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斯くてドラゴンは人になる  作者: 冫メ况。
2章~白黒の番
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白黒の番12

「あれ…俺、もしかして入れてる?」

「入れてるね…何で?」

「…何でだろうな?」

「あぁ…なるほど。これなら私も入れる。」


結界を解析していたセラフィが何やら納得した様子で歩みを進め、俺と同じ位置まで来ることができた。


「私だけ入れないんだ…。何で?」

「アリウスだけ入れないというより、私たちだから入れたって言った方が正しいかも。」

「…なるほど。」


黒竜がこの村を自由に出入りできたのは、この結界がドラゴンを対象としていなかったからなのだろう。

俺とセラフィは、ドラゴンと判定されたらしい。


「とりあえず、もらったお弁当を食べながら話をしよう。」

「そうだな。」


俺とセラフィは結界の外に出てアリウスと合流し、昼食を摂ることにした。


「ねぇ。カリアとセラフィだから入れたって、どういうこと?」

「…俺たちが白竜より強いから、結界の効果も俺たちには効かないんだ。」

「…へぇ。さすがは賢者の弟子だね。」


咄嗟に嘘を吐いてしまったが、意外と簡単に誤魔化せたな。


「それで、私はどうしたらいいの?私も中に入りたいんだけど…。」

「うん…それなんだけど、カリア。先に入って、中の様子を見てきてくれる?私はアリウスが入れるように、結界の構造を改ざんしてみる。」

「そうか?俺もアリウスが入れるようになるまで待ってるけど。」

「…カリア。さっき結界の中に入った時、白竜と黒竜の魔力を感じた。」

「…!」

「…そうか。やっぱり結界で魔力が遮られてたんだな。」

「そうみたい。」

「…じゃあ、白竜は生きてるの?」

「うん、生きてる。…でも、白竜の魔力が微弱過ぎる。最低限の生命活動をしてるだけって言われても、おかしくないくらい。」

「…そんな。」

「…わかった。黒竜も居るなら、確かに俺一人で行った方が良さそうだな。」

「今更だけど、カリア一人で黒竜を…相手にできるんだよね?」

「うん。俺のことは気にしなくて大丈夫だ。…ごちそうさま。」

「食べるの早いね。」

「早めに村の中に入って、黒竜と話をつけて来ようと思う。」

「そう。行ってらっしゃい。」

「…行ってらっしゃい。気をつけてね。」

「あぁ、行って来る。」


────────────────────────


俺は木々を避けながら結界の中へと進んで行くと、村が見えて来た。

そこには見覚えのある造りの家があった。確かワーグが建築担当と言っていたから、これもワーグが建てたものだろう。

村の中に入って一通り見て回ったが、雑草が生い茂っていて、通り道も見えない。20年近く放置されているから当然か。

そしてゾル爺の言った通り、一部の家が壊れている。村の入り口らしき場所は地面が抉れた跡があったが、これも黒竜が暴れた跡だろう。

確かガイウスは、村の奥に行くと見渡す限りの草原が広がっていて、そこに白竜が居たと言っていたな。


「…村の奥。入口の反対側だと思ったけど…。」


入口の反対側に来てみたが、大きな家が大破したらしく、木材の塊がそこかしこに散っていた。


「ここは…もともとイルミナスの家だったのかもな。…ん?」


一番大きな木材の塊の後ろに、獣道を見つけた。

元々狭い道だったのが、時間が経って更に狭くなったようだ。恐らくこの先に、白竜と黒竜が居るに違いない。

俺はその獣道に足を踏み入れ、奥へと歩みを進めた。


────────────────────────


「ねぇ、セラフィ。」

「ん、何?」


カリアが結界の中に入った後、昼食を終えた私は結界の解析と改ざんを試みていた。


「ちょっと気になったんだけど…カリアとセラフィって、白竜と黒竜のことをよく知ってる…って言うか、知り過ぎだと思うんだけど?」

「知り過ぎ?」

「うん。…最初は本か何かで知ったのかなって思ったけど、カリアは黒竜の強さを知ってる節があるし、セラフィは白竜や黒竜の魔力を知ってるし…流石にそれは、本の知識じゃ説明が付かないよね?」


…確かに。アリウスの前で軽率な言動をしていたことに気付かされた。

とにかく誤魔化さなければと思い、考え込んで黙ってしまった私に、アリウスがさらに言葉を続けた。


「あぁ…セラフィ?別に問い詰めようと思ってたわけじゃなくて…。やっぱりそれは、二人の隠しごとに関係するのかなって、思って。」


ここまで言われたら、誤魔化すことはできない。


「…アリウスの言う通り、私たちの秘密に関わってる。でも、まだ言えない。」

「…ラピスとロードも一緒に居る時に話したいって、言ってたね。」

「それもある。けど、一番は…私たちに、秘密を明かす勇気がまだ無いの。」

「…勇気が、要ることなの?」

「うん。だから、もう少しだけ待ってて欲しい。いつか、きっと話すから。」

「…うん、わかった。」


もしかしたら、アリウスは自力で、私たちがドラゴンだということに辿り着くかもしれない。

皆に話さないといけなくなる日は近いかもしれないよ、カリア。


────────────────────────


村の奥に続く獣道を進むこと数分。開けた場所が見えてきた。ガイウスが言っていた草原だ。

道が合っていたことに安堵した俺は、歩調を早めた。


「…!」


その時、上空からただならぬ気配を感じた。

これは…黒竜で間違いない。俺の存在に気付いたらしい。

黒竜に限った話では無いが、セラフィ程に魔力感知に長けてはいないため、魔力だけでは俺が赤竜だと断定することはできないだろう。話し合いに応じてもらう必要がある。

そう思っていると、黒竜が獣道の出口付近に降り立ち、口を開いた。


「咆哮魔法か…!待て!黒竜!──────がァッ!」


黒竜はいきなり咆哮魔法を放って来た。

身体強化魔法での防御は間に合ったが、俺はそのまま黒竜の放った魔力の塊と一緒に獣道から押し出され、村に戻って来てしまった。

魔力の塊の勢いは衰えることを知らず、このままでは無事な建物まで破壊してしまう。

アリウスもこの村を見たいだろうし、これ以上村を壊したくはない。

俺は身体強化魔法の出力を高め、黒竜の咆哮魔法を上空に弾き飛ばした。


「…ふぅ。俺一人で来たのは正解だったな。」


黒竜の咆哮魔法をまともに受けてしまったが、大した傷も無い。

これなら思った通り、一人でも黒竜を相手にできそうだ。

追い打ちをかけて来ると思って警戒していたが、黒竜は空を飛び、俺の様子を観察しているようだった。

両翼を失っているというのに、器用なやつだ。

俺が無事であることを確認した黒竜は、俺の正面に荒々しく降り立った。


「随分手荒い歓迎だな、黒竜。」

「歓迎などしておらん。貴様、どうやってワシの魔法を弾き飛ばした?」

「身体強化魔法を使っただけだ。村を壊したくなかったから、上に弾き飛ばした。」

「…はっ。人間の分際で、そのようなことができるはずなかろう。運良く軌道をずらせただけで思い上がるな、人間。」

「…まぁ話を聞いてくれ。複雑な事情があるんだ。」

「人間と話すことなど無い。消えろ。」


黒竜は再び咆哮魔法を放とうとしている。

今度は俺も身体強化魔法を使い、万全の体勢で応じた。


「ハァ!」


俺は黒竜が放った魔力の塊を迎え撃つように殴り掛かった。

魔力の塊に触れた瞬間、凄まじい衝撃が拳から伝わってきた。だが、これなら押し切れる。

そのまま力比べをするようにせめぎ合っていたが、やがて魔力の塊は大破し、霧散していった。


「…今度は相殺したぞ。これも、俺の運が良いからなのか?」

「…貴様、本当に人間か?」

「おぉ、良くぞ聞いてくれた。俺はもともと赤竜だったけど、人間に転生したんだ。」

「…赤竜?人間に転生?そんなもの、信じられるわけなかろう。」

「まぁ、そうだろうな。どうしたら信じてくれるんだ?」

「…咆哮魔法を使って見せよ。貴様が本当に赤竜なら使えるはずだ。」

「咆哮魔法は使えるけど…この村が消し炭になるからダメだ。」

「はっ。体のいい理由を持って来よって。ますます信じられんな。」

「…困ったな。意外と証明するのが難しい。戻ってセラフィに相談して来るか…。」


俺が赤竜だとわかってくれれば話もしやすくなると思っていたが、俺が赤竜だと言う証明材料を用意していなかった。


「このまま帰すとでも思っておるのか?貴様のような危険な人間は、ここで始末しておかねば気が休まらん。」

「いや…俺はお前と敵対するつもりは無い。お前ならそのくらいわかるだろう?」

「今はそうだとしても、いつ気が変わるかわかったものでは無いからな。」

「はぁ…。じゃあ俺が赤竜だと証明しよう。俺はお前が一番好きな食べ物を知っている。」

「…言ってみろ。」

「確かリンゴが好きだと言っていたはずだ。」

「…そのくらい、人間の間で広まりそうな知識だ。それに、赤竜だけが知っているものでは無い。」

「…そうか。俺だけが知っていること…。なぁ黒竜。赤竜だけが知っている秘密みたいなものって無いか?」

「知らん。」

「少しは思い出そうとしてくれ…。」


咆哮魔法を使うしか証明する方法は無いか…。アリウスには悪いが、できるだけ弱く調整して使えば…いや待てよ?


「…さっきの草原なら、咆哮魔法を使っても良さそうだな。」

「あそこは…ダメだ。」

「えぇ…どうしてだ?」

「…。」

「白竜が居るからか?」

「…。」

「はぁ…。ちなみに白竜が居ることはわかってるからな?セラフィが…いや、青竜が魔力感知で把握してるんだ。」

「…まさか、青竜まで人間に転生したと?」

「あぁ、その通りだ。」

「…あり得ん。」

「複雑な事情があるって言っただろう。別に、白竜に向かって咆哮魔法を放つわけじゃないんだ。離れていれば巻き込むことは無い。」

「…白竜は今眠っていているのだ。貴様のような危険な人間を近づけるわけにはいかん。」


白竜の魔力が微弱過ぎて、最低限の生命活動をしているようだと、セラフィが言っていたな。

眠っているということは、話ができる状態ではなさそうだ。


「ずっと眠っているのか?」

「…そうだ。」

「それでお前は…白竜を守るために、ずっとそばに居るのか?」

「そんなことはどうでも良かろう。早くお前が赤竜だと言うことを証明せんか。」

「とは言ってもな…。お前との記憶が古すぎて、思い出すのに苦労してるんだ。」

「ワシとてそうだ。」


こいつ…思い出すのが面倒臭いから俺に思い出させようとしてるな?


「…そう言えば、お前平地で寝るのを嫌ってなかったか?ここではどうやって寝てるんだ?」

「何の話だ?ワシは普通に平地で寝ておるぞ。」

「いや、確かに黒竜は平地で寝るのを嫌ってたはずだ…。なんでだったかな…。」

「適当なことを言って誤魔化せるとでも思ったか?」

「待ってくれ…思い出せそう…。あ!思い出したぞ黒竜!確か平地で寝ると、尻尾を抱き抱えて寝る癖があったよな?」

「…?…ぁ。」

「あ?」

「…昔のことすぎて忘れておったわ。初めて赤竜に言われて気付いたのを思い出したぞ。…お主、本当に赤竜なのか?」

「最初からそう言ってるだろう…。」


俺が赤竜だと言うことを、黒竜はやっとわかってくれたみたいだ。


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