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斯くてドラゴンは人になる  作者: 冫メ况。
2章~白黒の番
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白黒の番36

すみません、遅れました。

4,5時間程眠っただろうか。

外が明るくなっていることに気が付き、目が覚めてしまった。


「ロードは…まだ寝てるか。」


俺はロードを起こさないようにベッドから降り、カーテンを少し開けて窓の外を覗いた。

俺とロードがいる部屋からは少し見えづらいが、王宮の入口に人や馬車が集まっていた。王宮は朝から忙しそうだ。

部屋にある時計を見ると、時刻は9時前。いつもなら朝食を摂っている時間だ。

そう言えば、昨日の夜からほとんど何も食べてなかったな。流石に空腹を感じずにはいられない。

ガイウスか賢者ヒスイに食事がしたい旨を伝えに行こうとして、部屋の出口である扉に意識を向けた。

その時、扉の奥でセラフィの魔力を感じ取った。更に意識を向けると、セラフィの傍に2人居ることがわかった。これはアリウスとラピスだろう。

俺は扉の前で3人を待つことにしたが、一向に入って来る気配がない。

俺たちの部屋に用があるのではなく、たまたま部屋の前で止まって居るだけか?それにしては話し声も聞こえないな。

そんなことを考えていると、静かに部屋の扉が開かれた。


「…入って来るならノックぐらいしたらどうだ?」

「───!」


扉を開けたアリウスが驚いた顔をして何か言ったように見えたが、微かに声が聞こえただけで何と言っているかはわからなかった。

アリウスは驚いた顔のまま、何事も無かったかのように扉を閉じた。


「また寝顔を覗きに来たのか?」


俺はアリウスが閉じた扉をすぐに開き、その先に居たセラフィ、アリウス、ラピスに話し掛けた。


「───。」

「セラフィ、防音用の結界を解いてくれ。流石に聞き取れない。」

「…おはよう、カリア。」

「おはよう。何しに来たんだ?」


『竜の涙』を大事そうに抱えているセラフィに問いかけると、セラフィは横にある給仕用の台車に視線を向けた。


「朝ごはんを持って来た。」

「結界を張ってノックもせずに入って来る必要は無いと思うけどな?」

「早く食べないとご飯冷めちゃうから、早く食べよ?」


セラフィもアリウスも、あくまでシラを切るつもりだな。ラピスもそっぽを向いており、我関せずといった様子だ。

まぁこれ以上問い詰めることの程でもないか。

食事を持って来てくれたことに免じて不問としよう。


「…まぁいいや。ロード、起きてるか?」

「…あァ、今起きた。」

「おはよう。朝飯食べるか?」

「あァ…腹が減ッて仕方ねェ。」

「じゃあ丁度いいな。みんなで食べるか。」


俺はロードを起こし、セラフィたちを部屋に招き入れた。

そして給仕用の台車から朝食を取り出し、備え付けの机に並べて皆で食卓を囲んだ。


「そう言えば王宮の前に人が集まってたけど、ここでは毎日あんな感じなのか?」

「あぁ、うん。今日は特に集まってると思う。父様が国中の貴族全員に緊急招集をかけたからね。」

「裁判のためにか?」

「うん、そうだと思う。普通はそんな事しないんだけど、今回は何か理由があって集めてるみたい。」

「…そうか。また式典の時みたいに人が来るのか?」

「うん、あの時と同じくらい人が来るけど…何かまずかった?」

「危険じゃないか?バンデンが何を仕出かすかわからないぞ?」

「逆に、人の目があったら何もできないんじゃない?」

「罪が確定すれば、強行手段に出る可能性があるだろう?」

「それは…カリアもセラフィも居るし、ヒスイ様だって居るから問題無いと思うけど。」

「…確かに。カリアとセラフィとヒスイ様が居たら何もできないわよね…。」

「俺がバンデンの野郎だッたら絶望するぜ。」


戦力差で言えば確かにそうかもしれない。

だが、バンデンは記憶を改ざんする魔法が使える。

魔力を持たない人間にしか使えないみたいだが、潜在的な危険がある。


「そう言えばセラフィ。バンデンの魔法のこと、どう思う?」

「どうって?」

「固有魔法なのは間違い無いと思うけど、本当に魔力が無い人間にしか使えないと思うか?」

「…あの場でそんな嘘をつくとは思えない。他者に直接干渉する魔法は、相手が魔力を持ってるだけで難易度がかなり変わるから、ただバンデンの魔法の扱いが上手くないだけだと思う。」

「それって、どう難しいの?」

「…例えば治癒魔法を使う時、まず私の魔力を相手の身体に流す必要があるの。その時、魔力を持たない人なら流すのは簡単だけど、魔力を持ってる人に流すのは簡単じゃない。自分の魔力の性質を、相手の魔力の性質に合わせないといけないから。」

「その、魔力の性質を相手に合わせるのが難しいってこと?」

「うん。」


セラフィをして難しいと言うなら、バンデンにできないと言うのも頷けるな。


「セラフィが難しいって言っちゃったら、誰にもできないんじゃないかしら…。」


ラピスも俺と同じような感想を抱いたようだ。


「少なくとも、ロードはできるという事になるよな?」

「そうみてェだな。言われてみりャあ、そんなことしてるような気もしなくもねェな。」

「感覚派ね…。私はそう言う魔法使わないからよくわからないけど、できない自信しかないわ。」

「ラピスも魔力の性質を変えれるようにならないと、木操魔法は使えないよ。」

「…え?土魔法と同じ要領だって言ってなかったっけ…?」

「自然にも魔力が宿ってるのは知ってるでしょ?ラピスの魔力の性質は大地のそれと近いから、土魔法が簡単に使えるけど…木操魔法を使いたいなら、木が持つ魔力に性質を合わせないといけない。」

「そんなぁ〜。」

「ちゃんと教えてあげるから、頑張って。」

「…うん、頑張る。ありがと。」


話は逸れたが、セラフィの言う理屈は理解できた。

バンデンの固有魔法も同じ理屈なら、バンデンの魔法技能が高くなくて助かったと言えよう。

そんな話をしながら朝食を終えた頃、部屋の扉がノックされた。


「アリウス様。いらっしゃいますでしょうか?」

「あ、入って下さい。」

「失礼致します。」


扉が開き現れたのは、使用人の制服を着た女性だった。

その女性は部屋の中に入るや否や、俺とロードに丁寧なお辞儀をしてきた。


「カリア様、ロード様。おはようございます。お食事中に申し訳ございません。」

「おはよう。もう食べ終わってるから気にしなくていい。」

「ありがとうございます。」

「何かあったの?」

「はい、アリウス様。陛下がお呼びでございます。賢者のお弟子様であるお二方も連れてくるようにと仰せつかっております。」

「あれ、もう準備できたのかな。…わかりました。すぐ向かいます。」

「私とロードはここで待ってるね。」

「うん。カリア、セラフィ。行きましょう。」


そうして俺とセラフィ、アリウスは、使用人の女性に連れられて執務室へと向かった。


─────────────────────────────────


「陛下。お連れしました。」

「入れ。」


執務室の中には、相変わらずガイウスと賢者ヒスイが居た。


「案内ご苦労。下がれ。」

「はい。失礼します。」


使用人はガイウスに言われ、速やかに退出して扉を閉めた。

普段のガイウスと王としてのガイウスでは雰囲気が違うな。

これからバンデンの…ミリィを殺した男の裁判をするにあたり、気が張り詰めているのかもしれない。


「父様、準備が整ったのですか?」

「あぁ、もう少しで整う。その前に少し話したい事があってな。」


これから執り行われる裁判の件であることは間違いないだろう。

俺もガイウスと話しておきたいことがあったため丁度良い。


「話と言うのは、バンデンの魔法についてだ。恐らく、記憶の改ざんを受けているのはトール君だけではない。」

「…俺も、同じことを話そうと思っていた。その言い方だと、心当たりがあるんだな?」

「あぁ、その通りだ。この国には魔力を持たない貴族も少なくない。その貴族たちのほとんどが記憶を改ざんされているだろう。」

「その貴族たちも集めてるんだろう?裁判に出席させて大丈夫なのか?」

「手荒なことをする手合いではないから心配しなくても良い。仮に暴動を起こしたとしても、護衛の騎士をその貴族たちの周辺に配置してある。制圧は問題無くできる。」

「一応確認だが、その護衛の騎士は魔力持ちか?」

「当然だ。」

「それなら問題はなさそうだな。」

「そっちの方は問題無いと思うんだけどね…問題はトールの方だ。私やセラフィに気付かれずに尾行をして見せた彼の実力は、私やガイウスでは測れない。裁判の場で何をするか予測できなくて、手の打ちようが無いんだ。一応、バンデンやトールの周囲にも護衛の騎士は配置してあるけど…それだけで制圧できるとは思えない。」


トールを裁判に同席させるのは、シャルの記憶を見せて記憶が戻るか確かめたいからだろう。


「トールの対応を、俺に任せたいということか。」

「トールの尾行に気付いた君なら、任せられると判断した。」

「わかった。それなら任せてくれて大丈夫だ。バンデンが、シャルの記憶を黙って大人しく見るとは限らないからな。」

「助かるよ。ありがとう。」


トールは大人しくしていると思うが、特に話す必要もないだろう。

俺の返答を聞いたガイウスは、準備が整ったと言わんばかりに頷き立ち上がった。


「さて、それでは行こうか。」


そうして俺たちはガイウスに連れられて、王の間へと向かった。

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