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斯くてドラゴンは人になる  作者: 冫メ况。
3章〜積年の愛
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積年の愛1

バンデンを捕えた後、俺とセラフィ、ロード、ラピスは王宮で数日の間世話になることになった。

俺とセラフィはバンデンの処分が終わった後に褒美を貰わなければならないため、それまで王宮で過ごさないかとアリウスに提案されたのだ。

特に断る理由も無いため、俺たちはアリウスの提案を受けることにした。クォーツ王国へ行くのは、褒美を貰い次第ということになりそうだ。

ロードとラピスにもその事を話すと、快く了承してくれた。ついでに王の間で起こった出来事も話したが、賢者ヒスイが口にした『カレー』と言う料理についてはロードですら知らないそうだ。


賢者ヒスイがバンデンに問うていたあの質問の真意は何だったのだろうか…。賢者ヒスイと言う人間については謎が深まるばかりだ。気になるところだが、差し当って何か問題があるわけでは無い。

それよりも、これからクォーツ王国へ向かおうとしている俺たちには他に気にすべき事がある。

王宮に居る数日の間、俺たちは王宮の書庫に入り浸り、創造神教について調べていた。

しかし、それは想定以上に難航していた。


「…やっぱりアリウスが言ってた通り、創造神教について書かれた本はあまり無いのかもしれないな。」

「そうかもな。料理の本もあんまりねェぞ。」

「…まだ探してたのか。道草食ってないで、ちゃんと探してくれ。」

「お前だッて、関係なさそうな本を何冊か読んでたじャねェか。」

「…それは後で必要になるんだよ。と言うか、そんなに気になるのか?賢者ヒスイが言ってた料理のこと。」

「知らねェ料理の名前聞いたら気になるだろ、普通。」

「まぁ…俺も気にはなるけど。」


料理そのものでは無く、賢者ヒスイの真意について気になっているだけだが…。

心の中でそう呟いていると、近くに居たラピスも会話に混ざって来た。


「正直、私も創造神教よりカレーって言う料理の方が気になるわ。」

「…ラピスも御者のグレースから聞いただろ?今クォーツ王国には創造神教が流行してて、暴徒も少なからず居るって。」

「それは聞いたけど…創造神教のことを調べて、何か意味あるの?」

「創造神教の掟というか…色々と規則があるんじゃないかと思ってな。俺たちが無意識に取った行動で、教徒たちの怒りの琴線に触れるような事があったら面倒だろ?」

「それはそうだけど…そんな繊細な宗教なのかしら?」

「それを調べるためにも、情報が必要なんだ。経典のようなものがあれば良いんだけどな…。」


そう言いながら、俺は周りを見渡した。

流石は王宮の書庫なだけあり、それはそれは大量の本が蓄えられていた。

縦、横、高さが50メートルはありそうなこの書庫は、吹き抜けの階段で4階構造となっている。各階には本棚が立ち並んであり、その棚一つ一つにびっしりと本が敷き詰められていた。

軽く中身を確認しながら探していたが、この数日で探せたのは全体の10分の1にも満たない。目的の本を見つけるには、もっと時間が必要だが…その時間はもう無いようだ。


「ねぇカリア。」

「何だ、セラフィ。」

「もうアリウスがこっちに向かって来てる。」


ガイウスの対応は早いもので、今日はガイウスから諸々の報告と褒美を受け取る日として予定されていた。そしてその後、直ぐにクォーツ王国へ出立することになっている。

アリウスがこちらに向かって来ているという事は、その諸々の準備ができて俺たちを迎えに来たのだろう。時刻はもう間もなく正午になる頃だった。


「…時間切れだな。賢者ヒスイや館の使用人たちが知っていれば、話は早かったんだけどな。」

「経典も無いって言ってたね。館に創造神の像はあるのに。」

「その像を置いたヒスイ様が、何で創造神教について何も知らねェんだよ。」


ロードの疑問はもっともだ。

本人は『使用人たちの服に合わせて置いてるだけだよ。雰囲気があるだろう?』と言っていたが…それが本当の理由なのかどうかは怪しいところだ。


「…まぁ、わからないものは仕方ないな。わかった事と言えば、創造神の名前が『モース』だということだけか。」

「あんまり役に立ちそうにないわね。」

「無いよりマシだろう。」


そんな話をしながら皆で出入口の扉へ歩いて行くと、ちょうど良く扉が開いてアリウスが顔を覗かせた。


「あ、セラフィ、カリア。準備ができたから、迎えに来たよ。」

「あぁ、今行く。それじゃあ、ロードたちはここで待っててくれ。諸々終わったらクォーツ王国へ向かおう。」

「あァ、わかッた。」

「行ってらっしゃい。」

「行ってきます。」


俺とセラフィ、アリウスは2人に見送られ、書庫を後にした。


────────────────────────────────────


「それで、創造神教について何かわかった?」


書庫から王の間へ向かう途中、アリウスは俺たちにそう尋ねて来た。


「いや、ほとんど収穫は無かったな。まだ全部確認できたわけじゃないし。」

「そんな数日で全部確認できるわけないでしょ…。まぁ仮にできたとしても、多分探してる本はないと思うわよ?私も書庫にある本は結構見てるけど、創造神教について書かれてそうな本なんて見た事無いもん。」

「…言われてみれば、館の図書室でも見た事ないかも。」

「あぁ…確かに俺も見た事ないな。」

「そもそも、この国で広く知られてないのよね。私だって、クォーツ王国から話が来るまで創造神教なんて知らなかったし。」

「そうだったのか。」


クォーツ王国で爆発的に流行しているだけで、世界的に有名な宗教では無いのか。


「賢者ヒスイが言ってたけど、クォーツ王国からの話って宗教勧誘なのか?」

「まぁ、そんな感じね。具体的に言うとね…ナイト王国で創造神教を広めるから、クォーツ王国との貿易に掛かる関税を軽減して欲しいとか、領土を広げたいから人手を貸して欲しい…とかね。」

「…クォーツ王国の人間は、創造神教にそれだけの価値があると思ってるのか。」

「そうみたいね。毎回断ってるんだけど、向こうも懲りずに遣いの人間を送ってくるのよ。あまり無下にもできないから、話だけ聞いて対応してるの。」

「…そうか。国の遣いの人間がそんな調子なら、その国の民はどうなっている事やら…。クォーツ王国へ行くのが不安になってきたな。」

「そんなに気にする必要ないと思う。」

「…セラフィ。お前は1番気にするべきだと思うんだ。」

「何が?」

「…その格好だよ。正直に言うと、お前の格好が1番心配だ。」

「え…何で?」

「いや…はたから見たらお前は修道女にしか見えないだろ?国の外からそんな格好の人間が来たと知られたら、厄介な教徒に絡まれると思わないか?」

「…まぁ、その時はその時で対処すればいい。」

「…着替える気は無いんだな。」


答えはわかりきっていたが、セラフィは俺の言葉に頷いて応えていた。

こうなっては仕方がない。俺の杞憂に終わることを願うとしよう。


「はい、この話はもう終わり。2人とも、準備は良い?」

「うん。」

「大丈夫だ。」

「うん。…開けて下さい。」

「「はっ!」」


王の間の前に到着した俺たちは、アリウスに先導されて開かれた扉の中へと入って行った。

俺が壊してしまった床は既に修復されており、いつものように赤い絨毯が敷かれていた。その両脇には貴族たちが並んでおり、俺たちを拍手で迎えてくれていた。

何とも落ち着かない雰囲気の中、俺たちが玉座へ歩いて行くと、先導していたアリウスが王座に座るガイウスの数メートル手前で立ち止まった。

俺とセラフィはその位置で片膝を付き、頭を少し下げた状態で待機した。


「…父様。お連れしました。」

「ご苦労。」


ガイウスに労われたアリウスは、周りの貴族と同様に絨毯の脇へ待機し、俺たちをガイウスと対面させた。


「面を上げよ。」


その一言で拍手が鳴り止み、俺とセラフィはガイウスと顔を合わせた。


「カリア君に、セラフィ君。此度は、白竜の村の調査を完遂しただけでなく、この国にのさばっていた悪の排除に助力してくれた事。ナイト王国国王として礼を言う。本当にありがとう。」

「…勿体なきお言葉、痛み入ります。」


俺がそう言いながら頭を下げると、セラフィも俺に倣って頭を下げた。


「…さて。その功を称えて、君たちには褒美を取らすが…先ずは、諸々の報告を行いたいと思う。」


ガイウスは一呼吸置いて、言葉を続けた。


「ここに居る者は皆知っているだろうが…罪人のバンデンは死刑と判決された。そして本日、私が手ずから裁きを下した。」

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