に眠っている。


ゆっくりと蓋を持ち上げる。


その瞬間、宝箱から白銀の光が溢れ出し思わず目を細める。


「来た…!」


歴史に名を刻む瞬間だ。


しかし。


光が収まった箱の中には、一本の剣も鎧の欠片すらなかった。


代わりに一枚の札が入っていた。


マックスは数秒間、それを見つめた。


やがて震える声で読み上げる。


「伝説の装備セット引換券」


沈黙。


理解が追いつかなかった。


広大な祭壇に、しんと静寂が満ちる。


「……引換券?」


もう一度見た。


やはり引換券だった。


どこからどう見ても引換券だった。


マックスは勢いよく裏返す。


>ご利用は妖精都市内ヘロン武具店まで

>有効期限:本券取得から30日以内


「なんで!!」


絶叫が祭壇中に木霊した。


すると祭壇の上部に青白い魔法陣が現れ、一人の精霊が姿を現した。


長い髪を揺らしながら、精霊は柔らかく微笑む。


「おめでとうございます。あなたは試練を突破し、伝説の装備を獲得されました」


「してない!」


マックスは券を突きつけた。


「これだよ! どう見ても装備じゃなくて引換券だろ!」


「ああ、それですね」

精霊は平然としていた。


「近年は在庫管理等の都合で現物保管をやめまして」


「伝説の装備に在庫管理とかあるの!?」


「需要予測が難しいんです」


「需要予測!?」


「高難易度の迷宮・魔境に挑む猛者の出現頻度がここ数百年安定しませんので」


「聞きたくなかった裏事情がどんどん出てくるんだけど!」



------------------------------------------------


3週間後。


マックスは、妖精に教えてもらった妖精都市にあるヘロン武具店を訪れていた。


巨大な石造りの建物の上には、


『創業一二〇〇年・精霊王認定伝説装備取扱店』


という看板が掲げられている。


店内へ入ると、店主らしき老エルフが眼鏡を押し上げた。


「いらっしゃいませ」


「引換券です」


「ありがとうございます。少々お待ちください」


老エルフは慣れた動作で券を確認すると奥へ消えた。


数分後。


ガラガラという車輪の音と共に、台車が運ばれてくる。


その上には剣、盾、鎧の装備一式


確かにただならぬ品だった。


聖なる光を帯びた白銀の鎧。


吸い込まれそうなほど深い蒼色の盾。


そして美しい刀身を持つ聖剣。


どれも一級品どころではない。


神話の武具そのものだった。


だが。


マックスは眉をひそめた。


剣の鍔の近くに妙な刻印がある。


そこには大きく、


紅蓮の剣・改2


と書かれていた。


「改2?」


続いて盾を見る。


こちらには、


青龍の盾 Version 12.4


と刻まれていた。


「バージョン?」


嫌な汗が背中を流れる。


恐る恐る鎧の胸当てを見る。


そこにはこう記されていた。


この装備は定期的な祝福更新が必要です。


「アップデート前提なんだけど!?」


店主はにこやかだった。


「最新モデルですので」


「最新モデル!?」


「旧式は魔王の新型呪術に対応していません」


「伝説装備に新型とかあるの!?」


「ございます」


店主は即答した。


「魔王軍も年々技術革新が進んでおりますから」


「嫌だなあ、その言葉聞くの!」


さらに店主は説明書らしき分厚い冊子を差し出した。


鈍器になりそうな厚さだった。


「こちら利用規約です」


「利用規約?」


「なお初回1年間は無料ですが、その後は月々金貨3枚の加護サポート料を頂戴しております」


マックスは固まった。


数秒後。


「……今なんて?」


「月々金貨三枚です」


「サブスクじゃん!!」


店主は不思議そうな顔をした。


「皆様ご加入されていますよ?」


ふと横を見る。


店の待合席には歴戦の猛者らしき男たちが座っていた。


一人は腕を組み、深いため息をついている。


「また更新か……」


「どうしたんです?」


思わずマックスが聞くと、男は疲れ切った顔で笑った。


「魔王幹部を倒した後に解約しようと思ったんだけどな」


「はい」


「契約書の237ページ目に自動更新条項があってな」


「237ページ?」


別の老戦士も口を挟む。


「わしなんぞ、上位プランだぞ」


「上位プラン?」


「魔剣に広告が表示されるから、非表示に」


「広告?」


「戦闘中に刀身に『今なら聖水2割引!』とか出る」


マックスは遠い目になった。



だが、装備の性能は良いらしい…


魔王軍との戦いより先に、契約書との戦いが始まりそうだった。

-------------

動画みながら、書いていて丁度広告CMが流れたので、CMのくだりが思いつきました。

毎度ながら、いきあたりばったりで書いています。


よければ、他2作も見てください。

①・コンビニ「アクマート」へようこそ!

②・魔王を倒した剣ですよ!没収ですか…


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