意見対立、討つべきは
ー大坂、公儀密偵のアジト
どバシャ~~ッ
縛り上げられた天野屋利兵衛に桶から水が掛けられる。
「ええい吐けい、何故に塩商人の貴様が大量の武器弾薬を集めていたか吐け~~~い」
どバシバシ
さらに木刀で背中を何度も何度も殴られて、天野屋利兵衛は血みどろの状態であった。
「ち、父上っ!」
「くははっ白状せねばこの一粒種の息子を斬る! さぁ吐け~~い!!」
それでも天野屋利兵衛は眉一つ動かさなかった。
「馬鹿に致すな! 天野屋利兵衛は男にござ~る、たとい我が子を手に掛けようが大義にもとる事はせんわ!」
「むむっアッパレな罪人よ、ならば望み通り息子を斬ってやろう」
ズバアアアアアッ!
が次の瞬間、目を開けた天野屋利兵衛の視界に入って来たのは、駆け付けた堀部安兵衛達によって斬り捨てられる公儀密偵達の血みどろの姿であった。
「貴方達は!?」
「父上っ」
「許せよ、全ては大義の為じゃ!」
「分かっております……」
ひしと抱き合う親子の姿であった!
「という訳なので御座る」
「なんと、堀部安兵衛大義であったな」
「ハッ江戸家老達から大石殿が付き合いがあると聞き及び、帰りがてら探っておってドンピシャで当り申した! まさに奇遇奇縁に御座る」
「父上、我が藩は既に御公儀から目を付けられておるのですか?」
私には懸念が。
「いや、それには心配は及びません。ただただ我が店が武器を不正に集めておっただけで、赤穂藩との関係はまだ一切知られておりません。今舟で武器弾薬兵糧もこちらにお運びしておりまする」
「しかし貴方のお家には既に密偵が……」
「もはや一族郎党とも塩商売で御恩のある赤穂と運命を共にする所存! どうぞお許しをっ」
「うむ、まさに貴方こそ赤穂の義士。すぐに屋敷を手配しようぞ」
こうして天野屋利兵衛殿は赤穂藩の義士の一員となったのです。
「さて堀部安兵衛、お前の様な豪の者が帰還したはとても心強いぞ! 城を枕に討ち死にと言えども、それまでは見事な籠城戦を繰り広げる事が出来るであろうな」
父上は堀部安兵衛殿の活躍と帰還に大満足というご様子。これは幸先が良いな!
「あいやまたれい! 今何と申された??」
それに当の堀部安兵衛殿が驚愕の声を上げた。何か不満でもあるのだろうか!?
「籠城、城を枕に討ち死にと申したが、それが何かあり申すか?」
ビキッ
うわぁ父上が少し御キレ気味に返答された……仲良くして下され!
「待って下され、我ら江戸組は憎っくき吉良を討つべしと、江戸に下る同志を募る為に帰藩したのでござる! それがどうして籠城策になるのか合点が行きませぬな!!」
シィ~ン
二人の剣幕に途端に静まり返る大広間。