千佳羅必殺羅刹剣!
ても、全然堀部安兵衛様も納得してる様子が無い!
「詭弁なり! 悪の幕府だ徳川将軍が暗愚と言えど、城で籠城とすれば民百姓にどんな迷惑を掛ける事となるか、さらに事件当事者となる吉良を野放しにして殿の御無念を晴らさずして何が武士かっ! 拙者あくまで吉良を討ちに江戸に下る所存にて」
一歩も引かない立派な方……いやいや父のご命令に従わない頑固な御方。でもこの御方の為に父上に従うつもりであった家臣達にも動揺が広がって来てるみたい。何とかしなきゃ。
ざわざわ……
「なぁ~堀部安兵衛、そう硬く考えるねえ! いざ戦となれば民百姓は逃がしてやるつもりじゃ。それよりもこの立派な赤穂のお城が、実戦で使われる姿を想像してワクワクせぬか? さぞ勇壮な事となろうて」
ぽんぽん
父上は堀部安兵衛を懐柔されるおつもりか、笑顔で肩を叩きながら言われた。これならこの頑固な御方だって。
「見とうありませぬな! あくまで吉良を討つべきかと」
ビシッ!
なんて頑固な御方なの?
ブチッ
「ええぃならば裏切り者として斬る! 千佳羅よ斬れ~~いっ」
うっやっぱりわたくしに斬れと?
カシ
震える手で刀を握る……けどこの人に勝てるのだろうか?
「ならばワシが勝てばこの女人を斬り捨てれば、吉良を討つとお決め下さるか?」
「それを言うならば千佳羅が見事貴様に勝てば、この場に居合わせた者は江戸組合わせて、籠城で納得して下さるな? 堀部安兵衛一人の死をもって皆の結束の証としたい!」
ひ、酷い。父上滅茶苦茶言い出したわ……でもこれも家名、やらなくっちゃ! 千佳羅がんばって堀部を切り捨てます!!
シャランッ
人々の息詰まる視線の中、二人は刀を抜いて構えあった。
「いざ尋常にやれーーい!」
「ちぇえーい!」
パシッ
「あっ」
気が付くと私の剣は畳に刺さっていた。強い、凄く強い。
「勝負あり申したな」
パチンッ
堀部さまは私の命までは取らない様、ホッ。
「この千佳羅は徒手空拳になってからが本番よ、さぁ行けっ」
父上ッ貴方は鬼ですか? しかしそこまでのご決心とは立派な方。
ビシッ
私は適当に構えてみる。
「あたら助けた命を……良いのですな?」
「父上~~?」
私は泣きながら父上のお顔を見たが厳しいまま。もはや潔く命を捨てるしかないのか!
「キエーーーッ!」
「寄らば斬る!!」
ビガ~~ッ!!
二人が交錯しようとする瞬間、激しい雷鳴が鳴り響いた。
「ヒ~やっぱり無理です!」
ぺたっ
私は頭を抱えて座り込んでしまう。
「アハハッボクだよ僕、ムササビ丸だよ! 千佳羅ちゃんまた助けてあげるよ。時を止めてる間に堀部とやらを滅多討ち乱打斬りにすれば良いよ!」
え? それはズルでは?
カシャッ
だけど何故か私は無言で刀を拾ってしまったのです……




