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この作品には 〔ガールズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。

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私の『親友』は八股女

掲載日:2026/04/20

「ミチル、おはよう」


 今朝も私の親友、サクラの弾む声が聞こえる。

 蜂蜜色の髪を、ハーフアップにしている。

 ぱっちりとした目は、名前の通り桜色だ。

 高校のブレザー姿は、誰が見ても美少女だった。

 そんな彼女の親友である私は、幸せものなのかもしれない。


「ね、あとで教室入ったら、話があるの」


「うん、いつものアレね」


 サクラが笑顔になる。

 私が、彼女のためにできること。


「今、サクラの気になってる人たちはこんな感じだよ」


 私は、サクラのためにデータを集めていた。

 彼女がアタックしたい男子たちの好きなものとか、今サクラのことをどう思ってるかとか。

 ……男子の中には、教師とか混ざってたりする。

 教育委員会的に大丈夫なのかなと思うけど、親友の恋は応援しなきゃ。

 サクラは私の集めた情報を見て、ひとりでうんうんと頷き、メモを取っている。


「ありがとう。ミチル、やっぱり頼りになる」


「サクラのためなら朝飯前だよ」


 私は笑顔で応えた。


「サクラ、ちょっといいか? 週末なんだけど」


「あっ、ちょっと待って! ミチル、ありがとう! またあとで!」


 ちょうどサクラが気になっている男子に声をかけられる。

 彼女は声のトーンを少し上げて、急ぎ足でそちらへ向かった。


「藤田さんって相変わらずだよなあ」


 ヒロミチ――私の彼氏――が、私の机に頬杖をつきながらサクラの後ろ姿を眺めている。

 藤田サクラ。

 私の親友は、八股をかけている。


 当然、同じ学校内で八股をかけているのがバレないわけがない。

 しかし、彼女を巡って争う男子たちは、誰一人として諦めることはなかった。

 結果、サクラは八人の男子たちに囲まれて逆ハーレムを築いているというわけだ。

 ……教師は諦めようよ、そこは。


「でも、サクラ、忙しそうだけど楽しそうだよね」


「そうか? 部活に行けば、先輩と二人きり。バイトに行けば、他校の同い年に絡まれて。教室で自主勉していれば、幼馴染がやってくる。なんだか窮屈そうな生活だなあ」


 ヒロミチは口を尖らせながら私と雑談している。


「まあ、どこに行っても八人の誰かには遭遇しちゃうみたいだからね」


「それにさ、休みの日には、ひっきりなしにデートに出かけるんだろ?」


「だから、こまめにメモしておかないと、誰とどこにデートに行くか忘れちゃうんだって。前も誰かを怒らせてデートがおじゃんになったとか聞いたよ」


「はあ~……。大変だなあ。それでも八股やめないんだ」


 ヒロミチは呆れた様子だった。

 たしかに、サクラは男子たちとの交際をやめる様子はない。

 周りからも白い目で見られている。

 それでも、私は彼女との友人関係を解消しない。

 放課後になって、校門に誰か男の子が立っているのを見かけた。

 私と一緒に歩いていたサクラは、すぐに私に別れを告げて、その男子の方へ小走りに向かっていく。

 やっぱり、八人のうちの誰かみたいだった。


 翌朝、私は目を覚ます。

 カレンダーは昨日の日付のままになっていて、すぐにピンときた。

 いつも通り学校へ行く支度をして、家を出る。


「おはよう、ミチル」


 この日会ったサクラは、少し疲れているみたいだった。


「大丈夫?」


「大丈夫……ではないけど。教室行ったら、もっかいデータ見せてくれない?」


 私は頷く。

 教室に入ってすぐに男子たちの情報を見せた。

 サクラは難しい顔をしながら必死にメモ帳にぐちゃぐちゃ書いている。


「どーしよー……」


「爆弾マークふたつついてるもんねえ」


 私が集めた男子たちのデータ。

 好感度がパーセンテージで表示されていて、それが20%を切ると、爆弾マークがつく。

 爆弾がつくと、サクラの身が危ない。


「昨日、放課後、校門に男子いたでしょ。あのあと、ひとけのないところで刺されちゃって」


 サクラは冗談みたいに言いながら、お腹を押さえた。

 傷跡はないはずだけど、刺された瞬間の冷たさだけは、まだ覚えているみたいだった。


「放課後はあの男子とは一緒に帰るの回避して、好感度を上げるようなプレゼントをあとで贈るとして……もうひとつ、爆弾ついてる男子をなんとかしないと……」


 サクラが八股をかける理由。

 八股を維持しないと、こういう「爆弾」のついた男の子に暗殺されるんだって。

 こないだはお弁当に毒を仕込まれて、三日前に戻ったことがある。

 全員の好感度を卒業まで一定の値に保つ。

 それがサクラに課せられたルール。


「あーあ、ミチルはいいなあ。親友ポジションで恋人もいるの、一番美味しいじゃん」


「サクラの場合、ヤンデレもいるのが厄介だよね」


 私たちはなんでもないような顔で、このトチ狂った世界について話す。

 私の親友は八股女。

 そんな汚名を被ったまま、それでも彼女は、生きるために今日も恋愛ゲームを続けている。


〈了〉

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