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斯くてドラゴンは人になる  作者: 冫メ况。
2章~白黒の番
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白黒の番10

「ごめんねぇ…こんな乱暴なやり方は、私たちとて本意じゃないのさ。白竜の村には、恐らくまだ黒竜が居る。気性が荒れている黒竜と出会ってしまったら、殺されてしまうよ。」

「大丈夫だ。俺たちは死なない。」

「どこにそんな保証がある。」

「俺とセラフィは、賢者ヒスイの弟子として認められたんだ。黒竜相手でも、俺だけで十分渡り合えると自負している。」

「…お前さんら、賢者の弟子になっとったんか。だが、危険なことには変わらん。」

「…危険なことは重々承知です。でも、お願いします…必ず生きて帰りますから…!」

「ダメだ。俺たちの目が黒い内は諦めてくれ。」

「俺たちが諦めるまで、このまま拘束するつもりなのか?」

「…そうだ。お前さんらが諦めるまで、根気強く説得するつもりだ。」


俺たちを死なせたくないという気持ちは伝わってくるし、理解もできる。

確かに、気性が荒れている黒竜が危険だということは言わずもがなだ。俺が逆の立場でも、止めていただろう。

だが今の俺なら、黒竜を一人で相手取ることができると確信している。


「ねぇカリア。」

「なんだセラフィ。」

「ラピスにいいお土産ができた。」


木を操る魔法のことか?

俺も思ったことだが、何とも呑気な…いや、そういうことか。


「そうだな、きっと喜ぶぞ。」

「ちょっと二人とも…こんな状況で何の話をしてるのよ…。」

「あぁいや、なんでもない。とにかく、俺たちも諦めるつもりは無い。」

「あなたたちは黒竜に会ったことも無ければ、その強さも知らないだろう?強い人間が束になれば、かろうじて相手になるかもしれないけれど…あなたたちでは手も足も出ないさ。」

「村長たちも、俺やセラフィの強さは知らないだろう?さっきも言ったけど、黒竜は俺一人で何とかできる自信がある。信じてくれないか?」

「賢者の弟子になって、気が大きくなっとるだけだ。カリア、お前さんは身の程を弁えとると思っとったが、まだ未熟らしいな。」

「…私も、黒竜なら一人で倒すことができる自信がある。」

「セラフィ…お前さんまで…。」

「私はそれなりの根拠がある。ゾル爺たちは、対竜魔法の存在は知ってる?」

「…話には聞いたことがある。だがあれは、魔法使いが複数人おらんと使えん魔法のはずだ。」

「普通はそうだけど、私は一人で使うことができる。」


賢者の館で世話になっていた時、セラフィは対竜魔法を習得していた。

俺たちの身体を実験台にすることは流石にできなかったため、実際にドラゴンに向けて使ったことは無いが、セラフィが使えると言うのであれば使えるのだろう。


「…そうだったとしても、実際に使うところを見るまでは信じられん。」


今の状況では、俺の強さが黒竜に通用することも、セラフィの対竜魔法も、証明することができない。

話し合いで村長たちに納得してもらうのが理想だが、それはもう叶わないだろう。

村長たちには悪いが、強引にでも行かせてもらおう。


「…ゾル爺たちが俺たちの強さを信用できないのはわかる。俺たちも、ちゃんと証明できないのはすまないと思っている。だから、俺たちの言葉を安心材料にして欲しい。」

「…どういうことだ?」

「俺たちが白竜の村へ行った後、俺たちのことを信じて待っていて欲しいということだ。俺たちをいくら止めても、俺たちが白竜の村へ行く未来は変えられない。」

「ここから抜け出せるとでも?」

「あぁ、そうだ。」

「…まぁ聞け。お前たちを縛っている木はただの木じゃない。並の力では破壊することもできず、炎を以てしても焼き切ることができない程に強化された木だ。それに、その椅子だけじゃない。この家に使われている全ての木が俺の武器になる。俺を倒さない限り、俺の木操魔法からは逃れられないぞ。」

「…カリア、セラフィ。」


アリウスが心配そうな目を俺たちに向けてきた。

俺たちがこの状況を打開できないのではないか、という心配ではなく、暴力的に打開してしまうのではないかという心配をしているのだろう。


「アリウス。心配しなくても大丈夫。…カリア、いいよね?」


もちろん、俺たちも暴力的な打開は望むところでは無い。

ゾル爺たちも、俺たちが危害を加えないことを織り込んで、強引な説得に踏み切ったのだろう。


「あぁ、頼む。」


俺が頷き応えると、セラフィは魔法を使って拘束を解いた。


「…!拘束が解けた…!?」

「ワーグ!拘束し直せ!」

「やってるが…木が言うこと聞かねぇ…!」

「ワーグさん。私からこの木の制御を奪うことはできない。」

「…どういうことだ?お前さんが木操魔法を使っとるとでも言うのか?」

「たった今使えるようになった。」

「…!」

「セラフィは魔法を見ただけで、その魔法が使えるようになるんだ。一般魔法に限るけど。」

「そんな、バカな話が…。」

「実際に魔法を使ってるワーグさんならわかるはず。」

「くっ…!」

「…ねぇセラフィ。カリアの拘束は解いてあげないの?」

「え…解いた方がいいかな?」

「え…木の制御の奪い合いで、俺の拘束を解く余裕が無いと思ってたんだけど…。」

「うん。解こうと思えば解けるけど、良いの?」

「何がだ?」

「安心材料は多い方が良いでしょ?」

「…あぁ、そういうことか。」


俺の強さも、少しは示しておいた方が良いということか。


「申し訳ないけど、この椅子を壊させてもらうぞ。」

「…イカロスが身体強化魔法を使って、全力を出しても抑え込める拘束だぞ。それこそできるわけが…。」

「歯切れが悪いな、ワーグ。心のどこかでは、壊せてしまうと思ってるんじゃないか?」


俺はそう言いながら、身体強化魔法を使用せず、身体に力を込めた。

俺を拘束していた木はミシミシと悲鳴をあげながらひび割れて行き、程なくして大破した。


「そんな…ありえない。」


驚きを隠せなかったのか、後ろからイカロスの声が聞こえてきた。


「ちなみに身体強化魔法は使ってない。純粋な俺の力だけで壊した。」

「なぁ…っ!」

「まぁ信じるか信じないかなんて関係ない。さっきも言ったけど、安心材料にして欲しい。」

「…カリア様!無礼をお許し下さい!」


イカロスがそう言いながら、俺に殴りかかって来た。

わかりやすく、俺の顔目掛けて拳を飛ばして来ている。恐らく身体強化魔法も使い、全力で拳を当てるつもりだろう。

今度は俺も身体強化魔法を使って、イカロスの拳を人差し指で迎えた。

その指でイカロスの拳に触れ、勢いを殺しながら受け止めて見せた。


「…そんな…指1本で…。」

「俺の力を試したかったんだろう?全てを見せることはできてないけど、ある程度は理解できたはずだ。」

「…これで全力では無い…と。」

「そうだ。」

「…ゾル様、ワーグ様…そして村長。我々はカリア様お一人にさえ、逆立ちしても敵いません…。」

「そんな…。」

「…お前さんらも、伊達に賢者の弟子やっとらんってことか。」

「あぁ。できれば円満に解決したかったけど、そんな事を言ってられない状況だったから、少し強引な方法を取らせてもらった。…申し訳ないとは思っている。」

「…先に仕掛けたのはこっちだ。俺たちは文句言えんよ。」

「ゾルの言う通りだな…。村長、俺たちにはどうすることもできなさそうだ。」

「…アリウス。」

「…はい。」

「どうしても…行ってしまうのかい?」

「…私は、母様のことを知るためにここまで来ました。」

「それなら…私がたくさん教えてあげられる。アリウスだけでも、ここに残ってくれないかい…?」

「おばあ様からは、色々と母様のことを聞かせて頂いて感謝しております。…でも、私が1番知りたいことを、おばあ様は知っていますか?」

「何が…何が知りたいんだい?」

「…お母様がなぜ死んだのか。それを知るためにここに来たと言っても過言ではありません。」

「それは…っ。」


イルミナスはアリウスから顔を背けた。


「知っているのですか?」

「…。」


イルミナスは顔を背けたまま、黙りこくってしまった。


「…それは誰も知らんことだ。白竜の村の誰も、ミリィの死については知らんのだ…。ナイト王国の連中は白竜が殺したなんて言っとるが…それが有り得ん話なのは、村の皆もわかっとる。」

「…白竜なら知っているかもしれません。」

「…なるほど。白竜にそのことを聞きに行くつもりか…。だが白竜は大怪我を負っとったはずだ。もう生きとらんぞ?」

「いや、白竜の村の周りの結界はまだ健在なんだ。術者の白竜が死んでいれば、その結界も解けているはずだ。」

「まだ生きとると言うんか?…信じられん。」

「それを確かめに行くんだ。」

「…そうだったんか。」


イルミナスが背けていた顔をアリウスに戻し、難しそうな顔をしながら話しかけた。


「…わかったよ。今日はもう遅い。宿でしっかり休んで、明日発つといい。」

「おばあ様…ありがとうございます。」

「ただし、絶対に生きて帰って来ておくれ…。カリア、セラフィ。さっき、あんなに失礼を働いた老いぼれが言っていいことじゃないのは、わかっている。本当に身勝手なわがままさ…。この子を、守って欲しい…!」

「…あぁ、元よりそのつもりだ。それに、村長たちが、俺たちを死なせたくないと言う気持ちはちゃんと伝わって来てる。だから気にしなくていい。」

「…ありがとう。」


その後、俺たちは村の宿を借りて夜を明かす運びとなった。


「…こちらが宿になります。」


俺たちはイカロスに先導され、村長たちとともに宿の前まで来た。


「中に居る者が部屋に案内致します。」

「わかった。案内ありがとう。」

「…とんでもございません。」

「…アリウス、カリア、セラフィ。」


宿に入る前に、改めて村長に呼ばれた。


「明日、ここを発つ前に私の家に寄ってくれるかい?渡したい物がある。」

「わかりました。」

「…それじゃあ、しっかり休むんだよ。」

「はい、ありがとうございます。…おやすみなさい。」

「…おやすみ、アリウス。」


俺たちも就寝の挨拶をすると、村長たちは自分の家に戻って行った。


俺たちも明日に備えて、宿に入り部屋を借りた。

宿の中に居た人に案内され、俺たちはそれぞれ部屋を充てがってもらった。


「じゃあ、二人ともおやすみ。」

「うん、おやすみ。」

「…おやすみなさい。」


俺は部屋に入り、備え付けのベッドに腰を下ろした。


「今日は色々あったけど…まだ体力には余裕があるな。館で鍛えておいて良かった。」


俺が心中を吐露していると、俺の部屋の前にセラフィが居るのを感じた。


「…どうした?」


俺が扉越しに話しかけると、扉が開いてセラフィが顔を覗かせた。


「入っていい?」

「あぁ、いいよ。どうしたんだ?」

「うん…ちょっと話したいことがあって。」


そう言いながら、セラフィは俺の隣に腰掛けた。

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