衝撃の報告、慟哭の城!
うっみじかっ。
皆は短すぎる文面にイライラが募るばかり。
「短過ぎるわっ!! ええい、江戸屋敷の者共は何をしておる? 第二の駕籠はまだかっ!?」
いつも朗らかな大野おじさんの様子が変。でもこんな時だもの仕方無いわね。
「これこれ大野殿、殿の間近で殿の変事を見守られた江戸組の者達こそ大わらわ、我らがその様に苛立っては申し訳がありませんぞ。誤報かも知れぬ故平静を保つのじゃ」
「ははっこれはお見苦しき姿を」
大野さんもペコペコと頭を下げるし、家臣達も父上の落ち着き払った姿に感心してる。普段は頼りない昼行燈なんて言われてる父だけど、今の姿はマジリスペクト。
ー数時間後。
しかし……第二第三の駕籠は私達が望む誤報なんて物じゃ無かった。
『ゴメン、さっきのは書き間違い、実は殿は切腹……つづく』
『殿の切腹理由は勅使饗応役のあれ、ほれ、吉良とか……つづく』
さすがにイライラして来た。
『最終回・勅使饗応役御指南の高家肝煎吉良殿を殿中で刃傷に及び打ち損じ、即日切腹にあい果てられ……』
全容が知れた時に家臣の皆からも私からも言葉が出ませんでした。
「くっ喧嘩両成敗の原則は!?」
「これは片落ちでござる!!」
父上が静かに目を閉じる前で皆は泣き叫びました。
「許せん、断じて許せん!!」
「吉良討つべし!!」
「そうだ討つべし!!」
家臣達はいきり立って父に訴えます。けど父は相変わらず目を閉じたまま。
にゃ~~お~~
そんな私にすり寄って来たのは家臣猫のムササビ丸。このお城のマスコットも凄く悲しそう……
「おいで……」
「な~~ご~~」
そんな時に温和な大野様が動いたの。
「どうかなご家老、今日はこの様な大変な変事を知り皆の頭は冷静ではいられますまい。此処は一つ冷却期間を取り、数日後にいつも冷静な其方が我らの対応をお決めになるのは?」
さすが大野おじさん、私もそうするべきかと。
「うむ、実は大野殿、拙者第一陣の駕籠が到着以来、既にこの城の態度を決しておる」
「お、おおさすが大石殿じゃ!」
大野おじさんはぱあぁと顔が明るくなる。いつも似た意見の温和な人間同士、余程の信頼関係があるのね。
「これ皆の者騒ぐで無いぞ、これより大石殿よりこの城の身の振り方をお決めになる!」
大野さんが大声で言うと、いきり立っていた若者もなだめていたお年寄り達も、一斉に父上に注目したの。
「皆の者良く聞け、此処は御上の御沙汰を待ち、静かに蟄居するが良いであろう……」
「ふむふむ」
大野さんが笑顔で頷く。
「だが、我ら武門が御主君の御無念を前にして、係る恥を注がず何が侍ぞ? 日夜弓馬の鍛錬を続け石垣を築き城を堅固にして守っているは、ひとえにこの様な日の為であろう。よって儂は決意した、この城で一戦を交え、この真白き立派な赤穂城を枕に全員討ち死にと致す!!」
「そーそー、城を枕に討ち死に……何ぃーーーーーーーっ!?」
大野おじさんは目玉が飛び出る程に驚いて立ち上がりました。