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やったー初登城! ……ても


 ー時は元禄14年3月19日朝。

 赤穂藩家老、大石内蔵助屋敷。

 雀はチュンチュンと鳴き爽やかな朝日が開け放たれた襖から畳に差す。


「千佳羅、ちから何をしているの? 今日はお城に初めて登城する日でしょう、しょっぱなから遅刻する様では家老の家の名折れ、立派なお父様に恥をかかせますよ!」


 大きな声で私を呼ぶのは母上の大石理玖。母上は身の丈6尺もあって昔はカブキ者として近隣で暴れ倒した荒れた過去があるらしいのだけど、決闘で父に倒されて以来ラブラブの家庭を築いたの……


「ふぁ~~ごめんなさい今出立致します!」


 私は尊敬すべき超家老の娘、大石千佳羅15歳! 今日からお城に登り父からの大いなる七光りを全身に受け、颯爽とサクセスストーリーを歩んで行くの!!


「ひゃーーチコクチコク!!」


 こうして私はパリッパリの干し飯の塊を口に咥え、走りながら我が城、赤穂城に登城した……




 ー赤穂城。

 私は白い石垣も眩しいお城に入って行きました。

 何でもこのお城は赤穂藩5万石に比してとても過大で立派なお城と言われているらしいの。将来家老として背負って行く身なのだから凄く大切にしなくっちゃ。塩やお米を収めてくれる領民の皆さんありがとう!! 


「と、殿ぉ~~~~」

「殿~~~何故!?」

「おいたわしや殿ォ~~~おおお」


 ん?

 何かの物真似大会? 何でセミみたいに柱にしがみ付いたり壁に張り付いて泣いたりしてるのかしら?


「お城って変なトコ……」


 皆何故殿殿言いながら泣き叫んでいるのだろう? まっいっか。そう言えば江戸の御殿様にはお会いした事は無いけれど、どの様な御方なのかしら。とにかく大広間に行って父上の横で将来の女家老の存在をアピールせねば。




 ー大広間。

 異様に張り詰めた空気が只ならぬ事態を想像させた。


「ふぁ~~」


 父上はまだかな?

 ガラッ

 あくびをしながら待っていると、襖が開けられて父上・家老大石内蔵助が入って来ました。けれどいつも温和で優しい父上の様子が何だかヘン。


「ご家老!!」

「家老!!」


 え、殿の次は家老連呼?


「うむ、皆も第一陣の早駕籠の噂は知っておろう……混乱無き様に単刀直入に言い申そう。かかる3月14日、我が主君……くっ浅野内匠頭は、何等かの理由により命をお絶たれになられた……詳細は第二第三の駕籠により詳らかになろうぞ、それまで皆には無暗に乱れる事無く平静を保てよ」


 え? 

 始めての登城の日、我が主君は亡くなっていました……

 シィーーン

 恐ろしい事実を突き付けられて騒いでいた皆も静まり返っています。


「何等かの理由とは何事なのですか?」


 家臣らを代表して質問した気の良さそうなお爺さんは大野知房さん、私も小さい時から凄く可愛がってもらったの。


「うむ、これを見られい!」


 ぴらりっ

 我が父は早駕籠がもたらした文を皆に見せたのだけど……


『我がご主君、無念の憤死……つづく。』


 え?

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