父からの残酷な命令!!
「何を驚いておる、我が心中はとっくの昔に城を枕に討ち死にと決しておる!!」
どビシッと父が再び断言すると、若い家臣達を中心にワッと歓声が巻き起こったのです。
「その通りで御座る、まさに討ち死にこそ武士の本分」
「そのお言葉を待っておりました」
「イヤーッ我ら赤穂の武士の生き様を世間に見せつける時でゴザル!」
次々に叫び出す若い人達。これが武士なのね……私も卒爾ながら父上の示した道に従う覚悟だッッ!! そう思いながら握る刀の鞘に力を込めた。
「ニャーーッ」
お城猫のムササビ丸も賛成なのね、凄く毛が逆立ってる。
「はっはっはっいやいやまたれいまたれい、其方達若い者の気持ちは良く分かる。だがちょっと待つのでござる」
大野おじさんは温和な笑顔で立ち上がると、手を振って若い人達を諫め始めたわ。
「何を臆したかっ!」
誰ぞやの叫び声が。父上大石内蔵助はじっと目を閉じて考えてる。
「はっはっこの老いぼれいつ何時死しても良い覚悟はある。だが良く考えられい、今血気にはやり城を枕に討ち死にして何とする? 戦で被害を被るはいつでも民ぞ? 我らが殿が片手落ちの誤ったご政道で即日切腹となったは許しがたい、だがそれは民については何の関係も無い所ぞ」
シィ~ン
すっ凄い、大野おじさんの説得で若い人達が黙り込んだ!
「だ、だがっ民も領民、殿と運命を共にする者でゴザル!」
「そうだそうだっ」
苦し紛れの叫びが再び若い人達を勢い付ける。
「だまらっしゃい! 其方らは一体ご政道を何と心得るか? 我が常日頃塩田を開発し治水植林を致し赤字を解消するわ全て民の為ぞっ! それを我らの武士の無益な争いに巻き込むとは何と恥知らずやっ!」
シィ~ン
再び黙り込む若手の武士達。
「その通りぞっ大野殿の言われる通り、藩とは全て民の物ぞ。此処は大人しく謹慎するのだ」
「そうじゃ、弟君浅野大学様を立てお家再興を望むが本望、城を枕に討ち死になど持っての他!」
パチパチパチ
突然巻き起こる拍手、残念ながら父上の御主張はもはや誰の味方も無い様。口惜しや……くっ私は下唇を噛んだ。