父からの残酷な命令!! 後
「ささっ大石殿、考えは改められたかな? どうぞ再び冷静に御決断を」
大野おじさんが父上に最後の決断を迫る。
「うむ」
パンパンッ!
何故か父上は池の鯉でも呼ぶ様に突然手を鳴らした。
「な、大石殿一体何を?」
ガラガラガラ
大野おじさんが言った直後……何故か大広間の板の間の上に大八車が。床が壊れちゃうよ!!
「この積み荷に見覚えはあるかな大野殿?」
「これは何ぞ?」
え、話が見えないです。皆もポカーンとしている。
ダンッ!
父上は片足を踏み締めた。
「大野殿、大野九郎兵衛が藩政の赤字を立て直し、勤勉実直な忠臣なるは真っ赤な大嘘! 実は藩の財政から多くの公金を盗みし大罪人!」
「な、何を、何を証拠にその様な事をっっ!!」
静まり返る大広間。
「ええい黙れい、まだシラを切り通すか? この大八車に積みし横領金を持ちて今宵の内に逃亡する計画、当に下人が白状しておるわっっ!」
「バカなっ! 殿の御不幸を知るはたった今、それがどうして大八車を用意出来ようか!」
「ええ~~~い黙れ黙れ黙れっ黙ああぁああれぇ~~~~い」
父上、何故か片足を踏み締め、片手を大きく振り回しながら叫んだ。それは何の舞踊ですか?
「黙ってられませぬ! 納得がいかぬっ」
「見苦しいぞ、千佳羅ご登城初めての役目じゃ、この裏切りを者を斬れ! 斬って皆の籠城の決意の証とせよっ!!」
えっ? 私?? 私が大野おじさんを斬るの?? 突然の事で頭がぐるんぐるんと廻り始めた。
「千佳羅殿、正気を保たれよっ父上はご乱心しておる!」
「斬れっ早う裏切り者大野を斬れ!」
大広間に集いし家臣一同が私の一挙手一投足に注目している……はぁはぁ私が私が大野おじさんを? 小さい時から私を可愛がり膝の上に乗せてあんまをしてくれた大野おじさん、絶対に誰にも言ってはいけないよ、等と言いながら念入りにしてくれた……そんな優しい大野おじさんを斬る?
ビガーーッゴロゴロゴロ
その時突然暗雲が立ちこめ雷鳴が鳴り響き始めた。
ザーーーーッ
さらに凄まじい豪雨が降り始める。
「ニャーーーーーッ!!」
お城猫のムササビ丸の目が妖しく光った……