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闇から落ちしもの 8


 闇から落ちしもの 8



 九尾が腕を伸ばし青姫を掴もうとした瞬間、タダユキとクロが九尾の前に立ちはだかる。そして、タダユキが印契(いんげい)を結び九尾に向かって叫んだ。


「動くなっ!! 」


 九尾の青姫を掴もうとした腕の動きが止まる。が、それは一瞬で再び青姫に向かって動き出す。そこへ今度はクロが飛び掛かり、鋭い爪で九尾の腕をザックリと切り裂いた。しかし、切り裂かれた腕は瞬時に再生する。


「わたくしの動きを一瞬とはいえ止め、わたくしの体に傷をつけるとは…… 面白いですね 」


 九尾は青姫に伸ばした腕を一旦引っ込め、タダユキとクロをその感情の無い目で見つめる。


「クロ 続けていくぞっ 」


 印契(いんげい)を結んだタダユキの体が先程の青姫たちのように輝き始めていた。クロは三本の尻尾を立て大きく咆哮する。すると、森の中から魍魎が集まって来た。尻尾が二本の猫又だった。集まって来た猫又は数十体もいる。クロは猫又たちに顔を向けると再び咆哮し九尾に飛び掛っていった。集まった猫又たちも九尾に敵意を抱き飛び掛かる。そして、タダユキの頭上には巨大な五芒星とも呼ばれる”晴明桔梗”が現れ、強化された言霊で九尾の動きを封じた。


「す、凄い…… 」


 青姫が呟き、拳を握り締める。


「”カモノタダユキ” お前が恐ろしい…… 」


 タダユキに動きを封じられ、クロたちに体を次々に斬り刻まれ九尾の力も少し弱まったようにみえた。再生する速度も追い付いていない。クロや猫又たちに切り裂かれた傷から血が飛び散っていた。


「余計にわたくしのものにしたくなったわ 」


 九尾は、そう言うと目をカッと見開き大きく口を開けると全身を震わせて咆哮する。九尾の体から強烈な黒い闇の波動が放出され、九尾に飛び掛っていた猫又たちは一瞬にして消滅していた。クロも弾き飛ばされ地面に激しく叩き付けられてしまい、四肢を痙攣させ横たわっていた。タダユキも辛うじて立ってはいたが、頭上の”晴明桔梗”は消滅し、印契(いんげい)も解け、両腕をだらりと垂らし肩で息をし、やっと立っている状態だった。


「もう、何も出来ないでしょう そこでこの娘たちが殺されるのを見ていなさい 」


 タダユキは動こうとしたが体が言うことを聞かなかった。九尾は今度は朱姫に手を伸ばす。


「こんなことなら、この娘は最初から殺しておいた方がよかったですね 」


 朱姫は、せめて一矢報いようとするが、九尾の圧倒的な恐怖の為に体がピクリとも動かない。迫りくる九尾の腕を前にして涙を流す以外なかった。そして、九尾が朱姫をその爪で摘まもうとした時、青姫が大声で叫ぶ。


「やめなさいっ 殺すなら私からにしなさい それとも私が怖いですか 」


 青姫の声は震えていた。タダユキは、やめてくれ姫っと地面に倒れ這いながら必死に青姫の元へ行こうとするが、それより早く九尾が青姫の右足を持ち軽く摘まみ上げる。そして、目の前に青姫をぶら下げしばらく見つめた後、もう片方の手でぶら下げている青姫の右足をバキバキと折った。所々、折れた骨が皮膚を破り突き出ている。


「あぁぁーーーっ 」


 青姫の絶叫が異界に響き渡る。他の三人は声も出せず、涙を流しながらこの残酷な九尾の所業を見ていた。九尾は、人間がアブラムシを見るような目で青姫を見つめ、折れた足を持ち替える。そして、今度は青姫の左足もバキバキと折っていった。めちゃくちゃに折られた青姫の足から、また、骨が飛び出す。青姫の悲痛な叫び声がまた異界に大きく響いていた。青姫は両足を折られ、今度は頭を持たれタダユキたちからよく見えるよう高くぶら下げられ、その無惨な姿を晒されていた。青姫の折られた両足が、ブラブラと軟体動物の様に揺れている。


「”カモノタダユキ”二度とお前がわたくしに刃向かう気が起きないよう この娘をゆっくり痛めつけて殺します この後、両腕の骨を折ってから手足を引き千切りましょう そして、最後に頭を潰して終わりです 」


 九尾はそう宣言すると、青姫の左腕を握り締めバキバキと骨を粉々に砕いた。


「あぁぁぁーーーっ 」


 青姫の小柄な体の何処から出るのかと思える程の絶叫が響き渡る。しかし、九尾は残る青姫の右腕もあっさりと握り潰し残酷に破壊する。四肢を破壊された青姫は、頭を持たれうめき声を出しながらぐったりとぶら下がっていた。そして、九尾はそんな青姫の頭を持ったまま残酷に振り回す。青姫の粉々に折られた手足がグニャグニャと変な方向に動き、それを楽しむかのように九尾は、青姫の頭を持ったまま回転させ、グニャグニャの手足が回転で広がったり絡みついたりする様を眺め続けた。


「まるで、でんでん太鼓ですね 」


 九尾は楽しそうに笑う。


「ひぃぃっ…… 」


 朱姫たち三人は、その凄惨な光景に気を失いそうな程の恐怖に囚われ、涙を流しその絶望感に押し潰されていた。


「さあ、それではこのグニャグニャした醜い手足を引き千切りましょうか 」


 九尾が高笑いしている時に、さらに巨大な禍々しい気配が近付いてきた。九尾をも凌駕する程のその気配の持ち主は九尾の前に立つと、九尾がぶら下げている青姫を物珍しそうに見る。


「なんだ 九尾 貴様だったのか 」


 それは、九尾に軽く話しかけた。


「これは、大嶽丸 なにしにこんな所へ? 」


「急に巨大な気配が感じられたから 何か面白い事があったのかと思ってな 」


 もう一体のブラックイット。大嶽丸と呼ばれたそれは、全身が黒く頭に角が生えた鬼であった。魍魎の中でも最強に位置する鬼。その中でも、さらに最恐と言われ別名”鬼神魔王”とも呼ばれる鬼がこの”大嶽丸”であった。

 この絶体絶命の中、タダユキが考えていたのは青姫の安否だった。青姫が殺されたら、自分も利用される前に死んでやる、それが唯一出来る抵抗だと考えていた。


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