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斯くてドラゴンは人になる  作者: 冫メ况。
3章〜積年の愛
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積年の愛6

「なァ、カリア。」


スズキと別れて森の中に入ろうとしたところで、ロードが立ち止まって声をかけてきた。


「何だ?」

「賢者ヒスイたちは、何のためにドラゴンと共生しようとしてんだ?」

「さぁ…何でだろうな?」

「何で元ドラゴンのお前が知らねェんだよ…。」

「そう言われてもな…。さっきの話聞いてたら、ロードにも何となくわかるだろ?」

「…理由聞いても教えてくれねェッてか?」

「うん。俺もセラフィもそう思ってるから、聞いてすらないんだ。」

「気にならねェのか?」

「気にはなるけど…別に、賢者ヒスイたちは悪いことをしようとしてるわけじゃないだろうからな。賢者ヒスイに問い詰めてまで知りたいとは思わないな。」

「…信用しすぎじャねェか?」

「あ~…はは。言いたいことはわかる。」


ロードは、賢者ヒスイが肝心な部分を隠していることに不信感を抱いているのだろう。

悪いことでないのなら、隠す必要はない…と思っているのかもしれない。

そんなロードの心境を読み取れたような気がして、俺は少し笑いながら言葉を続けた。


「シャルの記憶の欠陥について、賢者ヒスイと話した時のことを覚えてるか?賢者ヒスイの口から話すことはできないけど、俺たちがその秘密を探ることは自由だって言ってたんだ。」

「…あんま覚えてねェ。んなこと言ッてたのか?」

「あぁ。多分、賢者ヒスイは何らかの制約があるせいで秘密を言えないだけで、秘密を知られること自体は良しとしているんだ。」

「…なるほどな。知られても良いッてんなら悪ィことじャなさそうだが…それなら制約なんざ必要ねェだろ。」

「制約があるって言うのは俺の予想だから、実際にあるかどうかは調べてみないとわからないな。」

「調べるッたッて…当てはあんのか?」

「まぁ、一応ある。」


賢者ヒスイの話が本当なら、紫竜は生前のユーベルトとオリファーについて知っているはずだ。

どこまで知っているかはわからないが、賢者ヒスイたちの秘密に関わる内容を知っている可能性はある。

紫竜に会うことができたら話をしたいと思っているが…そもそもどこにいるのかすらわからない。

手がかりがあるとすれば、ロードの故郷であるスティブ王国だな。

諸々落ち着いたら、紫竜を探す旅に出るのも良いかもしれない。


「…まァ、俺が気にしても仕方ねェか。すまねェ、俺が首突ッ込む話じャなかッたな。」

「いや、あんな話を聞いたら誰でも気になると思う。そんなことより、早く食材を獲って戻らないとラピスたちに怒られそうだ。」

「だな。んじャあ、さッさと行くか。俺はその辺で野草を取ッてて良いんだな?」

「あぁ。でも、森に入ってすぐのところだと動物が寄って来ないかもしれないから、ある程度奥まで進むと思う。」

「わかッた。明かりは火魔法使ッて良いんだよな?」

「あぁ。ただ、森に燃え移さないように気をつけるんだぞ。」

「…直前になッて脅すんじャねェよ。」


普通に注意喚起をしただけだが、ロードにプレッシャーをかけてしまったらしい。


「もしもの時は俺が何とかするから大丈夫だ。じゃあ、行こうか。」

「はァ…わかッた。」


俺とロードは火魔法で視界を確保しながら森の中へ入り、奥へと歩みを進めた。


────────────────────


野草を採取しながら森の奥へと進んでいると、俺たちに気づいた動物が寄って来た気配を感じた。


「お…寄って来た。」

「獲物か?」

「あぁ。でも小さい方が寄って来たな…2,3匹は狩っても良さそうだ。」

「小さい方…ッてどのくらい小せェんだよ。」

「多分、これは兎だな。」

「…兎?そんなに獰猛じャなさそうだな。」

「甘く見ないほうが良いぞ。俺たちが逃げられないように、周りを取り囲んでる。」

「囲まれてんのかよ。どのくらい居るんだ?」

「50は居るな。1匹1匹は大したことないけど、束になって襲って来たら脅威になる。でも、ロード1人でも対処できる程度だと思う。」

「…俺は全然自身ねェけどな。何で襲ッて来ねェんだ?」

「今は俺たちの様子を見てるみたいだな。」

「…どうすんだよ。」

「俺たちが狩る側だと示せば、自然と去って行くんじゃないか?2,3匹狩れば十分示せると思う。」

「…んじャあ頼んだ。」

「わかった。それじゃあロード、火を一瞬だけ消してくれないか?その後また火を灯してくれ。」


俺はそう言いながら、手のひらの上に生成した火を消した。


「一瞬でいいのか?」


俺はその問いに頷いて応えると、ロードは手のひらの上に生成した火を消した。

明かりの届かない森の奥に灯された唯一の明かりが消え、周囲は暗闇に包まれた。

こちらの様子を伺っていた兎たちは突然訪れた暗闇に戸惑い、判断が鈍るだろう。

俺はその一瞬の隙を貫き、標的として見定めていた3匹横に並んでいる兎の頭上に風魔法を展開した。

そしてその魔法を発動し、風の刃が兎3匹の首を同時に切り落とした。

それと同時に、ロードが再び火魔法を使って火を灯した。


「…何の音だ?」

「周りを取り囲んでいた兎が逃げたみたいだな。」

「何かしたのか?」

「あぁ、3匹狩り終わったところだ。他の兎がそれに気づいて逃げたんだろうな。」

「…俺が火消す意味あッたか?」

「意表を突いて、確実に仕留めたかったんだよ。」

「あァ…なるほどな。」


納得した様子で野草採取を続行したロードを横目に、俺は首を切り落とした兎に近付き、それらを拾って水魔法で汚れを落とした。

本で読んだ知識だが、獲物を仕留めたらすぐに血抜きをして、内臓を取り出す必要があるらしい。

腐敗の進行を遅らせるため…だったと記憶している。

俺はセラフィのように氷魔法を使えないため、水温を低くした水玉を生成して、その中に処理した兎肉を保存しておいたほうがいいかもしれない。

そんなことを考えながら獲物の処理をしていると、ロードが処理の様子を見に来た。


「肉の処理はまだ掛かりそうか?」

「もうすぐ終わるぞ。そっちは終わったのか?」

「あァ。この辺、全然人が来てねェみてェだな。食える野草だらけだッたぜ。」


ロードが持ってきていた麻袋はそれほど大きくはないが、採取した野草が詰め込まれており、はち切れんばかりに膨らんでいる。


「わざわざ野草を採取するためだけに、危険を犯してこの森に入る人間はいないんだろうな。」


夜ほどではないにしろ、この森は昼時に入っても危険だ。

森の奥の方へ意識を向けると、かなり強い気配を感じる。

恐らく露店の通りで見かけた護衛全員が束になっても勝てないだろう。


「その野草、全部食べれるのか?」

「生で食えるもんもあるが、下処理しなきャいけねェもんもある。」

「へぇ、そうなのか。と言うか、その知識はどこで身につけたんだ?」

「あァ…スラムで世話になッたジジイがいるッて話したの覚えてるか?」

「覚えてる。確か食事処を営んでるんだったか?」

「そうだ。普通ならスラムでそんなことできねェッて、お前ならそう思ッたんじャねェか?」

「まぁ、思ったな。でも、少なくともロードが世話になってる間はやっていけてたんだろ?」

「あァ、誰かから支援を受けてな。」

「…似たような話、スズキから聞いたばかりだな。」

「ん?あァ…賢者ヒスイじャねェぞ。詳しい事は聞いてねェが、ジジイとは知り合いじャねェみてェだからな。」

「じゃあ違うか。」

「…話戻すぞ。支援受けてるッつッても、それだけじャ足りねェから、ジジイと一緒にこうして狩りとか採取に行ッてたんだよ。」

「なるほど。その時に色々と教わったんだな。」

「そんなとこだ。まァ狩りの方はジジイに任せッぱなしだッたからよくわかんねェけどな。」

「次はロードが狩りやってみるか?」

「…いや、お前に任せる。結構時間かかッちまッたし、さッさと戻ろうぜ。」


無事食材を手に入れた俺たちは森を抜け、そのままセラフィたちが待つ場所へと向かった。


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