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斯くてドラゴンは人になる  作者: 冫メ况。
1章~賢者の館
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賢者の館16

「二人は例に漏れず、師匠に連れてこられたそうだ。二人とも、銀髪が綺麗な子だった。兄妹かと思う程だったが、兄妹ではなかったらしい。私は彼らに初めて会った時、特に関心を寄せなかったが…彼らはやたらと私に構って来た。死んだように生きていた私に興味を持ったらしい。変わったやつらだった。」


国王ガイウスは目を閉じて昔の光景を思い出し、懐かしんでいるようだ。


「私は二人に付きまとわれて良く一緒に過ごすようになったが、振り回されっぱなしだった。何をするにしても楽しそうにしていたよ。食事、魔法、勉強、読書、会話…私の髪が伸びたことに気づいた時ですら楽しそうにしていた。本当に変わったやつらだろう?いつしか私は、二人に振り回される明日を待ち望むようになったのだ。生きるのが楽しいと、思ってしまったのだ。その日から、私も二人を振り回したいと思うようになった。」

「使用人からすれば、地獄の始まりでした。」

「シスターアルマは何もしてなかったじゃあないか。」

「私の同僚は、あなたたちが館の外に抜け出すのを食い止めるために、様々な策を弄しましたが、小賢しい魔法ばかり上達したあなたたちは難なく外に出ていましたね。私にできることはありませんでしたよ。」

「ははは!…あの頃は本当に楽しかった。それから私が16歳になるまでの3年間は一瞬で過ぎ去って行ったように感じる。…16歳になったら師匠と面談して、この館から卒業することは知っているね?」

「うん。知ってる。」

「私とユーベルトとオリファーは卒業した後、師匠の弟子になって、師匠の手伝い…のようなことをさせられた。」

「どんなお手伝いをしたのですか?」

「ある国の様子を見て来いだの、この辺に集落があるから探して来いだの、この名前のモノを見つけて来いだの…あの二人に振り回されていた頃と同じくらい忙しかったな。」


そう言いながら、ガイウスの顔が徐々に曇って行った。

アリウスもそれに気が付き、言葉を挟んだ。


「それは…楽しくなかったのですか?」

「…あぁいや、楽しかったよ。世界中を旅して回ったようなものだからな。…ただ、ユーベルトとオリファーは他にやる事があったらしくてな。基本は私一人で行動していて、あの二人とは会えなくなったんだ。」

「お二人は何を?」

「…それは今でもわからないんだ。師匠が教えてくれなくてね。」

「…本人たちからは聞けないのか?」

「…あぁ、聞けないな。私が師匠の弟子になってから2年後、師匠から…ユーベルトとオリファーが死んだと伝えられた。」

「…そうだったのか。」

「師匠は、どうして二人が死んだのかは教えてくれなかったが、最期に二人の亡骸に会わせてくれた。私は二人の亡骸と対面したが…その姿は、私たちが卒業した時の姿と…いや、私と二人が初めて会った時の姿と変わりなかった。」

「…どういうことだ?」

「そのままの意味だ。ユーベルトとオリファーは、私と会った時から身体が成長してなかったんだ。」

「卒業するまでに気が付かなかったのか?」

「その頃は…あんまり変わってないな、としか思わなかった。2年ぶりに会って初めて気づいたんだ。」


館にいる間はほとんど一緒に過ごしていたらしいが、毎日顔を合わせていると気にならないものか。


「そういう事例は、過去にあったりするのか?」

「ん?過去というか、その事例は生きているぞ。」

「ヒスイ様のことですよね?」

「あぁ、そうだ。」

「そうなのか。…え?そうなのか?」

「知らなかッたぜ。」

「私も知らなかった。」

「ロードはまだしも、なんでカリアとセラフィが知らないのよ…。結構有名な話だと思うけど。」

「それは…そういう魔法なのか?」

「わからない。師匠は何も教えてくれないんだ。だが、ユーベルトとオリファーの件は師匠が絡んでいるに違いない。」


そう考えるのも、わからなくはない。


「こんな事を話して何だが、師匠は決して悪い人では無いから、勘違いしないでくれ。ただちょっと…そうだな、秘密が多いお人なだけだ。」

「…16歳になるのが楽しみだ。」

「ははは!そう言ってくれると、話した甲斐があったというものだ。」

「私も、お父様の昔の話を聞けて良かったです。」

「…お前には、いずれ母の話もせねばな。」

「…はい。」


アリウスの母、ガイウスの妻はパレードにも参加していなかったし、この場にも居ない。

深くは詮索できないな。


「長々と話してしまったな。今日は謝礼に来たのに、済まなかったな。私ばかり話してしまった。」

「いや、楽しかった。」

「私も!楽しかったです!」

「それなら良かった。そろそろ私たちはおいとまするよ。」

「お父様、偶にこの館に遊びに来ても良いでしょうか…?」

「…シスターアルマ、良いか?」

「えぇ、問題ありません。皆さんもよろしいですか?」

「うん、良いよ。」

「俺も良いと思う。今度来た時はロードの作った料理を振る舞うか。」

「なッ…まァいいけどよ。」

「ロードが作る料理は本当に美味しいから!是非来て下さい!」

「はい!ありがとうございます!」

「皆、ありがとう。娘と遊んでやってくれ。」


そしてガイウスとアリウスは、護衛に囲まれた馬車に乗って帰って行った。


「過労で倒れそうだと聞いていましたが、あの様子ではもう大丈夫そうですね。」


シスターアルマがそんな独り言を言っていた。


「アリウス様、凄く可愛かったわね…。」

「うん。本から出てきたお姫様みたいだった。」

「本のお姫様ッてのはあんな感じなのか?」

「ん〜、モノによるな。あんな感じの姫様が出てくる本が読みたいか?」

「まァ面白い本なら読みてェな。」

「…ふぅん。ロードはあぁいうのがいいんだ?」

「いや…イメージしやすいと思ッ──────」

「ロード!…ちょっと私の部屋に来て。」

「はァ?なんで急に…。」

「心の準備ができたの!」


ラピスはロードの手を引いて、自分の部屋に連れていった。


「あらあら。ラピスは思い切りがいいですね。」

「ねぇ、シスターアルマ。」

「はい、どうしましたか?カリア。」

「俺とセラフィは、そんなにユーベルトとオリファーに似ているのか?」

「…そうですね。髪の色が同じであれば、瓜二つだと思います。」

「そんなに似てるのか。それは賢者ヒスイに会う楽しみが一つ増えたな、セラフィ。」

「うん、そうだね。」



それから6年間、俺たちはこの館での生活を楽しんだ。

パレードの騒動が原因で討竜祭が廃止になったと聞いた時は残念だが、偶にアリウスが遊びに来たり、生活用品を買いに行く時、一緒に外に連れて行ってもらったりと、楽しみが尽きなかった。


そして遂に、最大の楽しみである賢者ヒスイとの面談が明日に迫っていた。




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