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斯くてドラゴンは人になる  作者: 冫メ况。
2章~白黒の番
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白黒の番9

「白竜と黒竜が…逢引き?」

「あぁ、そうか。ガイウスはあんま白竜の村の中におらんかったから知らんのか。」

「本当に…?」


俺とセラフィはゾル爺の言葉が信じられず、顔を見合わせた。

ゾル爺たちの勘違いか…それとも、白竜も黒竜も俺たちに隠していたのか。


「まぁ白竜の村の人間なら皆知っとることだ。実際に番かどうかは知らんが、特別な仲なのは間違いないだろう。」

「…どうしてそう言えるんだ?」

「さっきの話の続きだ。大けがを負った白竜を見て、黒竜が暴れ始めたそうだ。お前さんらがここに来たってことは、ナイト王国と白竜の村を繋ぐ一本道が、使いもんにならんくなっとるのは知っとるだろう?」

「…あぁ。巨大なクレーターがあるとか…。もしかして黒竜が暴れた跡か?」

「そうらしい。」


もし本当に、白竜と黒竜が番のような仲だったとして…黒竜は、人間が白竜に致命傷を負わせたことを知り、人間を滅ぼそうと思う程に怒り狂った…ということか?


「俺は見てないが、白竜の村の一部も黒竜が暴れた被害に遭ったらしい。白竜の村の住人はそんな状態の黒竜から逃げて、辿り着いたのがここってわけだ。」

「そうだったのか…。」

「俺は館で働いとったから、そんなことになっとるとは知らんかった。この村をある程度開拓して整備し終わった後に、俺に報せが届いたんだ。」

「館の料理長を辞めたのって、それが理由だったりするのか?働くのに厳しい年齢になったから辞めたって聞いてるけど。」

「まぁ、歳が理由ってのも嘘じゃない。辞めるのにちょうどいいタイミングだっただけだ。新しい村の復興を手伝いたい気持ちが大きかったのは間違いないがな。…話が逸れちまったが、俺が知っとる話はここまでだ。」

「うん。ありがとう、ゾル爺。」

「…ゾルさん。」

「ん、アリウス。何か聞きたいことがあるなら聞いてくれていいぞ。」

「はい。村長は私の…おばあ様になるのですか?」


アリウスの問いにゾル爺が答えようと口を開きかけたが、それよりも先にイルミナスが口を開いた。


「私から、説明するわ。」

「…村長さん。」

「ごめんねアリウス。もう落ち着いたから、大丈夫。私から説明させておくれ。」


イルミナスは一呼吸おいて、話を続けた。


「…私とミリィは、実の親子じゃあないの。ミリィの実の親は、あの子を産んだ後にこの村から出て行ったからねぇ。」

「…母様を残して?」

「そうさ。元々あの二人は、白竜のことを良く思ってなかったんだ。そんな二人の子が、巫女に選ばれちゃってねぇ。誰にも相談しないで、揺り篭と手紙を私の家の前に置いて、村から出て行ってしまったのさ。」

「…手紙には、なんと書いてあったのですか?」

「…竜の巫女としてミリィを育てて行ける自信がないから、代わりに育てて欲しいと。そして、自分たちはこの村から出ていく、と。それだけだよ。」

「そう、だったのですね…。」

「ミリィとは血こそ繋がってないけれど、育ての親として、ずっとあの子を見て来たわ。本当に…実の娘だと思って育てていたの。…だから、アリウス。私はあなたのことも、本当の孫のように思っちゃっててねぇ。迷惑かもしれないけれど…あなたを孫のように思うことを、許してくれないかい…?」

「そんな…迷惑だなんて。…母様を育ててくれて、ありがとうございます。母様と父様の婚姻を、許してくれてありがとうございます。あなたの…おばあ様のおかげで、私はここに居ます…。」

「…ありがとう。…ありがとうねぇ。」


二人は再び涙を流し、それを見ていた二人の老爺も再び頬を濡らした。


「…本当にアリウスがこの村に来るとはな。」

「あぁ…村の皆には苦労かけたが…さすがはイルの村長だ。」

「もしかして…アリウスがここに来ることがわかっていたのか?」

「いやまぁ、イルの村長の勘だがな。」

「…女の勘は当たるもんだよ。」

「使い所間違ってねぇか?」

「細かいことを気にするんじゃあないよ。」

「…どうして私がここに来ると思ったのですか?」

「そりゃあ、ミリィの子だからねぇ。あの子も、親が村から出て行ったって話をしたら、探しに行こうとしたもんさ。白竜の結界で外に出ることはできなかったから、一時は諦めたもんだと思っていたけれど…。ガイウスがあの子を連れ出すようになってからは、村の周りに親の手がかりがないか探し回ってたらしいからねぇ。だから、アリウスも白竜の村のことを知ったら、行きたがるんじゃないかと思っただけさ。」

「でも、この村を経由するとは限らないだろう?たまたまこの村を知っている人が居たから来ることができたけど、この村は地図にも載っていなかったから、普通ならこの道を選ぶことは無いはずだ。」

「その通りさ。でも逆に、白竜の村へ行こうとした時、この村のことを知っていれば、ほぼ確実にこの村を経由地点に選ぶんじゃないのかい?」

「それは…そうかもしれない。」

「…差し出がましいかとは存じますが、私からご説明したく。」

「あぁイカロス。お願いするよ。」

「ありがとうございます。カリア様は、滅多に来ないお客人をお迎えする用意が良いことを、疑問に持たれておりましたね?」

「…あぁ。正直、不思議に思ってはいた。」

「その主な理由が、この村を知ってもらうためなのです。御者関係の方々に、この村のことを知ってもらうだけで良いのです。アリウス様が白竜の村へ行こうとした時、馬車を使うことはまず間違いございません。あとは御者様が白竜の村への道を探す過程で、この村の情報を仕入れて頂ければ…。」

「アリウスがこの村に来るという寸法か。何というか…随分地道な方法を取ったんだな。」

「御者の方々は、同業者の言葉ほど信じられるものは無いと言います。御者様の口から情報を発信して頂くには、この方法が確実かと。」

「なるほど。説明してくれてありがとう、イカロス。」

「とんでもございません。」

「…お前さんら、他に聞きたいことはあるか?」

「俺は聞きたいことは聞けたから、大丈夫。」

「私も、大丈夫。」

「私も大丈夫です。」

「そうか…。じゃあ、俺たちから聞きたいことが──────」

「ゾル。その前に食事にしないかい?アリウス、カリア、セラフィ。お腹が空いただろう?」

「はい…少し。」

「じゃあ皆で食事としようじゃないか。御者の方にもお出しするから、ゾル。頼んだよ。」

「…へいへい。んじゃいっちょ作って来るから、ちょっと待っとってくれ。」

「ゾル爺、俺も手伝うよ。」

「私も。」

「あ…私も手伝います。」

「アリウスは村長と話してていいぞ。俺たちも、ゾル爺と話したいだけだから。」

「はっはっは!そういうことなら手伝ってもらうとするか!」

「ありがとう。…じゃあ、私はここで待ってるね。」

「うん。」

「カリア、セラフィ。調理場について来な。」


俺とセラフィはゾル爺に連れられて、村長の家の調理場にやって来た。


「ゾル爺の作る料理は久々だな。」

「はっはっは!歳は老いたが、料理の腕は鈍っとらんから安心しとれ!」

「でも歳は歳。あんまり無理はしちゃだめ。」

「へいへい。それで、館の皆は元気か?」

「うん、元気だよ。ゾル爺がいなくなってから、俺たちと同い年の子が二人、館に来たんだ。」

「ほぉ!それは良かったな!仲良くやっとるか?」

「仲良くしてる。今度その二人とクォーツ王国に行く約束もしてる。」

「そうかそうか。」

「その内の一人がロードって言う男なんだけど、ロードが作る料理が凄く美味しいんだ。」

「ほぉ…?俺が作る料理より美味いのか?」

「どうだろう。食べ比べてみないとわからないかも。」

「ぬぅ。ならば今日は渾身の料理を作ってやろう!」


俺たちは館での話に花を咲かせながら料理を作っていった。

料理ができあがる頃にはすっかり日も暮れて、外は真っ暗になっていた。


「さぁ、揃ったな!お前さんら、たぁんと食ってくれ!」

「「…ゾル。」」


村長とワーグがゾル爺を睨みつけた。


「作りすぎだ…。」

「いやぁすまん!夢中になっとったわ!」

「他の村人にもお裾分けしようかね…。」

「…俺たちも気が付かなかった。申し訳ない。」

「ごめんなさい…。」

「ふふ。まぁ、足りないよりは良いさ。じゃあ、いただこうかね。」


俺たちはゾル爺の料理に舌鼓を打ちながら、様々な話をして盛り上がった。

盛り上がりが少し落ち着いた頃、俺はゾル爺が話しかけていたことを聞いてみた。


「そう言えば、さっきゾル爺が何か言いかけてなかったか?聞きたいことがある…みたいな。」

「ん?あぁ…。イルの村長、ワーグ。いいな?」

「…えぇ。」

「あぁ…いいぞ。」


少し、空気が重たくなったように感じた。


「お前さんら…白竜の村に行く意思は変わらんか?」

「うん。そのためにここへ来たんだ。」

「…さっきも話したが、あそこには黒竜がおるかもしれん。それでも行くつもりか?」

「それでも、行くつもりだ。」


セラフィもアリウスも、俺の言葉に頷いて応えた。


「…そうか。ワーグ。」

「はぁ…仕方ねぇ。」


ワーグは気が重たそうにそう言うと、俺たちが座っていた木の椅子が変形し、俺たちを拘束するように絡みついた。

木を操る魔法か…?ラピスに教えたら喜びそうだと場違いな感想を抱きつつも、ゾル爺たちに問いかけた。


「これは、どういうことだ?」

「…見ての通り、お前さんらをあそこには行かせんという意思表示だ。」


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