お城猫侍の秘密 後
「しばし落ち着きなよ、ボクは敵でも物の怪でも無いよ! ただ300年生きただけの猫ってだけさ。今は僕のスキル【時間停止】で時間を止めているだけなんだ」
「すきる……とな? 時間停止とは」
「そうさ、僕は君の事が好き。だからこれから君の事を与力してやろうと思ってね」
「与力とな?」
「これから大野殿の時間停止を解くから、彼に家族ともども大八車を引いて夜逃げする様に説得して!」
「なっ意味が分からぬわっ!」
シュインッ!
ムササビ丸が大野おじさんの前で何かすると、大野殿だけが動き出した。
ぱさっ
「まっ待て落ち着きなされ……あいや、これは!?」
私と猫と大野さん以外、父上も家臣達も雷も雨も万物が止まった世に驚くおじさん。
「大野おじさん信じられないと思いますが、落ち着いて聞いて下さい」
「そうだよ、落ち着いて聞いて欲しいニャーッ」
「ぎょぎょっこれは一体何の変事で御座るか!?」
私は大野おじさんに泣く泣く事情を話し、夜逃げする様に説得した。
「信じられぬが……こうして一刻も大石殿が動かぬのが何よりの証拠。これは天狗が千佳羅殿に味方しておるのやも知れぬ」
「天狗じゃ無いよ、ボクだよ」
「では私はおとなしく身を引こう……さすればこの大石殿が仕込みし偽りの大八車に私が精魂込めて貯め込んだ横領金をば積み込み、国外に逃げるまで時を止めたままにしてもらいたいが良いか?」
えっ横領は本当だったのですか? だが致し方なし。
「分かり申した」
こうしてムササビ丸は丸二日も時を止め続け、その間に大野おじさんは一族郎党を引き連れ国外の安全な場所まで夜逃げを完遂したのです。
「はぁお腹空いた」
私はその間、時が止まった世と父上達を眺めながら大広間で宿泊していたのです。
「じゃあ千佳羅ちゃん解除するね?」
「あ、ちょっ待ちなさい!」
シュインッ
私は刀を振り上げた姿勢に戻って辺りを見た。
「斬れ~~~い!」
「えいっ」
振り下ろされる私の刀は畳に突き刺さった。
んザシュッ
「むむっ大野はどこへ消えた!?」
「お、大野さまは一瞬で大八車を引き夜逃げ致しましたっっ」
シィ~ン




